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或るあるシリーズ

或る転職の一生

作者: 林 秀明

孤高の戦いとはよく言うものだ。

寒空の中、私は今日も重い足取りで面接地へと行く。使いこなされた黒い皮靴にコートを羽織り、平日真昼間に都会へと出て行く。人の多さにため息が出て、よろよろしたコートも風になびく。コートもため息をついているようだ。


市街地へと赴き、飲食店街の隅っこに構えるビルを眺める。

ここが今日の俺の敵地、敵地。そう思うと、やるぞっというよりも、武器を構え、いつ襲われるか分からない気持ちになってくる。常に最前線で俺は戦っているのだ。

「何故転職をしようと思ったんですか?」

面接官の眼差しに、ほれ見たことかとはにかんだ顔で今の会社の駄目な所を連発する。

自分が何をしたいかというよりも、今の会社よりもいい条件を目指そうとする転職活動。

今の海の波乗りが悪く、別地へと浮気に行くような感触に似ている。


今日もまた終わった。

安堵感よりもうやむやになった心を、自分自身で慰めながら電車を乗り継ぐ。

ここにいる人全員がどういった心情で会社へと向かうのか、そんな人達に尊敬の念と複雑な心情を乗せて、車内アナウンスに耳を傾ける。

かの友人は言う。


「自分のやりたい事をしている時は皆舞い上がるが、いざその枠をはみ出ると自分はちっぽけな人間だと感じてしまう。出来ない奴、俺と似た奴はいくらでもいるとひがんでしまう。でもよく考えろ。そう考える奴は世間にはいくらでもいる。凄い奴はそれでも自分を信じて、武器を持ち続け、戦う奴なのだ」


武器を持てと言われても、買うお金がなかったら意味がないと反発したら、自分の心が武器だと友人に叱咤された。


自分の心が武器。心を投げると相手の目の前で爆発をして、勝利出来るのだろうか。いや違うな。自分の心を相手に投げる事によって、相手に受け止めてもらう事が人間でいう所の勝利なのだ。


「勝利か……」俺はそっとつぶやき、今日のパチンコを行くのをやめにした。


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