初日でクラスが崩壊しました
俺は気づかなかったが、エレベーターに一緒に乗っていた人は隣のクラスだった。水谷光輝。この人は俺よりも足が速く荷物が軽かったせいか、0.何秒か速く入って滑り込みセーフだったらしい。では、俺も荷物を軽くしていたら間に合っていたのか、、、?いや、そんなことを考えて何の意味がある。前の恥ずかしい行動を後悔したって仕方がないじゃないか。今はこのミスをどう挽回するかに集中しよう。
俺は自分の席に座った。隣の人のことはよくわからない。顔が女子だけど、制服が男だから男だろう。とりあえず先生の話を聞いた。
「まず、自己紹介から始めたいと思います。隣のクラス担任の川和一樹です。今は残念ながら本来担任の野崎先生が入学式の準備をしているため自己紹介できませんが、入学式であうでしょう。さて、これから式があるため、それまでは自由にしてもらっても構わないです。そうだ、ふれあいタイムにしましょう」先生が説明する。ふれあいタイムって、俺ら幼稚園児じゃないんだから、、、とも思ったが、半分冗談で言った雰囲気だったので嫌悪感は湧かなかった。俺は昔からなぜか色々なものにすぐ嫌悪感が湧いてしまう。ちょっとしたことでもきにするタイプなのかもしれない。
そして先生の話が終わった後にみんなが一斉に席から立ち上がり話し始めた。そこで実感した。なんてうるさいんだこのクラスは。まあ、賑やかっていうのはいいことかもしれない。けど、これは賑やかどころではない。もう幼稚園じゃないか。しかも隣のクラスの担任、、川和先生だっけ、、がいい先生だと思う。隣のクラスが羨ましいや。このクラスの状況を見たらわかると思うが、団結力はまずない。多分ここは難関校だからみんな一つの有名塾に集中していて、もう知り合いなのだろう。もうグループ分けされているし、男子と女子の対立がもうすでに激しい。席にクレームをつける人だっていた。そんなの仕方がないじゃないか。ていうか、逆に心配になってきた。もしかして塾行ってないのってこの中で俺だけ?この40人の中で俺たった一人ですか?だからみんな知り合いなんですか?もういいよ、俺は孤立する運命なんだ。隣のクラスに行きたい。あのエレベーターで一緒だった人は友達になれそうだった。
そんなことを考えていると、唯一一人の人がいた。俺の前に座っている人だ。声をかけるのはアリなのか?戸惑っていると、向こうから声をかけてきてくれた。
「ぼっち、俺らだけだな」
「お、おう」
相手は坂崎寛太というらしい。寛太は見た目からはわからなかったが頭がいいらしい。この超難関校で特待生というのはよほどのことだ。でも独りってことは塾に行ってなかったか、俺みたいに無名の塾に行っていたのだろう。いい人じゃないか、この人。
「ふれあいタイム」が終わった後、俺らは体育館へ誘導され、入学式が始まった。入学式は自由席で俺は取り残されてしまい、俺の隣はさっきうるさかった石原綺羅奈だけだ。そしてその隣にはさっき石原と一緒にいた木下柚華だ。
「やっぱりこのクラスにはいい男子いないわね」
「それな!もうなんなのこのクラス(笑)。てかそもそも星原いる時点で最悪ー」
「あーわかるー。なんで塾一緒だったんだろうねー。最悪ー」
愚痴りに愚痴っている女子は俺の存在に気づいていないみたいだ。もちろん俺があいつらに挟まれていることぐらいは知っているだろう。ただ、俺の名前だって、俺が会話を聞いていることだって、何もわかっていないはずだ。本当に頭いいのか、こいつら。とっさに嫌悪感が湧いているのがわかる。
入学式では特に目立ったことはなかった。ただ初めて担任に会ったことだけだ。野崎義仁らしい。そして入学式では野崎先生がクラス全員の名前を読み上げた。それで俺はクラス全員の名前を覚えた。39人、全員。こう思えて、記憶力だけは自慢できる。
さて、入学式が終わって、先生の自己紹介タイムだった。正直言って、この時間は俺はずっと意識が飛んでいた。多分、あの水谷光輝っていう人のことについて考えていたのだろう。それとも、どうやったら滑り込みセーフになったのかを考えていたのだと思う。それともこのクラスに数名存在する読み不明の名前の事かもしれない(美花でスミレとか、蜜奈でミナとか)。とにかく、この先生は好きではない。話はやたらと長いし、なんか面白みもない。せめてスベる先生の方が面白いや。真面目すぎて何も面白くないし、好きな生徒にはヒイキするタイプだ。こういう先生って大抵は嫌われるよな。まあ、野崎先生は俺以外全員ヒイキしているから好かれるんだろうけどさ。やはり先生は俺が遅れたことを知っているのだろう。
学校が終わって、俺が帰ろうとした時、たまたま神山蜜奈と石原が話しているのを聞いてしまった。
「私の妹のペコね、今度綺羅奈に会いたいってー!」
後で知ったが、ペコは「礼」と書くらしい。