さよならのかわりに(2)
「もうやめてお兄様! こんな事誰も望んでない! 誰も幸せになれない! お兄様自身だって……こんな事したってなんにもならないっ!!」
泣き叫ぶルメニカ。だがアルヴァートは応じない。既に彼が追いかけているのは自らの理想であって、現実のルメニカではなかった。襲い掛かるロード・クロサイト、そこへガドウィンのトリフェーンが庇いに入る。
「逃げろルメニカ! こいつはもう助からん! ブライドに魅入られ、フォゾンの力と同化しようとしている……! 最早殺すしかない!!」
刃を叩き付けるがロード・クロサイトに傷をつける事は出来ない。そこへ背後に回りこんだデヴォンジャー号がビーム砲を向けた。ガドウィンは目の端でそれを捕らえ、ロード・クロサイトの手から逃れると同時、蹴り飛ばして体勢を崩した。
デヴォンジャー号からの艦砲射撃が飛来しロード・クロサイトに直撃する。この火力は流石に無視出来なかったのか、振り返り胸部の大型砲で反撃しようとする。そこへガドウィンが後ろから組み付き、そのままロード・クロサイトを連れて離れて行く。
「ルチリアだけはやらせん……!」
「お前……ガドウィン・グルッフェル! どうして僕の邪魔をするの!? お前も僕と同じ、再生者のクローンだろう……!? ルチリアとかいうあの女とつがいにする為に作られた、僕のプロトタイプのくせにっ!!」
眉を潜めるガドウィン。だが男は動じる事なく機体の出力を上げる。
「確かに俺は偽者の再生者だ。結局ルチリアとの間に子供を作る事は出来なかった失敗作だ。だがそれでも構わない。一生を捧げ守ると決めた女だ。偽者か本物かなんて事はどうだっていい。俺が選んで決めた事だ。ならば最期までその意志に殉ずるのみ……!」
「ガドウィン……死ぬつもりですか?」
「こいつをアーク・リブラのジュリスコアと一緒に吹き飛ばす……それくらいしなければこいつは落とせん。住人は避難し終えている……気にしなくてよい」
立ち上がり悲しげな様子で通信に耳を傾けるルチリア。一方ルメニカはきょとんとした様子であった。あの二人の関係と過去については、ルメニカも何も知らなかったわけで。
「えーと、それって二人は……もしかして、不倫関係……?」
「誤解しないでくださいルメニカ。私たちは最初からその実験の為に作られたのです。王の側近として妃の役割を任されたのはガドウィンと関係を絶たれた後……不倫ではありませんよ」
通信越しに寂しげに微笑みかけるルチリア。そして女は優しく告げる。
「アーク・リブラで……あなたのクローンを見ましたね? 私もその一人です。私も……アルヴァートと同じでした。ルメニカ。私はあなたになりたかった。そして……私の母であるあなたに強い欲情を抱いていました」
「えっ」
最早何もかもがしっちゃかめっちゃかである。母親だと思っていた女が実は娘に値する人物であり、しかも女同士だというのに自分に欲情していたと告げられたのだ。ルメニカだけでなく、聖もすごくやるせない顔をしていた。
「自らの本能のせいとはいえ、そんな歪んだ自らの存在を否定したかった私は、あなたに冷たく接してきました。そのせいで傷付いた事もあったでしょう。私はベルスターの呪いから逃れる事の出来なかった亡霊の一人です。ならばこの顛末は私が幕を降ろすべきでしょう」
「そんな……どうするつもり……?」
「デヴォンジャー号でロード・クロサイトと共にアーク・リブラを終わらせます。クルーの皆には申し訳ありませんがここで退場していただきましょう。あなた達と共にファミリーとして過ごした日々……決して忘れません」
胸に手をあて目を瞑るルチリア。そこへルメニカの怒声が突き刺さった。
