表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

第3話 冒険者互助組合規約

「……ユニオン? 何だそれは。新しい魔導組織か?」


バルガスが眉をひそめる。和雄は、返り血のついた机の端に、真っ白な紙を一枚広げた。


「いいえ。これは戦うための組織ではありません。『共助』のための仕組みです。リナさん、羽根ペンを。インクは……あなたの魔力で少し定着を強めていただけますか」


和雄が書き始めたのは、この世界で初めての「冒険者互助組合規約」だった。


周囲にいた、怪我をしても治療費すら出してもらえない若い冒険者たちが、一人、また一人と足を止め、和雄の書く文字を覗き込む。


「みなさん、聞いてください。あなたがたが魔物に立ち向かう勇気は尊い。しかし、その勇気がギルドマスターの贅沢のために『消費』されていいはずがない」


和雄の声は、決して大きくはない。だが、静かな事務室で何年も労使交渉を重ねてきた男の言葉には、独特の重みがあった。


「今日から、報酬の五分の一を積み立てましょう。それはバルガスの懐ではなく、怪我をした仲間や、残された遺族のために使われる『保険金』です。そして……」


和雄はバルガスを真っ向から見据えた。


「これに賛同する者がこの場に十人以上いれば、彼らは一斉に『業務を放棄』します。つまり、明日からこの街の魔物退治は誰も行いません。ギルドの運営は止まり、王都からの信用も失墜するでしょう」

「な、貴様……ストライキだと!? 冒険者の本分を忘れたか!」


バルガスが机を叩いて立ち上がる。だが、周囲の冒険者たちの目は、もはや怯えていなかった。彼らは和雄が書いた『規約』という名の、初めて手にした「盾」を見つめていた。


「バルガスさん。これは脅しではありません。あなたが彼らを人間として扱い、適正な分配を約束するための、唯一の『交渉の席』を用意しただけです」


リナが震える手で、和雄の書類に魔力を込めた。文字が淡い青光を放ち、広場の空中に浮かび上がる。

それは、力こそがすべてだったこの世界に、初めて「契約」という概念が刻まれた瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