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終末戦線継続中  作者: マルチーズ
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1話

色々と至らぬ点があるとは思いますが、皆さんに少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします!

できれば感想など頂けると嬉しいです!

重大な誤字を発見しました。現在は修正済みでございます。申し訳ありませんでした。

 

 枯れ木と乾いた灰色の地面の上、死体と人型の黒い塊、血だまりと茶色の液体が無数に散乱する、まさに地獄。

 いつからか赤黒くなってしまった空のもとに広がる地獄を剣や弓を携えひた走る少年少女たち。その中の、地面につきそうな大剣と呼ぶに差し支えない物を背に担ぐ黒髪の少年が叫ぶ。


「おい、エメラダ!敵はどこだ!?」


 その声にエメラダと呼ばれた少女は


「今探してる!ねえハンス!死角ができてる!もっと右を向いて!」


「りょ、了解です!!」


 ハンスと呼ばれた茶髪にそばかすの目立つ平凡な顔つきの少年が顔の位置を修正する。すると、動く黒い影が集団でぐんぐんとこちらに向かってくるのをかろうじて視認することができた。


「い、いました!!悪魔(・・・)です!数は・・・」


 ハンスがそれを確認しようとするより早く、エメラダと呼ばれた少女が声を飛ばす。


「7よ!総員戦闘準備!」


 その声に各々はそれぞれの得物を手に持つ。その間にも悪魔と呼ばれた黒い影たちは迫る。

 250mほどまで影が迫ったころだろうか。徐々に影の姿がしっかりと見え始める。

 それは、人型で翼があり表面は黒く光沢があった。人であれば本来あるはずの目や口は何もなく、背には四角い箱を背負っていて、そこから手や頭

頂部に管がつながっている。


「な、何度見てもおぞましいですね・・・」


 そう顔をしかめるのは金髪でポニーテールの少女。それに黒髪の少年は


「俺は慣れたぜ!メアリも早く俺の領域まで上がって来るんだな!」


 と軽口をたたく。それに今まで口を閉ざしていた赤髪の弓を背負う少女が


「それは、シンタローが、おかしいだけ。メアリが、普通」


 と黒髪の少年に言う。それに黒髪の少年、シンタローがなにか返そうとしたとき、エメラダから声が飛ぶ。


「あなたたち!遊んでないで!もうあいつらの射程に入ってるのよ!アリスは弓構えて!」


 気づくと影は100mほどまで迫っていた。その鋭い声に赤髪の少女は素早く弓を構えると、矢をつがえずに(・・・・・・・)弦を思い切り引く。


「3..2..1..!」


 カウントダウンの後、アリスは弦を引っ張っていた手を放す。弦を引く力がなくなり、元の形に弓が戻る瞬間、光。

 あるはずのない矢がそこにはあった。それは悪魔たちに異常なまでの速さでまっすぐ飛び、悪魔が回避行動をとろうとする間もなく近づき、爆散。


 その衝撃で影が二つ地に落ち、他の悪魔たちは興奮した様子で手をこちらに突き出し、光る小さな球体を高速で打ち出してくる。

 それにハンスもまた手を突き出す。光る球体、彼らがジェムと呼ぶそれがこちらに飛来するよりもはやくハンスの手からは半ドーム状の薄い青白い光の壁が出来上がっていた。その壁の前でジェムはむなしい音と共に破砕。あとに残るは残滓の光のみ。


「第18部隊!総員、戦闘開始!!」


 エメラダが叫ぶ。それに少年少女は各々叫びで答えた。

 そこからは一瞬だった。ハンスの作り出した壁から飛び出たのはメアリとシンタロー。

 メアリが腰から鞭を抜くと、30mほど遠くの上空にいた悪魔たちを鞭でからめとる(・・・・・・・)

 せいぜい1mしかなかったはずの鞭は光を放ちぐんぐんと伸び、悪魔をからめとったかと思うとシンタローの前に。

 いつの間に大剣を構えていたシンタローはにやりと笑うと


「死ねええええええええ!!!」


 横一線、人間でいう頭の部分だろうか、を胴体と思わしき部分から切り離す。断面からは赤と茶色の液体が噴き出し、小さな池ができていた。

 それを確認したシンタローたちは集まり


「いえーい!」


 と手をたたきあう。生き残ることができたことをひとしきり喜び合ったところでエメラダが


「そろそろ次に行きましょ?」


 と声をかける。それに皆はうなずくと次の敵を探すべく歩き始める。地獄の中を、踏みしめるように。



 柔らかい椅子の上で目を開ける。視界が狭いことの違和感と今まで酷使したせいでキャパを超えた脳みそが悲鳴を上げる。

 その痛みに思わずベットに心が向かいそうになるのを必死に押さえつける。


「そろそろあいつらが帰ってくるんだから、迎えに行ってあげないと・・・だって・・・」


 ――あたしだけ、危険のない後方で指示を飛ばしてるだけなのだから。

 その事実が彼らに多少の引け目を感じさせる。この、毎日何百人と、多い日には千人を超す量の人が死ぬこの過酷な戦場で彼らは戦っているのだ。


「っと、いけない。寝巻のまま外に出るとこだった。」


 こんくりーと?とかいう昔の人が作り出した建材で作られた壁の中の一室。周りの部屋よりもちょっとばかし豪華なこの部屋で私は暮らしている。

 その部屋の中、軍人の正装にしてはいささか洋服然とした青い軍服に着替え、長い青い髪をしっかりととかし、人前に出られる姿になったのを確認し、エメラダは部屋を出た。



 城壁都市国家ユーグナリア。その国土の8割は今、ヒトではない何者か、悪魔と呼ばれる存在たちに占領されている。

 その昔、商業都市国家として名を馳せたユーグナリアは、その人口2000万人を擁する超巨大国家であった。しかし、今現在、人口はその100分の1、20万人へと数を減らしている。


 北大陸にて栄華を誇ったユーグナリアはある日、突如南大陸より飛来した3隻の巨大な空飛ぶ船から攻撃を受けた。瞬く間に焦土と化した村の村民の一人が首都に助けを乞うため訪れた時、既に首都は無くなっていた。


 6割の領土を失い反撃の機もなくただ滅びを待つだけの中、失われた数多の命の恨みの力だろうか、一部の人間に不思議な力が宿り始めた。念力、拡張斬撃、感覚共有、発火などの超常の力を手に入れたユーグナリアは遂に反撃を開始。

8割の領土を失ったとき、何万もの犠牲のもと全ての空飛ぶ船を堕とすことに成功し、ユーグナリアは初めての勝利を悪魔からもぎ取った。


 以来残された領土に仮政府を置き、その領土を壁で囲うことで何とか壁の中での仮初の平穏を得ている、といっても悪魔の侵攻が止んだわけでもなく、今だこの壁の目下では激しい戦闘が行われている。この壁は人類最後の防衛線、人類か悪魔かを二分する稜線。引くことの許されぬこの線の上、幾多の兵士が平和のため死んでいく。



 ――これはその最後の防衛線を守る少年少女の物語だ。




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