「ふざけないで!! あーもう、みんなしてサイテーよね……! どいつもこいつもちょっとおかしいんじゃないの!? 急にそんな事言われたって、納得出来るわけないでしょ!」
コックピットの中で俯くルメニカ。涙を拭い、顔を上げる。
「私はアルメニカ・ザ・レッドなんかじゃない! 私はルメニカ・オルナット……あなたの娘です! 私は! 私の記憶にあるあなたは! 確かに私の……みんなのお母さんだった!」
ルメニカは所詮、不完全な覚醒を迎えたブライドが自己防衛の為に作った仮想人格に過ぎない。故に彼女に全ての記憶はなく。だからこそ、彼女の知る全てこそが真実である。
「私、お母さんの事が好き! そりゃ恋愛対象には出来ないけど、それでも好きです! 船のみんなにとって! ファミリーにとってあなたは必要な人なのよ! 今更かっこつけて死んで全部終わらせようなんてふざけないで! 大人なら――責任を果たしなさい!」
真っ直ぐに自分を見つめるルメニカ。呆けたままで視線を移せば双子がルチリアを見つめていた。泣き出しそうな顔で、必死に訴えかけていた。いなくならないで、と。
「私の遺伝子が……ブライドがあなた達の人生を狂わせたっていうのなら……。それを、そんな哀しみを終わらせるっていうなら……! それこそ、私がやるべき事じゃない……!」
ぎゅっと拳を握り締める。迷いはある。後悔もある。恨みもある。誰もが自分を騙していた世界。誰もが自分を利用していた世界。だけどそれだけじゃない。人はみんな誰かを騙して利用して生きている。傷つけたり擦れ違ったりしながら、それでも確かな自分を抱いて生きている。だったらそれでいいじゃないか。なんて素晴らしい――矛盾に満ちた世界。
「聖、私……泣くのやめる。私……ここから始めたい! これまで誰かに隠されていた世界の事! 私の人生! 全部全部もう一度ここから……それで……救世主になりたいよ!」
エクセルシアのコックピットで見詰め合う二人。聖はそっとルメニカに手を伸ばす。震えている手を握り締め、しっかりと指を絡ませる。少しでも勇気を分け与える事が出来るように。少しでも自分を奮い立たせられるように。
「お前……自分が何をしようとしてるのか、わかってるのか?」
「わかってる。ちゃんと考えた。いっぱい考えて……それで選んだ事だから」
「お前、ブライドの偽装人格なんだろ? もしブライドとして覚醒したら……お前……」
そっと首を横に振る。そうして少女は聖に顔を寄せた。
「私は消えない。私は……私はブライドじゃないかもしれない。人間じゃないかもしれない。どちらでもないのかもしれない。それでも私は、どちらにもなれないまま私は……それでも私だって言える。だから聖、お願い。私を……解き放って!」
息のかかるような距離で見詰め合う二人。だが聖はまだ迷っていた。ルメニカは頬を赤らめながら更に身を乗り出し、照れくさそうに目を逸らす。
「私じゃ……嫌……かな?」
「あ、いやいや……そういうわけじゃ……ねーんだけど……。取り返し、つかねーぞ? 本当に……いいのか? お姫様が、俺みたいなどこの馬の骨とも……っ!?」
言葉を塞ぐ暖かく柔らかい感触に聖は目を見開く。抱きつくようにしてルメニカは聖と唇を重ねる。そうして舌を絡め甘い口付けの時間が始まった。峰岸聖という再生者のDNAを体内に取り込み、ルメニカは少しずつ自らの中にある枷を外して行く――。
そうして口を離した二人は同時に呼吸を再開した。息を止めていたせいで少しだけ呼吸が乱れている。ルメニカは口元を抑えつつ、上目遣いに聖に言った。
「あんたみたいな、じゃないよ。あんただから……信じようと思ったんだから……」
「……えーと、ラブコメは終わりましたか?」
