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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第二章 努力の程度は人それぞれ

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食券制の偉大さ

 晴が教室から出ていってから半刻程経った後、昼が近づくにつれて、教室の空気が徐々に騒がしくなってきた。


「ちょ、注文札多くない!?」

「水炊き三つ追加!」

「ご飯切れそう!」


 さっきまで余裕そうだったクラスメイトたちが、次々と声を上げ始める。

 どうやら、本格的なピークに突入したらしい。


(正直、これは予想以上だな)


 嬉しい悲鳴である事に間違いはないが、ここまでの繁忙を想定していなかったため、どうしても遅れが出てくる。


「あー!着物動き辛い!もう脱いでいい!?」

「そりゃ駄目でしょ!コンセプト崩れちゃうから!」

 主に接客側への負担が大きい。普段着慣れない着物での配膳には気を配らなければならないし、いくら文化祭という場だとしても、客商売という事に代わりはない。精神的にも辛いだろう。


「⋯⋯俺も向こう出てくるわ」

 一旦、接客側の対応を考える事にする。

「ちょっ!脇阪が接客行ったらこっちは誰が纏めるんだよ!」

 そんなに俺を頼るなよ。基本は具とスープを用意するだけだ。誰だって慣れれば出来る。


「ちょっとの間だけだよ、すぐ戻る」

 そう言いながら調理場を離れ、近くの机にあった紙の束を手に取り、廊下で並んでいる客の下に向かう。


「申し訳ありませんが、喫茶の方が混雑してまいりましたので、提供は食券の番号順にさせていただきます」

 顔を引き攣らせながら、自分に出来うる最大限の営業スマイルで、順番待ちの客に話をつける。客層は生徒以外にも、地域住民や教師まで並んでいた。


「お客様が入店する順番で、今から一人一人に紙を一枚渡させていただきますので、そこに頼みたい商品を先に書いておいてください」

 紙には水炊き、ご飯、団子、カステラの四つ。

 所謂食券制というやつだ。最初はこの方式の方が楽だという意見もあったのだが、風情がない、という点で一旦辞めになっていた。

 だが、ここまで忙しい昼の繁忙時に風情も何もないだろう。


「おかわりや、別途注文があった際には店員さんをお呼びください」

 これも無闇に呼ばれないようにするための仕組みだ。⋯⋯言ってて思うが、食券制システムって凄いよな。人の温もりには欠けるけど。


「それでは、今から並んでおられる十名様の食券を先に確認させていただきます」

 そう言いながら、並んでいる先頭の人から、食券を回収していく。一番から食券を渡しているため、提供の順番も分かりやすい。


 やはり最初からこうすれば良かったのではないだろうか。と考えながら調理場に戻る。


「戻った。一番、二番のお客様はセット注文。準備しといた方が良いな」

「え?でもまだ席開いてないだろ?」


 確かにまだ席は開いていないし、先に用意して時間が経てば食事が冷めてしまうが⋯⋯

「食事終わってる奴らが六人いる。そろそろ席立つと思うぞ」


 そう言い終わる前に、四番テーブルの客が席を立つ。

「ほらな?じゃあテーブル掃除してくるから、準備しといてくれ」


「⋯⋯脇阪っていつもどういう風に物事考えてんの?」

 何言ってるんだ?考えてる事なんて一つだ。どうすれば、自分が一番気楽になるか。それだけだ。


「せっかくの文化祭だ。バタバタ忙しくするだけじゃ勿体ないからな」

 まぁ文化祭の間くらいは、自分だけ楽する範囲を、みんなが楽になれるように動いても良いだろうと思った。

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― 新着の感想 ―
一気読みしました!空気感がとても好き! これからもご執筆頑張って下さい、次話以降も楽しみにしてます!
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