6話
リアルが忙しく更新できませんでした…
すいません!
悪魔。飛行能力を有し、通常の弓や剣で殺すことは難しく、また捕獲されそうになると一種の自爆行動を行うため、いまだその内部構造や力の所以を解明することは出来ていない。
そんな謎多き存在に近しいものが今横たわっている。我々と同じ色や形を持った上半身をもって。
急に目の前に現れた異質な存在に部隊は、しかし冷静に対応する。多少距離をとり、各々の得物を手に構え、唯一何も手に持たぬハンスを先頭ににじり寄る。
「気をつけてみんな。相手は正体不明の敵よ。何をしてくるか見当もつかない」
「了解」
じりじりと近寄っていき遂に手が届くほどの距離に近づく。
エメラダは考える。もしこの得体のしれない生き物が悪魔であるなら、研究材料として持ち帰ればもしかしたら少しでも戦況がよくなるかもしれない・・・
そうなればうまく行けば一斉攻撃での被害も減るかも・・・
エメラダは決心し声を伝える。
「その男を捕獲して」
その声に部隊の面々は無言でうなずくとシンタローが男の体に手を回す。
シンタローが男を背に担ぎ部隊は走り出そうとする。その時、一番後ろで周囲を警戒していたアリスが普段なら出さないような大きさの叫び声で
「敵っ!!!」
と叫ぶ。
その異常な声に全員がそちらを向く。こんなことにも気づかなかった自分にエメラダは思わず舌打ちする。
まだ距離のある赤黒い空の先、そこには―――空を埋め尽くすほどの黒の群れがあった。
メアリやハンスが恐怖ゆえだろうか。その場に立ち尽くす。
その時、バカみたいに大きい声で
「走れええええ!!!」
シンタローが叫ぶ。その声にはじかれるように動きを取り戻すメアリとハンス。
「逃げましょう!今の私たちじゃあの量は倒せない!」
そのエメラダの声もとどかぬほどに皆は死ぬ気で走る。するとその揺れのせいかシンタローの担ぐ男がうめき声と共に目を覚ます。
「やばい起きたぞこいつ!」
シンタローの叫びとほぼ同時に男は後ろから迫る大群に気づき
「み、み、み、見つかったあああ!!!」
と、怯え切った声で叫ぶ。
その声を聴いたエメラダはそれに違和感を覚える。
この男は確かに見つかったと言った。ならこの男は悪魔ではない・・・?
「ねえ、メアリ!男の目を見て!」
その指示にメアリは素直に従う。シンタローの後ろに着けていたこともありほとんどのタイムラグなく男の目をメアリの視界に収めた。
エメラダはそのメアリの視界から男の目に意識を流し込む。
瞬間はじかれたように男がぷつりと意識を失う。
次に目を開けた時男の視覚、聴覚はもうエメラダとの共有状態にあった。
その出来立てほやほやのリンクを使いエメラダは男に聞く。
「あなたは悪魔じゃないの!?」
男は目覚めたてなのと感覚を盗み取られるような気持ち悪さに慣れないのかぐったりとした声で答える。
「今は仲間なんかじゃないんだ・・・助けてくれ・・・!」
そう答えた矢先、その男をめがけてジェムが飛んでくる。
それに気が付いたシンタローがすんでのところで回避したが、あと少し回避が遅れれば男に直撃していただろう。
これを見てエメラダは確信する。この男は悪魔の仲間ではないと。
と同時にこの男が悪魔に対するいい知らせをもたらしてくれるのではという期待を抱く。
「お願いみんな。必ず連れ帰って!」
その声に呼応するように皆の足が心なしか速くなる。
メアリは気づく。城壁はもう眼前だ。あと少し・・・あと少しで・・・!
そんな時、メアリはある音に気づく。
バサッ、バサッ
嫌な音だ。そう思いメアリが振り向く。
――白刃
悪魔が持つには似つかわしくない人の得物。悪魔の振り下ろすそれがメアリの首に迫った。
ああ、終わった・・・!
思わずメアリは目を閉じた。
しかし、メアリの耳に届いたのはガキンッ!という人を切った音とは程遠い金属と金属の当たる音。
恐る恐る目を開けるとそこには、金色の鎧を身にまとい金色の長剣で悪魔の白刃を受け止め押し返す、王子マリウスの姿があった。
「安心しろ。妹の悲しむことは私が許さない」
金色の剣に青い光が奔る。その青い光はどんどんとその数を増やしていき、遂には剣を覆った。その剣をマリウスは横に薙ぐ。
瞬間、閃光と轟音。特大の雷の落ちるような音と光に思わず目と耳を塞ぐ。
光と音が止み目を開けたとき、かれた地面には数多の悪魔の死体が転がっていた。
「すごい・・・!」
メアリが思わず呟くとマリウスは
「行け。俺達がこの戦場を預かろう」
そう言い悪魔に向き直った。
見るといつの間にかマリウス率いる第1部隊の面々が得物を持ち臨戦態勢。
「行きましょ」
エメラダが言い、部隊の面々は再び走り出す。
後ろでは、ガキンッ!ガキンッ!という戦闘の音が高らかに響いていた。