びっくーんと背筋を伸ばし、慌てふためいて振り返る二人。そこには頭から血を流しながらジト目で二人を見ているウルシェの姿があった。
「いいいいいやいや、あのその、これはだなぁ……!?」
「マスター……ブライドの人権や自由を守るんじゃなかったんですか……?」
「いやーーーーだからこれは、ルメニカの奴が勝手に……!」
「あ、最低! 女の子のせいにするつもり!? ちゃんと責任とってもらうからね!」
「最低最悪ですね、このマスター。いきなり正々堂々多重結婚とは……早く刺されるべき」
二人の言葉に青ざめ、本気で頭を抱えて悩む聖。壁に頭をガシガシぶつけている様子に二人の少女は笑い、それから真剣な様子で見詰め合う。
「私はもう、マテリアライズ出来ません。ザ・レッド……あなたの力を貸してください」
「自分で動かすなら出来るんだけど、私にウルシェみたいに出来るかな……?」
「安心して下さい。少しなら手を貸せます。さあ、後部座席に座って」
ウルシェと交代し席に着くルメニカ。身体にプラグを刺した瞬間、その瞳と髪が燃えるように輝き、全身を赤い光が覆う。次の瞬間にはマテリアライズされたライダースーツがルメニカの身体を覆っていた。操縦桿を握る赤の花嫁。その上から白の花嫁が手を重ねる。
「難しく考える必要はありません。ブライドとしての本能に従えば……出来るはずです」
だがそれは自分自身を、仮想人格に過ぎない自分を否定する行為だ。不安がないわけではない。だがそれを諭すようにウルシェは優しく耳元で囁く。
「大丈夫……自分を信じて。私たちのマスターは、私達の意思を大事にしてくれる方です。もしもあなたが消えてしまいそうになっても、きっと手を繋いでくれる。手繰り寄せてくれる。だから……私と心を一つに」
頷いて感覚を解き放つ。記憶に覆われた本能をエクセルシアに流し込む。それは言いようのない快感。自分自身がどこまでも広がり、暖かさに包み込まれる。次の瞬間赤い光がエクセルシアの全身から迸り、闇の中に舞う赤い粉雪は一瞬で形を変え、傷付いたオリジナルに新たな装甲を構築した。
それはウルシェのスノードロップとは全く異なる外見。重い鎧を纏った露骨なパワータイプのマテリアライズ。首からマントをはためかせ、隻腕の騎士は頭を上げた。
「これが私の……タイプ・マグナパラディオ……」
呆けながら呟く名前。そして気付く。自分はまだ自分のままだ。ルメニカはルメニカのままだ。少女は自意識を確かに掴み取った。強く燃えるような眼差しで前を見る。
「行くわよ、マスター! 哀しみを終わらせる為に!」
「……俺はなんてクソ野郎なんだ……。俺は生涯たった一人の嫁さんを大事に守っていく平々凡々な人生を歩むはずだったのに……どうしてこんな事に……」
「あーもう、うるさい! 今はそんな事どうだっていいの! 仲間を助けるんでしょ!? 英雄になるんでしょ!? 私が認めたマスターだったら、くよくよせずに飛びなさい!」
頭を掻きながら顔を上げる聖。溜息を一つ、操縦桿を握り締める。
「……ったく、うるせーのが増えやがった。考えるのは後だ! 飛ばすぞ、ルメニカッ!!」
ロード・クロサイトと共にベルスターコロニーを目指すガドウィン。だが途中で振り払われてしまい、頭を掴まれてしまった。みしみしと潰されるトリフェーンの頭部。ガドウィンは舌打ちし、頭部をパージして剣を取る。
「貴様だけは、俺がなんとしてでも……!」
瞳を輝かせビーム砲に光を収束するロード・クロサイト。そこへ彼方より闇を切り裂きエクセルシアが飛来する。ビームが放たれた瞬間トリフェーンとの間に割って入り、赤いマントで光を弾き飛ばした。
「何……エクセルシア……!? だが、この外見は……!」
