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未来の宇宙でこんにちは(3)

 それから聖とウルシェには居住区の部屋が与えられた。部屋と言っても四畳半もない空間を壁際にある二つのベッドが大きく占領しており、ほぼ寝る為だけの場所である。そこで聖は一人で仰向けに寝転がり考え続けていた。


「マスター、これからどうしましょうか」


 何度目か分からぬウルシェの問いかけ。反対側のベッドに座っている少女に目もくれない聖。少女は小首を傾げ、少年の横顔を見つめ続けている。


「マスター?」

「……だーもう、考えてもわっかんねー! つーか聞いてくれよウルシェ! 俺幾つか気になってる事があるんだけどよ!」


 突然飛び起きた聖はそのままウルシェの隣に腰を下ろした。


「さっきそこで鏡見たんだけどよ。なんか俺、変なんだよ」

「マスターが変であると言う事は既に重々承知しているわけですが?」

「中身じゃなくて外見の問題な。俺、髪の毛染めてた筈なんだけど……黒に戻ってるし。超伸びてるし。何故か逆に目の色は黒から赤に変わってるし……。いきなりわけのわからんロボット動かせちゃうし。つーかそもそもあのアーク・匙なんちゃらって宇宙空間に漂ってたんだよな? なんで裸で平気だったんだよ。俺、寒いとさえ思わなかったんだぜ? さっきまで顔面殴られて腫れてたのにもう引いてるしよ。俺の身体どーなっちまったんだよ……!」


 頭を抱えてジタバタしてみても何もわからないものはわからない。そんなマスターに寄り添い、少女は膝の上に右手を重ねた。


「やはり不安ですか? 何も分からない世界に放り出されて……」

「当たり前だろが! つーかさ。つーかよ。本当に俺の居た世界なのか、ここは?」


 腕を組んで考え込む。もしも本当にここが遥か未来の世界なのだとしたら。日本はどうなったのか。そこで暮らしていた家族は? そして……幼馴染達はどうなったのだろう?


「もしあれから何百年も経ってるとしたら……あいつらはもう……この世界のどこにもいないんだよな。だけどよ、ウルシェ。なんでなんだ? お前は……どうして昴に似ているんだ?」


 そう。それこそが。何よりもそれこそが、聖の中に引っ掛かっている事実であった。

 初めてあのエクセルシアのコックピットで見た時からずっと感じていた。似ているのだ。幼馴染であり、最高の友の一人であった涼風昴、その人に……。

 外見はそこまで似ているとは思えない。確かに顔つきには面影があるが、髪型も髪色も、年齢も違っている。昴は聖と同い年だったが、ウルシェは少し年下くらいに見えた。


「だけどなんかこう……本能的に分かっちまうんだ。お前の中に昴がいる。俺の知ってるあいつが確かに存在してるんだって。このわけのわかんねー感覚はなんなんだ?」

「それは……私がセブンブライドの一つだからでしょう」

「ゼブン……ブライド?」

「私達の本能が……作られた遺伝子がお互いを呼び合っているのです。私はマスターの為にあり、マスターは私の為にある。それがひいては全人類の為でもあるのです」


 語りながらそっと身を寄せる。そうしてウルシェはゆっくりと、しかし有無を言わさず聖を押し倒した。仰向けに倒れた聖の上に跨り、ウルシェは瞳を潤ませる。


「お、おい……なんだ? 急に雰囲気が変わった気がするんですけど?」

「マスター……私達には人類を救うという使命があります。その使命の為にはありとあらゆる行いが正当化されるのです。善悪等と言う近代的な感覚は、所詮は生存本能には叶わない。より原始的な衝動に従い、私達は当たり前のように世界を救うのです……わかりますか?」


