表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
練習の王子様  作者: 神埼さん
1/1

この作品は削除されました。

 雲一つない青空。舞台は中学3年男子100m決勝。


地区予選から緊張とプレッシャーで震える手をスタートラインに並べ、合図を待つ。


 …セット


 号砲。覚えていたのは、前。


を示す。無駄に力の入った筋肉では、最高の走りは出来ないのだ。

 言うが易く行うが難しとはまさにこのこと。勝ちたいと願うのに力を抜くのはできる方がおかしいでしょ。


 「本当ですか!?けっこうリラックスしていたつもりだ


 緊張で忘れていたなんて知られたら、また笑われる。


 「嘘つくな。選手紹介でお前だけ手挙げなかったぞ。目立ちたがりのお前が忘れるなんてありえない。よっぽど緊張していたんだな」


 …この教師は生徒の心を折るだけでは満足せず、粉々にすりつぶしてなにかの肥料にするのが趣味のようだ。枯れた木にふりまくと花が咲くとか?それならまあ許さないでもないが。


 そんな想像をしている間に会話は進んでいた。いかん。全く聞いていなかった。


 「…で4位がお前だ。タイムは可もなく不可もなくってところかな。とにかく、お疲れさんっ」


 どうやら結果報告だったようだ。なら聞かなくても自分で確認できるからいいか。

 そんな事を考えながら、ダウンをするためサブトラックに向かった。



 家に帰ったら、撮ってもらったビデオを見た。うん。ひどい。これは誰が見ても力が入りすぎているのが分かる。


 大きく息を吐いてから、脱衣所へ足を運んだ。


 もっとこう…かっこよく走っていたつもりだったのになー。

 お風呂で目を閉じ、試合の理想を想像した。


腕を大きく振り、手は指先まで伸ばした綺麗なフォームで走る自分は、大会新記録で優勝していた。


 あっ、優勝争いをしていて最後に胸をつきだし、僅差で勝つってのもいいなぁー。


 パジャマに着替えてもまだ心の中のレースは続いていた。


こんな風にイメトレ(イメージトレーニング)にふけるのは毎日のことだ。なんでかって?自分に酔いたいのさ。


 一通りの優勝パターンを想像。いや、妄想し、満足して眠りに落ちるのだった。



 翌日。学校では表彰式があった。他人の晴れ舞台など興味はない。時間を有意義に使うべく、イメトレをはじめた。


 ゴールしたのは4着。あれ?おかしいな。なんだかうまく想像できない。


 頭には、昨日のみっともない走りが染み付いて離れない。これじゃ何にも面白くないな。


 仕方がないので他の種目のイメージトレーニングをする事にした。


 ぱっと思いついたのが400mだった。この競技はとても過酷で、ラスト100mは誰もが苦しみ、もがいてゴールする。


 もちろん俺はラストスパートで強敵たちを抜き去り、ダントツでゴールした。ゴールするイメトレをした。


 予想以上に気持ちいい。えっ?この展開かっこよすぎじゃね?


 100mにあまり良いイメージが無くなっていた今、この妄想はとても輝いてみえた。


 …一回やってみようかな。何事も挑戦だ!


 走ってみるとすごいタイムがでるかも、と。


 淡い期待をこめて決意した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