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友達

俺がエレベーターホールでエレベーターを待っている時だ。

寺坂てらさかくん」

機嫌の悪そうな声で急に名前を呼ばれ、俺は嫌な予感がしながら後ろを振り向いた。ああ、野崎先生だ。

「君は今日遅刻しましたね。入学式当日から遅刻は、先生方に良い印象を与えませんよ。この先くれぐれも遅刻は避けるように。また、先生から冷たい態度を取られても仕方がないと思ってください。君が遅刻したのが悪いんですから。」野崎は淡々とした口調で言う。最後に意地悪な笑みを浮かべ、奥にある職員室へとゆっくり歩いて行った。

そうだよなぁ。遅刻は悪いと、俺でもわかっている。いや、でも俺は良いこともしたよな。そりゃあ妊婦さんが電車に乗るのに急いでいたら先を譲るのは当たり前だ。それで俺が電車を乗り過ごしたって、そこまで冷たくすることではないのでは。まあ、こんなことをアイツに話したってなんてこともないんだけどさ。嫌われたのはもう仕方がない。そのまま今年一年頑張らなければ。

色々考えながらエントランスまで行くと、水谷光輝がいた。話しかけようか戸惑っていると、背後から声がした。

「ユーキ!」

今回は野崎ではなく、坂崎寛太だった。どっち方面?と聞かれ、俺は青咸あおみなと答えた。

「おー!俺も同じ方面。今日一緒に帰ろうぜ」寛太に言われ、俺は少し戸惑いつつも、良いよ、と答えた。

俺らは駅まで部活のこと、今後のこと、得意科目などのことを話していた。

駅について俺らが電車に乗ると、思い出したかのように寛太が言った。

「今日なんで遅れて来たの?」

まあ、話は少々長くなったが、俺は妊婦さんのことを話した。俺はてっきり寛太が俺の行動に共感してくれるのかと思った。その期待は裏切られた。

別に、妊婦さんだからと言ってただの人間じゃん。譲る必要なんてないしさ、そのまま乗っちゃえば良かったのに。そしたらお前だってこのクラスに仲間入りできたんじゃねーの?



俺は自分の部屋で明日の準備をする。やっぱり、あれは酷かったのかな。実はあの会話の後、俺は寛太に用事があると言って次の駅で降りた。もちろん、用事なんかない。ただ、一人でいたい気分だった。別にこのクラスに仲間入りなんてしなくてもいい。逆にしたくない。そして俺のやったことは余計なことであったのだろうか。余計なことをしたせいでこの一年は台無しになるのか。いや、果たして中高一貫校に通っているせいで、この6年間、いや、また大学に入るための先生のサポートも無くし、この俺の一生が台無しになるのか。そんなことは考えたくなかった。ただ、一つだけ確信したことがある。


このクラスには俺の友達なんて一人もいない。


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