表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

新友達

入学式から10日目。俺はすでにクラスに慣れていた。クラスに馴染んだわけじゃなくて、クラスのうるささ、キチガイ感に慣れたということだ。にしても、流石にこのクラスはひどかった。あと一週間もしないで行われる課題テストの結果を見て、このクラスがどこまでどん底に落ちるかが気になる。

10日目は通常授業だった。とは言っても、全部の授業が紹介授業だった。だから特にいうことはない。


一番重要なのは昼休みだ。俺は寛太と弁当を食べる気にならなくて、ふと隣のクラスの前を歩いていた。水谷光輝に気づいたのはその時だった。

「あれ、あの時の人じゃん」向こうから話しかけてくる。

「あ、あの入学式の」あえて俺は名前を知らないことにした。そのほうが初対面の人との会話は弾みやすいのだろう。

「あのあと、俺は滑り込みセーフだったけどさ、お前はアウトだったんだってな。担任から聞いたぜ」あー、やっぱり川和先生は俺の話を他クラスにしていたのか。まあ仕方がない。前も言ったように、俺はあの先生嫌いじゃないし。

そのあとの会話は謎だった。俺らはどうしたら遅刻しないのか、滑り込みアウトを滑り込みセーフにするには、などなど、どう考えてもくだらない話をしていた。ただ、寛太の時とは違った。しゃべりに弾みがあった。寛太と喋っていた時はお互い遠慮しあっていたような気もしたが、俺らは自己紹介もせずに、まるで長年の友達だったかのように喋っていた。気づいたらもう昼休みは残り10分で、俺らは急いでさようならをいって弁当を爆食いしたのを覚えている。

そういえば、自己紹介していないな。俺が食べながら思った。そしてそこで気づいた。水谷光輝は、俺みたいに、あらかじめ俺のことを知っているのだ、と。相手も同じことに気づいているに違いない。



放課後、俺は野球部に仮入部に行った。シンプルに野球の説明やバットの持ち方、ボールの投げ方など、基本的なことを教わった。また剣道部とはオーラが違い、楽しそうな、でも厳しそうな感じだった。俺はその絶妙な感じが一番好きなんだと、今気づいた。そう、やっぱり俺は剣道部なんかじゃなくて、野球部に入るべきだ。



部活後、俺は10階に忘れてきた宿題を取りに行った。人はほとんどいなかった。いたのは隣のクラスの女子だ。ロッカーから何かを取り出している。俺は無言でその子の後ろを通り過ぎ、自分のロッカーを開けた。宿題を取り出して、エレベーターホールに向かうと、さっきの子がエレベーターを待っていた。バスケットボールを持っていたからバスケ部志望だろう。

エレベーターが来て俺らは乗り込んだが、この狭い空間の中に知らない人といるのはとても気まずかった。相手が女子だとさらに気まずい。

どれぐらい乗っていただろうか。10分に感じられたが、実際は3分だった。一階に着いて俺はすぐエレベーターから降り、人がたくさんいることに安心感を抱いた。

エントランスに行く途中、横に水谷光輝が歩いていることに気づいた。相手も気づいたらしく、声をかけてくれた。

「あ、今日の昼の人。また会ったな」

俺らは流石に名前で呼び合おうということにした。光輝は俺の名前を知っていたそうだ。「今日昼会った時に名札見たんだ」と言われたが、なんとなく入学式の日から知っていたように思えた。俺も実際そうだが、名札を見た、ということにした。




俺は光輝と一緒に帰った。,寛太の時とは違って、俺らは自然に一緒に帰っていた。

「でさ、5組ってどんな感じ?」光輝が興味深かそうに聞いてくる。

「うん、想像以上に荒れている。本当に6組が羨ましいよ」

「まあ、担任の川和先生も面白いし、クラスもまあまあまとまっているかもなぁ。でもさ、5組の野崎先生もいい先生だって5組の坂崎って人が言っていたのを聞いたけど」

え。え。え。え。坂崎って、、、

「寛太のこと?」

「あー多分ね。俺でも野崎先生あんまり気に入らないや。見た目からもそうだけど、なんか偉そうじゃね?先生歴一番長いからってさ、そこまですごそうじゃないし」そう、言う通りだよ。「てか、裕樹って寛太と仲よかったよな。この前一緒にご飯食べてたよな」

「あ、うん。まあ、仲良いって言うかぼっち組かな」

「へー。祐樹ってぼっちなのか。全然そう見えないけど」

「もう5組は入学式前から塾とかで知り合ってるからなかなか馴染めないんだよなぁ。でも最近は寛太も馴染んでるし、俺一人でぼっちって感じ」

「あー、それ聞くとやっぱり6組でよかったなーって思うな。俺ももう友達とかはできたんだけどさ、微妙に気が合わねーんだよ」

「俺よりはマシじゃん」夢中でしゃべっていると青咸に着いてしまった。「じゃあ、また昼休み会いに行くぜ」

「待ってるぜ」




水谷光輝って、いい人だったんだな。隣のクラスだけど、今のところ俺に一番優しくしてくれている人。同じクラスだったらどれだけよかったことか。


ちょっと引っかかったことがあった。寛太は野崎が俺に嫌悪感を抱いていて、差別していることを知っているはずだ。ホームルーム中だって、俺が名札をつけ忘れただけでクラスの前でキツく叱ったり、くしゃみをしただけでわざとらしく咳き込んで睨んだり、、、。クラス中が知っている話だ。


じゃあなぜ、、、?


答えは簡単だった。


俺はこのクラスの全員に裏切られたのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