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Criminal Town?(7)

 僕は日が落ちてすっかり人気のなくなった『S』地区を歩き、金網を乗り越え、無人のホームを抜けて僕を乗せてこの街にやってきた電車に乗り込んだ。

 他の二両の電車がそれぞれ違うホームに停まっている。それらの電車がどこから来て、どこへ向かうのか、僕らと目的地は違うのか、気になったけどすぐにどうでもよくなった。結局のところ僕は自分がどこへ行くのか、行きたいのか、行こうとしているのかだけに神経を集中させていればいいんだ。

 乗り込んだ車両には一人の女性が街に出ずそこに留まっていた。

 六十歳前後の、長い髪に白髪の混じりはじめた、小柄で穏やかな雰囲気の女性で、彼女はおばさんからおばあさんに成り変わる過程にいるように僕は感じた。


「おかえりなさい」彼女はにこりと音がするような笑みを浮かべて言った。まるで僕の本当の祖母がするみたいに。

「……ただいま」


 僕は自然とそう答えていた。まるで本当の家族に対してそうするみたいに。


「犯罪者の街はどうでしたか?」


 彼女は四人掛けの席に座っていて、自分の目の前の席を促すので、僕はそこに腰掛けて隣の座席にからっていたリュックを置いた。


「怖くて、醜くて、くだらない街だった。それに祭りがあって、人がたくさん死んだんだ」

「あらまぁ」彼女は上品に口元に手を当てた。「でも無事に戻れて良かったわね。あなたくらいの子を見ると、残してきた孫のことを思い出すわ。そのくらいの年の子が死ぬのは、孫がいなくなるのと同じくらい悲しい」


 神妙な顔をして何度も頷く彼女は、どうやら本気でそう思っているようだった。彼女の表情を見ていると、僕にはなんとなくそれが分かった。


「犯罪者の街になんて、わざわざ自分から進んで行くことないのよ」


 彼女はまるで独り言のようにつぶやいたいた。その口調から、僕は彼女が何らかの犯罪被害にあったのかもしれないと予想したけど、あえて聞くようなことはできなかった。

 それでもそのどこか遠くを見据えるような表情を見ていると、僕はこの街に着いてから初めてマトモな人間に会ったような気がしたんだ。

 そうさ、彼女の言うとおり、どうして犯罪者たちが暮らす街になんてわざわざ行く必要があるんだろう。犯罪者なんて僕の知らないどこか遠くの場所で、勝手に殺したり殺されたりしていればいいのに。

 そんな当たり前のことを考えていると、僕はひどく悔しいやら腹立たしいやらで……それなのにどうしてこんなにも、ハスイや死んでいった犯罪者たちの顔が頭の中にチラつくんだろう。

 どうして死んでしまえばいいと思っていた彼らに同情して、彼らのことを本当にかわいそうな、申し訳なく思うような気持ちになって、胸が締めつけられるように苦しいんだろうか!


「おやおや」


 断言してもいいけど、僕は泣いてなんかいなかった。うつむいてしまった僕を見て彼女が勝手にそう勘違いしただけだ。

 それなのに、彼女がささくれ立った、けれどとても暖かい手で僕の頬をなでたりするもんだから、僕はまぶたの奥から熱いものが込み上げてくるのを止めることができなかったんだ。


「あなたはまだ若いから、いろんな物事を白黒ハッキリさせようとしすぎているのよ。あなたもそのうちに、言葉にならない感覚や、納得のいかないもやもやした気持ちを咀嚼して、本来在るべきものと違う形に置き換えて、心のそばに置いておけるようになるわ。それがきっと大人になるっていうことなのね、私の言っていること、まだ分からないでしょうけど」


 僕には彼女の言うとおり彼女の言っている言葉の意味が分からなかったけど、それはきっと正しいんだろう。なんとなくだけど、僕はそんな気がしたんだ。


「いろんなことがあって、ひどく疲れたんでしょう? 何もかも忘れてぐっすりと眠るといいわ。私もあんな事件に遭ってしばらくは――何もできずにただひたすら眠っていたもの」


 彼女の言葉を聞き終える前に、僕は何もかもを忘れ、電車の硬いイスの上に身体を丸めて眠りに落ちていた。夢を見る隙間すらないような、それは深い深い眠りだった。

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