 自らの服に手をかけるウルシェ。そうして胸元を露出させ、抵抗しようとしている聖の手を取り、指を絡め、そっと顔を近づけた。


「それとこれとどんな関係があるんですか!?」

「人類が生存し続ける為に必要な事はなんでしょう?」

「わからん! 今そんな事考えてる余裕ねーから! おりゃ童貞だぞ!?」

「人類の滅亡を回避する方法、それは……性交渉による、子孫の繁栄……」


 唇をぺろりと舐めるウルシェ。その艶やかな仕草に聖が生唾を飲み込んだまさにその時。


「変態、食事の時間……に……呼びに……き……た……んですけど……」


 扉が開く音に聖とウルシェが同時に顔を向ける。そこには顔を真っ赤にしたルメニカの姿があった。手荷物をストンと床に落とし、わなわなと打ち震えているのがわかる。


「……あのう。一応今は男女の取り込み中なので、後にしてほしいのですが」

「いやルメニカ、助けてくれ! こいつどうかしちまってるんだ!」

「暴れないで下さい、マスター。据え膳すら食わないでしかも童貞なんて男として最悪ですよ」

「いやーっ!! 俺はもっと段取り踏んでいい雰囲気から童貞捨てたいのー!」


 両者それぞれの反応。ルメニカは拳をぎゅっと握り締め、半笑いのまま部屋に踏み込んだ。そうしてウルシェの首根っこを掴んでベッドから降ろし、続けて聖の顔面を殴りつけるのであった。恐ろしい事にそれが一度や二度ではなくマウントポジションからの連打であり、聖は血を撒き散らしながら情けない悲鳴を上げまくっていた。




「……はいこれ。あんた達の個人認識票だから、無くさないように持っておきなさい」


 顔をぼこぼこに変形させ、ベッドの上に正座する聖。力なく差し出された両手の上にルメニカが落としたのは青白い光を放つ結晶であった。


「これがなんだって? いや、これはなんですか?」

「個人認識票よ。IDとかアカウントとか、そういうのでもいいわ。そのジュリスに個人情報を記憶させているの。あんたは一応ライダー扱いだから、基本給金も結構いいはずよ」


 光る小さな石ころを手の中で転がす聖。ルメニカは溜息を一つ、その石に自らの掌を重ねる。すると聖の手の中で石はぐねぐねとうねり、まるで粘土のように形を変えて行く。


「なんだこりゃ!?」

「ジュリスも知らないの……? 手を重ねて好きな形をイメージしてみて。それをジュリスに伝わるように念じるの。まあ、とりあえずやってみなさいよ」


 半信半疑のまま言葉に従って念じてみる。すると一瞬で粘土に過ぎなかった石は薄く延び、掌サイズのカードへと変化した。聖は驚いたが、それ以上にルメニカが驚いていた。


「あなた、本当にジュリスに触るのは初めてなのよね?」

「お、おう。つーかすげえなこれ。触れているだけで頭の中に直接イメージみたいなもんが……お、俺の照明写真、なんで裸のままなんだ……」

「コックピットから連れ出した時に記憶した画像だからよ。それにしても……本当に凄い輝力適正を持っているのね」


 怪訝な顔で首を傾げる聖。ルメニカはまた溜息を一つ。


「輝力適正っていうのは、ジュリスの力を引き出す才能の事。或いはフォゾン環境下でどれほど肉体を動かせるかという基準でもあるわ。ジュリスっていうのは……その石みたいな結晶の事。フォゾンっていうのは、ジュリスから生じるエネルギーの事よ。エクセルシアで戦った時あなたも見たでしょう? 白い霧状の光が鎧になったところ。フォゾンやジュリスには人の意思に感応し形状を変化させる性質があるの」


