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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第一章、切れてるようで、繋がっている関係

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料理部はお休みです

家庭科室のドアを閉めた瞬間、胸の奥がきゅっと縮んだ。  


……何でだろう?


「お疲れ様」

 ちゃんと笑えていたはずなのに、廊下を歩き出した途端、足取りが少し重くなる。

 ――明日は来ない。

 月曜まで、家庭科室には来ない。脇阪くんは、ただ事実を言っただけだ。


 お母さんがお休みで、夕飯を作る理由がない。だから部活も休み。それだけなのに。

「……私、何期待してたんだろ」

 自分に小さく言ってみても、答えは返ってこない。

 卵を失敗して、落ち込んで。でも怒られなくて、笑われもしなくて。

「もう一回やればいい」って、当たり前みたいに言ってくれて。


 一緒にご飯を食べて、他愛もないやり取りをして。今日は、楽しかった。

 明日も、何かしたかった。料理じゃなくてもいい。 成功しなくてもいい。ただ、この場所にいられたら、それでよかったのに。


 でも――。

(……結局、甘えすぎだよね)

 そう思ったからこそ、卵を焼こうとした。

 そう思ったから、「明日も」って言い切れなかった。

 脇阪くんには、きっと全部は伝わってない。私がどんな気持ちで、フライパンを持ったのかも。 あの場所で、私がどれだけ救われているのかも。


「……当たり前だよね」

 家に帰って、ベッドに倒れ込む。スマホを開いて、閉じるの繰り返し、連絡先を見ても、彼の名前はそこにはない。

 これが今まで積み上げてこなかった、彼との関係。その現実が、思ったよりも胸に残っていた。



 ――翌日の木曜  あまり眠れなかったので、少し寝不足のまま学校へ行く。廊下ですれ違うクラスメイトの声が、いつもより遠く聞こえた。


 無意識に、家庭科室のある方向を見てしまう。

(……今日は休みだってば)

 自分に言い聞かせて、視線を逸らす。

 今日は家庭科部の活動はないし、行く理由もない。それでも。

(昨日まで、当たり前みたいに行ってたのに)

 放課後には家庭科室の前を通らず、意味もなく遠回りをしてグラウンドに向かう。


 ――月曜までは来ない。

 その言葉が、頭の中で何度も繰り返される。


「……月曜、かぁ」

 少し、遠い。でも。

(……次は、ちゃんと卵焼けるし)

 意味の分からない意地を、心の中で張ってみる。


 甘えすぎない。 そして前より少しだけ、上手くやれるようになった姿を、彼に見せたい。  月曜日には、またあそこにいこう。そして彼に伝えよう。


 私が、いなくなるつもりなんてないこと。  それを彼に伝えるのは――  次に家庭科室のドアを開ける、その瞬間だ。

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