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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
近いようで、遠い距離

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カプ厨は程々に

「⋯⋯ってわけでさぁ!私としては、二人の気持ちを知りたいわけですよ!」

 ⋯⋯この話、まだ続くんだ。一区切りしたから終わったのかと思ってた。

 食事については一段落ついて、未だに食べ進めるグループと、雑談にシフトするグループに分かれていた。

「ワッキー、なんで倒れてんの?」

「燃え尽きたよ⋯⋯真っ白にな」

 脇阪くんは、先程まで普段使わないテンションだったためか、疲れ果てていた。


「実際、どうだったの?文化祭デートについては」

「だから、デートじゃないって」

 今回の事は、友達と遊んだのとさして変わらない、と思う事にしている。だからデートではないんだ。


「分かった分かった。じゃあデートじゃないって事にして、一緒に遊んでどうだったの?」

「楽しかったけど?」

 また、彼と遊びたいと思うくらいには、楽しかった。その時は私から誘ってみようか、⋯⋯出来る気がしないけど。


「そういうんじゃなくて、ドキドキした!とか、そういうのないの!?」

「⋯⋯それ答えなきゃ駄目?」

「うん駄目。一生のお願い」

 ⋯⋯これは答えておかないと、しばらく続きそうな感じだ。溜息をつきながら、文化祭での出来事を振り返る。


 ドキドキしたか?と聞かれたら、したと思う。不意に手を握られた時や、彼に飲み物を渡した時には心臓が跳ねるような感覚だった。

「⋯⋯まぁ、いつも通りだったと思う」

 だけど、その時だけだ。異性に突然そういう事をされたら、誰が相手でもドキドキはするだろう。


「いっちばんつまんない回答だわー」

「そう言われてもなぁ⋯⋯」

 向こうは別段いつもと様子は変わらなかったし、お化け屋敷でからかった時なんて、冗談混じりだったけど、嫌われそうにもなった。


「じゃあ、琴音は好きな人と遊んだとしたら、どんな感じなの?」

 ただ単に質問攻めにあっているのも癪なので、琴音の恋愛観というのも聞いてみよう。


「私だったら、もう話しかける時点でドッキドキよ!一緒にいられるなんてなったら、緊張で心臓バクバクだろうけど、それでも一緒にいられるのが嬉しかったりするね!」

 ⋯⋯緊張?確かに最初のうちはしていたと思う。久しぶりにする会話にぎこちなさと、彼に迷惑をかけるという後ろめたさ。でも、琴音が言いたい緊張とは、そういう物ではないだろう。


「私がデートするなら、例えば映画館!触れそうで触れない距離!会話は出来ないのに確かにそこにいる相手!暗闇の中でのいつもと違う横顔!良いと思わない?」

 かなりの熱弁だ、文化祭で演劇は一緒に観に行ったけれど、内容に集中していて、彼の横顔を見る事は出来なかった。

 想像してみる。好きな人と隣同士で座って、何かを観る。


「まぁ、良いとは思うけど」

 好きな人が、脇阪くんになるかは置いておいたとしても、少し魅力的な話だとは思った。


「お、ちょっと乗り気?」

「気持ちはちょっと分かるってだけ、調子に乗らない」

 ピシャリ、と話題を閉じる。これ以上喋っても私が弄られて終わりな事は目に見えている。


「ふーん?まぁ映画観る事になったら、お姉さんに言ってよね?ポップコーン買うのよ!お互いに手を伸ばして触れ合うのよ!」

 キャーキャーと一人で盛り上がっている琴音を見て、心底楽しそうな事に頭を悩ませる。どうすればこの子を止める事が出来るのか皆目見当がつかない。


「そこまで言うんだったら、琴音は早く彼氏作ったら良いんじゃない?」

「ゲボぉ!?」

 あ、止まった。異質な叫び声を残して。


「な、夏希?それは我々非モテ人間に対して精神的なダメージを与えるんだよ?」

「そうなの?でもそんなに色々想像出来るなら、それを実行に移しても良さそうだけど」

「甘いね夏希、常識的に考えて、現実の高校生でこんな健全な交際関係が築けるわけがないのよ!」

 その言い方は、世の中の健全なカップルに喧嘩を売っていないだろうか。


「私達カプ厨が何故こんな妄想をしているのか!現実的にほぼありえない甘酸っぱいシナリオにキュンキュンしたいんだよ!べ、別に自分達がそんな恋したいわけじゃないんだからね!」

「本音は?」

「したいです⋯⋯!私もイケメンや美少女相手にドキドキしてみたいです!」

 あまりに素直な返答。琴音なら、そういう相手出来ても可笑しくないと思うんだけどな。


「私の話は良いんだよ!私から見た時に、今の夏希と脇阪くんの仲の良さが絶妙だからニチャつくだけ!」

 いや、それは普通に辞めて欲しいんだけど⋯⋯


「結局の所、直近の仲の良さは夏希からしたらどう思ってんのよ!?今私が言ったような事は一つもないの?脇阪くんといて、本当にドキドキしないの?」

 そう聞かれても、琴音が望んだ答えは出せないとは思うんだけど⋯⋯


「ないよ、少なくとも、琴音がいうような事は」

 文化祭の時も、一緒にいるだけでは、胸が高鳴ったりなんてしなかった。


「一緒にいて、安心はするけど」

 最近、一緒にいて一番当てはまるのはこれだろう。

 脇阪くんといると、同じ場所にいるだけで、何をしているにしても安心する気がする。これは、彼の性格と料理のおかげだろう。⋯⋯それ以外の理由なんて、ないと思っている。


「⋯⋯ねぇ、夏希?」

「なに?」

 分かってくれたのかな?私と彼が、そういう関係じゃないって事。


「それ、色々すっ飛ばして、もはや夫婦⋯⋯」

「琴音?」

「痛ぁ!?ごめんって!冗談!冗談だから頬つねらないで!?」

 先日の事を本当に反省してるのかな?この友人を黙らせるためには、結局物理に頼る以外に他はないんだろうか?


「琴音⋯⋯早く彼氏作ってよ⋯⋯」

 彼氏にうつつを抜かすようになって、あわよくば、私達の事が気にならなくなるような甘い恋をしてくれる事を、切に願うのだった。

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