 自らの首を指差すルメニカ。そこには赤い光を帯びた不思議な石のリングがはめられている。


「これが私の個人認識票。リング型に形状変化させて身につけてるの」

「なるほど、そのままじゃ無くすかもしれねーしな。俺もそうしとくか」


 石を左の手首に近づける聖。すると光を放ち、ジュリスは腕輪に変化した。二つのラインが螺旋を描く複雑な形状だ。その完成度にまたルメニカは驚愕し、そして確信する。


「なるほどね。これなら確かに、あんな馬鹿げた動きも可能でしょうね……」

「ぼーっとしてないでウルシェのもくれよ。あいつだけないんじゃかわいそうだろ?」


 頷いてもう一つ結晶を差し出すルメニカ。するとウルシェは右の手首に聖とまったく同じ形状のリングを作ってみせた。


「これでマスターとおそろいですね」

「……本当、大したもんだわ。それじゃあ食事に行きましょうか。いくらあなた達が伝説の存在だとしても、飲まず食わずで戦えるほどじゃないでしょうしね」

「メシか! 確かに丁度腹が減ってたんだ! ありがとな、ルメニカ!」


 あんまりにも無邪気に礼を言うものだから、どう対処したらいいのか迷ってしまう。結局ルメニカは照れくさそうにそっぽを向くと、二人より先に部屋から出てしまうのであった。

 案内されてやってきたのは居住区にある食堂だ。しかし広さはそれほどではなく、台所らしい台所も存在していない。壁には自動販売機のようなものが並んでおり、ルメニカはその中の一つに二人を連れて行く。


「これがレーションの自販機よ。一日に三回まで、IDを翳せば好きな物を受け取る事が出来るわ。他の場所で食事をする場合は有料だけど、ここのは無料。味はまあ……あれだけど、必要な分の栄養素は摂取出来るから、飢え死にするような事はないわね」


 IDを翳し、浮かびがったイラストにタッチするルメニカ。すると取り出し口からビニールに包まれたレーションが飛び出してくる。二人もそれを真似てそれぞれレーションを入手すると、そう数のないテーブルについた。


「レーションはどこでも食べられるから、わざわざ食堂で食べる人はあんまりいないわね。とりあえず食べてみたら?」

「お、おう……いただきます!」


 びりっと音を立てて袋を空けてみると、中には白い半液状の物体が震えていた。お世辞にも食欲が沸くとは言えないその形状にどん引きするが、ルメニカはそれを平然と舐めている。


「……な、何よ?」

「それ……うまいのか?」

「美味しいとは言わないけど、別にそこまでまずくもないわよ?」


 ごくりと生唾を飲み込む。ルメニカが嘘をついているようには見えない。意を決してスプーンを突っ込んでみると、ゼリーとヨーグルトの中間のような弾力が返ってくる。げんなりした表情で何とか掬い上げると、そのまま躊躇う間を作らず口に放り込んだ。


「………………味のないヨーグルトみたいな感じだ。ちょっと粘り気のある……」

「どう?」

「どうもこうも……だから味のないヨーグルトだっつーの……」

「それって褒めてるの? けなしてるの? 全く、旧世代人っていうのは贅沢なのね」


 隣ではウルシェもなんとも言えない表情を浮かべていた。三人の中で唯一ルメニカだけがレーションをおいしそうに食べている。それもスプーンで掬うのではなく、角の部分だけ少しだけ切り、そこにちゅうちゅうと吸い付くようにして食べているのだ。断っておくがこれは一般的な食べ方ではない。俗に言うお行儀の悪い食べ方という奴であった。


「……何よ? 何じろじろ見てんのよ?」

「はあ……こんなんじゃ食った気しねーよ。もっとマシなメシはないのか?」

「自腹を切るなら商業区に幾らでも店が出てるわよ。今はどこも物価がめちゃくちゃ高いから、まともに稼ぎもしていないあなた達には高い買い物でしょうけどね」


 溜息を零す聖。その横で諦めと決心を織り交ぜた顔つきでウルシェが一気飲みに挑んでいる。


「あれ、でもなんだ? 不思議と腹いっぱいっつーか……もういいやって感じになるな」

「でしょ? 一日三回受け取れるけど、正直二食分もあれば十分なのよね。ごちそうさま」


 パックを丸めてダストシュートに放り込むルメニカ。それに倣って片付けを終えると、壁際にあるドリンクの自販機に向かう。


「ここのドリンクも一日三回まで無料で受け取れるから貰っておきなさい」

「ただの水だよなこれ? 水でも三回しか受け取れないのか?」

「水がどれだけ貴重だと思ってるのよ。飲み水はなかなか再利用が難しいんだからね」


 やはりパックに詰められた水を手に取る聖。飲んでみると、やはりなんだかあまり美味しくない。それでも不思議な事に身体は十分だと感じているようで、気力が回復するのが分かった。