「退きなさいガドウィン! こいつは私達が引き受ける!」
「ルメニカが乗っているのか!? まさか、では……!?」
「この感じ……ママ! ママなんだね! やっと目を覚ましてくれたんだ! 僕を迎えにきてくれたんだね、アルメニカ!!」
掴み掛かるロード・クロサイト。それをエクセルシアは蹴り飛ばして応じる。赤く輝く光のマントを払い、正面へと腕を伸ばす。
「私は誰の道具でもない。誰の物でもない! 私は私……その自由と存在意義は、自分の手で掴み取ってみせる! だから聖、使って! 私の――この世界に対するラブレター!」
光が収束し、回転しながら落ちてくるのは光の剣。赤き騎士はそれを掴み、片腕で軽く振るう。神々しいその姿を睨み、アルヴァートは雄叫びを上げた。
「僕を否定するな……僕を……否定するなああ!!」
狂気は輝光機により強化され拡散する。迸る闇を浴びながらしかしエクセルシアは穢れを知らない。乙女の鎧は決して邪悪を寄せ付けはしない。光の剣で一閃し、聖は前へ。
「そんな方法でわかってもらおうなんて間違ってるんだよ! 本当に誰かに理解してもらいたいのなら! 受け入れてもらいたいのなら! まずお前が相手を信じるべきなんだ!!」
怨念の鎧を引き裂く剣。初めてまともにダメージを受けたロード・クロサイトは怯えるように後退する。エクセルシアは赤い光の尾を引き、それを追撃していく。
闇の中を駆け巡る二つの光。激しくぶつかり合い、世界にその存在を鳴り響かせる。
「ねえアルヴァート! 本物になるのってそんなに大事!? 本物って誰が決める事なの!? 誰かが偽者だっていうから私達は偽者なの!? 違うでしょ? 私達は――ッ!!」
「自分の存在意義は誰かに決めてもらう物じゃない。自分で考えて決める事……今ならわかる。マスターが私に教えてくれた事。だから私は……今の自分を信じられる……!」
二人のブライドの思いを背に受け飛翔する聖。エクセルシアの背中にあったマントが形を変え、赤い光の翼を作る。そしてその頭上に光の輪が浮かび上がった。
「な、なんだこいつ……!? ロード・クロサイトが……どうしたっていうんだ!?」
「輝光機が人間の想いを増幅するっていうんなら、てめーだけじゃねえんだよ! 俺達の思いが! 意志が! こいつを動かす……世界を変える……最期の切り札だ!!」
天に高々と剣を掲げるエクセルシア。紅蓮の騎士はその刃にありったけの力を収束させていく。全てのブライドが持つ広域殲滅攻撃、ジャッジメント。これがルメニカのタイプ・マグナパラディオの必殺技――。
「いつまでも小せぇ事にすがり付いて女追っかけまわしてんじゃねえ! 男なら……! 引き際ってもんを――弁えやがれぇええええええええッ!!」
絶叫しながらビームを放つロード・クロサイト。だがその光をもエクセルシアは両断する。その一撃は天より降り注ぐ断罪の一撃。たった一振りの刃がロード・クロサイトを、そしてその背後にあったベルスターコロニーを切断したのだ。
「馬鹿な……ロード・クロサイトが……!? 嘘だ……こんなの嘘だぁあああっ!!」
大規模な爆発を巻き起こすベルスターコロニー。光に照らされながら佇むエクセルシアから赤い光と翼が消え、元の姿へと戻る。と、そこで聖は思い出したように叫んだ。
「ヤッベェ! あのコロニー、まだ晶とミリアムがいたような気がするんですけど!?」
「……その通りだ。全く容赦のない事をしてくれるね、聖」
炎の中から飛び出してきたのはワイヤーでミリアムのヘリオトロープを牽引するリージェントであった。人型に変形するとワイヤーを切り離し、エクセルシアの前に停止する。
「晶! やっぱり生きてたか!」
「オリジナルの防御力でなければ即死だったよ……あの艦長には借りが出来たな」
