第二話 秘密の逢瀬
それから、わたし毎日がんばったの。
呪うの。
朝も、昼も、夜も。
1日、2日、3日が経って。
わたしとうとう履く靴がなくなったの。
だってすぐには乾かないんだもの。
その頃にはわたしも気づいてた。
呪い、跳ね返されてるなって。
けど、負けるわけにはいかなかったの。
だから、
「なんでこうなるのよぉ……」
その夜も、泣きながら靴を洗ってた。
トントン。
窓が何かに叩かれる音。
ここ三階なのに…。
不思議に思って窓に近寄ったら、
「こ、小鳥!?」
紫の小鳥が手紙を持ってた。
なんて愛らしいの!まるで物語のようだわ!
小鳥を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じる。
「か、可愛い〜〜!」
胸の高鳴りをなんとか抑えながら、手紙を受け取る。
もしかして、素敵なパーティーの招待状かしら。
それとも、森の魔法使いの舞踏会とか。
きっと可哀想なわたしへの、神様からのプレゼントね!
ぺら。
手紙を開いてみる。
"毎日毎日うんこ送るのやめてください"
「……へ?」
何回読んでも同じ文。
「いたっ」
小鳥がわたしの手をつつく。
……なるほど、この小鳥は彼の守護者の手先ってわけね。
小鳥の足元にはペン。
返事を、書けってことなのね。
「わかったわ、小鳥さん。返事、ちゃんとかくから待ってて?」
わたしはペンを取る。
「い、や、で、す」
その瞬間、ぱぁ、と部屋中に光が満たされた。
「きゃっ……!?」
光が収まり、なんとか目を開けてみると、そこには……誰かが立ってる。
「やめろっていってんだよ。呪い」
不機嫌そうな声。
さっきまで小鳥が座ってた机の上には、紫色の髪が目立つ、顔を顰めた男の人。
「あなた……机の上に座るなんてはしたなくてよ」
「うんこ送りつけてくるやつにいわれたくねえ」
男の人は文句を言いつつも机から降りる。
「もしかして、あなたが、わたしの呪いを跳ね返してる方?」
「そうだが」
「ふふっ……」
いけない、思わず笑みが。
だって伝えたいことがあったんだもの、なんて幸運なのかしら。
「やめてくださる?跳ね返すの。もう靴がないの」
「送んなきゃいい話だろうが」
男の人はため息をつく。
「だめよ。やめないわ。だって、おかしいじゃない」
頭に浮かんでくる、彼との日々。
「彼、うんこの一つくらい踏んだほうがいいわ。わたし、彼のこと、本当に好きだったのよ」
いけない、涙が。
こんな初対面の方の前で、はしたない。
「……わかったよ。泣くなって」
男の人は、ハンカチを貸してくれる。
「お前の呪いは中途半端なんだよ。だから、俺が邪魔してなくても跳ね返ってる。……俺が教えてやる。本当の呪い方を」
「えっ……!?」
そんなことがあるなんて!
この方、彼の守護者のはずなのに、なんてお優しいのかしら!
「俺はサク。これから毎晩、教えてやる。……ただし、このことは、誰にも言うなよ」
「ええ、ええ!もちろん!よろしくお願いしますね!」
今日はとても気持ちのいい夜だわ!
これから、楽しくなりそうね!