「なんでこんな水でもうまいような気がするんだ?」

「ジュースや酒が飲みたければ稼ぐ事ね。じゃあもう大体の事は伝えたから、私はそろそろ行くわね。少し一人で考えたい事もあるし……」

「あ、ちょっと待ってくれ! トイレと、あと風呂は!?」

「トイレならあちこちにあるけど……風呂って何?」


 愕然とする聖。だがルメニカは意地悪を言っているのではない。本当に風呂なんてこの船には存在しないのである。


「せ、せめてシャワーは!?」

「ああ、シャワーね。それなら商業区に行けばあるわよ。有料だけど。身体の清潔さを保つだけなら、除菌室に行けばいいわ。三十分も中で過ごせばすっかり綺麗になるから」


 そう言い残してルメニカは去っていった。聖はがっくりと肩を落とし、とぼとぼと元来た道を歩いて行く。


「マジかよ……何もかもマジかよ……」

「冷静に考えてみれば、宇宙船ですからね。止むを得ない事でしょう。安定して食料や水が確保出来て衛生も保てるのですから、とりあえずは御の字ではないですか」

「俺は日本人だぞ!? 日本人は米食いてーしお茶飲みてーし風呂入りてーんだよ!」


 仰け反り絶叫する聖。ウルシェは耳を塞ぎながら迷惑そうな表情を浮かべている。


「そうは言ってもどうにもなりませんから……諦めてこの生活に慣れるしかありませんよ」

「あーもう嫌っ! こんなわけのわからない世界嫌ーっ! 地球に帰りたぁい!!」


 思い切り叫んだ後、少しずつ冷静になる。そうしてしんみりと顔を上げて。


「地球にはもう帰れないんだな……」


 そんな風に呟いた。その横顔があまりに寂しそうだったものだから、ウルシェはそっと手を握り締めた。寄り添うようにして頭を擦りつけ、目を閉じて囁く。


「大丈夫ですよ、マスター。あなたは一人ではありませんからね」


 苦笑を浮かべウルシェの頭を撫でる。そうして気持ちを切り替え、真剣な眼差しで言った。


「なんだかわけがわからねーが、とにかく今は生きるのが最優先だ。まずい飯食ってまずい水飲んで固いベッドで寝て……除菌室だかなんだかわけわからねーところで風呂に入ったような気になりながら、何とか探すさ。これから何をすべきなのかを、な……」




 こうして二人のデヴォンジャー号による生活が始まった。

 ライダー、即ち輝光機のパイロットに与えられた仕事は主に二つ。サルベージ作業への参加、そして外敵との戦闘である。

 デヴォンジャー号には無数の輝光機が存在しているが、戦闘を前提としているのはトリフェーン隊のみである。たった三機しか存在しない高性能輝光機がこの船の守りの要であり、そのパイロットだけがライダーという扱いを受ける事が出来る。聖とウルシェはこのライダー役職として、主に輝光機を使用した作業に借り出される事になるのだが……。


