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焔
焔が背中に迫る。その大火をすりぬけるように、女の声が耳をついた。その声は自分の名を呼んでいるようだか、はたしてそうなのだろうか。
女の顔は見えず、それが誰なのか、また自分とどのような関係にあるかは知れぬ。しかし、彼女が自分の為に叫び、その身を焦がしているのだということは薄々ながらも感じることができた。
気付けば、自分は一歩も歩くことが出来なくなっていた。歩きたくても、地に縛り付けられたかのような感触を足に感じる。後ろからは相変わらず火が迫る。女の声も徐々に近づいてくる。彼は焦った。自分は火に、女に捕まればその後に何が何が待っているか知っている。
それは、死だ。
彼は悶えたが、誰も助けてはくれない。火と姿のわからぬ女と自分のみ、この空間にいるのだから。
暗い、暗い、暗い。
そして、すぐ後ろに火の気配と女の声を感じた瞬間…
黄金色の光が降り注いだ。