鼻を鳴らして笑う晶。それから赤い装甲を纏ったエクセルシアを見つめる。
「……どうやらその様子ではブライドはお前と契約したようだな、聖。ふん、ブライドには自由とやらが必要なんじゃなかったのか?」
「うぐぅっ! ほんま……ほんますいませんでした……っ」
「聖は悪くない、私が選んだ事よ! 誰に言われたわけでもなく、自分の意志でね!」
ウィンクするルメニカに涙を拭う聖。だがまだ全てが終わったわけではなかった。
両断されたロード・クロサイトだが、切り裂かれたのは肩から先だけ。コックピットは無事であった。すっかり動かなくなっているものの、間違いなくアルヴァートは生きている。聖は誰に言われたわけでもなく、彼を生かすことを選択した。
「お前ならこうすると思っていたよ。つくづく甘い奴だ」
「あいつだって被害者なんだ。やった事は許されねーけどよ……だけど、やり直す機会があってもいいと思うんだ。死んじまったらそれすら出来ねーからな……」
「だがあいつは俺達が手を下さずとも死を選ぶだろう。お前はそこまで考えていたか?」
アルヴァートが微動だにしないのは、生きる気力を全て失ってしまったからだ。あとはただフォゾンの力に飲み込まれ朽ちていくだけの身体……それを救う事は聖には出来ない。だがその時だ。壊れかけたロード・クロサイトへ、壊れかけたヘリオトロープが近づいて行く。
「閣下……アルヴァート! 私です! ミリアムです!!」
ミリアムの呼びかけにアルヴァートは応じない。強引にヘリオトロープを使ってハッチを抉じ開けると、抱き合う二機の間をミリアムは移動。ロード・クロサイトのコックピットへと飛び込んだ。そこには項垂れたまま身体を結晶に蝕まれる主君の姿があった。
「僕は……もう……何もない……。僕は、本物になれない……」
「――本物です。本物に決まっているではありませんか。アルヴァート……」
ミリアムはヘルメットの中を涙でいっぱいにしながら男を抱き締める。彼女は、彼女だけはずっと彼の傍にいた。ずっとずっと、彼を見守って来た。
生まれて三日で十代後半ほどにまで育ったアルヴァート。そんな彼を、それこそ産まれる前からミリアムは守ってきた。彼の事ならばなんだって知っている。あんなにも努力していた事。あんなにも苦悩していた事。孤独な王様のすべて。だからこそ守ろうと誓った。愛する彼の為に、全てを犠牲にしようと決めたのだ。
「あなたは間違いなく本物の王だ。私にとって、あなたはあなたしかいない。私にはあなたが必要だ、アルヴァート……どうか、どうか。私の為に生きていてほしい。私を……一人にしないで……。アルヴァート、あなたを……愛しているのだから……」
表情も変えず、廃人のように虚ろな瞳のまま、しかしアルヴァートは涙を流した。何もかもをかなぐり捨てて狂気に走った男が流す涙。それは一縷の希望となるのだろうか。
「お前、これを見越してミリアム拾ってきたのか?」
「……お前のやりそうな事はわかりきっている。それを手助けするのはいつもの事だ。だが……勘違いするなよ聖。僕たちは結局、どこまでも平行線なんだからな……」
「それでも……ありがとな、晶。俺、この戦いの間だけでも何度もお前に助けられたよ。お前が居なかったらうまく行かなかった。だから……ありがとうな、相棒」
光を背に向き合う二機。そこへ遠くからデヴォンジャー号が近づいてくる。
こうしてベルスター帝国での戦いは終わった。アーク・リブラの消失と共に全ての忌まわしき過去は消え去ったのだ。呪いの血に囚われた全ての者が明日へと一歩を踏み出し、そしてこの日、ベルスター帝国の短い歴史はひっそりと幕を降ろしたのであった――。