「仕事がねええええっ!! 働き口がないのにどうやって金を稼げばいいんだよ!!」


 商業区の噴水広場前で頭を抱える聖。その隣ではウルシェが涎を垂らしながら呆けている。


「あの人たちが食べているお肉の串焼き……おいしそうですね……」

「くそっ、いっその事買っちまうか……!? いい匂いさせて歩き回りやがってクソが!」

「串焼き一本、千二百クオーツ……私達の今月分の給料が三万クオーツですから……毎日お肉を食べているととても一ヶ月持たない計算になりますね……」

「ライダーってのは高給取りだって聞いたぞ!? それなのにこれか!?」

「そりゃ、お前達は二人で一人分の給料しか貰ってないからじゃない?」


 地べたに転がりのた打ち回る聖。そこへ若干引きながら声をかけたのはトレイズだ。少年は黙って手にしていたパックから串焼きを取り出し二人に差し出した。


「トレイズ……お前、これ……食っていいのか!?」

「いいよ。お前の言う通りライダーは高給取りだからな。同職のよしみだ、遠慮なく食え」


 ぱあっと明るい笑顔を浮かべ肉に食いつく二人。涙を流しながら喜ぶその様子をのほほんと眺めながらトレイズも串焼きに齧りついた。


「うんめぇ! お肉おいちい! お肉おいちいでちゅー!」

「人間はやはり肉食動物だったのですね……ああ、この串も最期まで舐め回したいです……」

「お前らやっぱりなんかキモいな……」


 冷や汗を流すトレイズ。速攻で肉を食べ終えた二人が自分の串を狙っている事に気付き、少年は呆れた様子でそれを二人に分け与えた。


「デヴォンジャー号での生活には慣れた?」

「慣れるも何も、ここ数日寝て起きてブラブラしてるだけでよ……何にも仕事がねーんだ」

「そりゃそうだ。ライダーの仕事は強制出撃だけじゃないからな」


 口元のタレを拭いながら首を傾げる聖。その指にウルシェがしゃぶりついている。


「おいやめろウルシェ……。それより、強制出撃だけじゃないってどういう事だ?」

「ライダーに艦長から指示が出るのはファミリー全体で仕事をする時だけだ。それ以外は基本的に自由行動なんだよ。その間どうしてるかっていうと、自発的にアークやデブリに赴いてジャンクをかき集めるか、副業でもして稼ぐしかないんだ」


 ウルシェの口から指をすっぽぬき、涎をズボンで雑に拭う聖。それからトレイズの手を取る。


「トレイズ、俺達に仕事を教えてくれねーか? このままじゃ暇だし金も稼げねーんだ!」

「い、いいけど……ちょっと、その手ちゃんと洗ってくれる? きったねえなあ……!」

「ありがとうトレイズ、心の友よ!」


 笑顔で手を上下に振る聖。トレイズは対照的に青ざめた顔で頷いた。


「そういえばちゃんと自己紹介してなかったな。トリフェーン隊所属、三番機専属パイロット……トレイズ・ボルカだ。宜しくな、新入り」

「俺は峰岸聖だ。お前……いい奴だな」

「いい奴って……どうしてそう思うんだ?」

「俺達はアークってわけのわからん遺跡みたいなところで発見された得体の知れない奴らだろ。それなのにこんなに親切にしてくれるなんてよ」

「ああ、そんなのは別に親切でもなんでもないんだ。当たり前の事なんだよ、この宇宙じゃ」


 照れくさそうに笑った後、頭の後ろで手を組んでトレイズは真剣な表情を浮かべる。


「何もかもが限られているこの世界じゃ、人間はとにかく助け合わなきゃ生きていけない。それにこのデヴォンジャー号に一緒に乗ってる奴は皆家族……ファミリーだ。ファミリーの中には色々と複雑な事情を抱えてる奴らも居る。だけど皆分け隔てなく接し、過去については掘り返さない。それがデヴォンジャーファミリーの掟、その四なんだ」


 そうして白い歯を見せ少年は笑う。それは自らの行いに誇りを抱いた男の笑顔であった。


「この船に居る限りお前もファミリーの一員だ。それに同じ輝光機隊の仲間だからな。何かあったら遠慮なく俺を頼れよ。それが俺を育ててくれたこのファミリーに対する恩返しになる」


 立ち上がった聖はニヤリと笑い、そしてトレイズと強引に肩を組んだ。


「やっぱりお前はいい奴だ! 宜しく頼むぜ、トレイズ!」


 少し困ったように笑うトレイズ。ウルシェはそんな二人を隣でじっと見つめていた。

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