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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第二章 努力の程度は人それぞれ

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後輩及び、幼馴染の弟

「先輩!久しぶり!元気だった?」

 そう言いながら、夏希の弟、中学の時の後輩である前田晴が手を振っている。適当な相槌を済ませて、同じ席につく。

 教室は今は少し落ち着いているし、多少は晴の話に付き合っても良いだろう。


「まさか文化祭に来るとは思ってなかったから、驚いたよ」

「上手くいけば、進学するかもしれない高校の文化祭だよ?先輩もいるしそりゃ見に来るって」

 晴は受験生なので、確かにここに入る事も考えられるが⋯⋯


「なんだここ受けるのか?お前ってそんな頭良かったっけ?」

 この高校は偏差値は高い方だ、晴はあまり賢いイメージはないんだが。

「ひでぇ言い方!とりあえず姉ちゃんよりは頭良いよ!」

「それは比較対象が悪いだろ。あいつそこまで頭は良くない⋯⋯」

 ガチャ!っと机の上にお茶が置かれる。


「⋯⋯ごゆっくり、どうぞ」

 ジト目の夏希様がお茶を持ってきてくださったらしい。そんな目で見るなよ、事実しか言ってないぞ俺は。


「おー、怖い人がいるんだねぇ。駄目だよ先輩怒らせちゃ」

 晴もなんとなくこちらの事情を察しているようで、自ら夏希が姉だと吹聴する真似はしないらしい。というより、晴が夏希の弟だと知っているのは、中学の時でもほんの一握りだった。



「ねえ、さっきから先輩って言ってるけど、脇阪ってなんの部活やってたの?」

 夏希の奇行によって話の腰が折れていた所を、近くのクラスメイトが拾ってくれた。


「陸上部ですよ、先輩言ってないの?」

「別に言う必要ないからな」

 補足として、中学からの同級生もこの高校にいるのはいるが、そこまでの接点はないし、同じクラスになった事もなかったので、俺が陸上部だと知っている奴は本当にごく一部だ。


「あー、だから脇阪って足速いのか。料理部なんて入ってるから、文系だと思ってたのにな」

「僕らの代じゃ、一番凄かった選手なんですよ」

「おい、盛るな」

 凄くはなかっただろう。三年はボロボロの結果だったんだぞ。


「盛ってないよ、短距離も長距離も速かったし、幅跳びとか三段跳びも記録良かったじゃん」

 確かに大体の種目はやったが、どれも記録は標準記録は超えなかったんだよ。


「姉ちゃんだってずっとそう言ってたよ?脇阪くんは一番凄いんだって」

 夏希が?横目でチラリと夏希の方を見ると、パクパクと口を開ける夏希。何か言い返したい様子だが、ここで晴に口を出すと、姉だということがバレてしまいそうだ。


「へー、じゃあお姉さんも陸上部だったんだ」

 晴は周囲と夏希の様子を見て、独りでに納得すると、ニヤリと笑った。


「そーなんですよー!聞いてくれます?姉ってば部活に脇阪先輩が来てないと、いっつも僕に脇阪くんは?って聞いてきて⋯⋯」

 夏希が反応出来ない事を良い事に、あること無いこと吹聴しようとしているなコイツ。良い性格してるな。

 そう思っていたら、バン!と大きな音を立てて夏希がメニュー表を叩きつけた。


「ご注文、取ります」

「え、いや良いよ。今良いところだから⋯⋯」

「ご注文は!?」

 圧倒的な圧を感じる。これが、あの夏希だと?凄いなぁ家族って。


「あ⋯⋯じゃあ水炊きセットで」

「脇阪くん、水炊きセット用意してくる」

 注文を取ったかと思いきやすぐさま厨房(?)の方に向かっていく。余計な事を言うな、という圧を振りまきながら。


「こっわ⋯⋯あんなん見たことねぇよ」

 安心しろ晴。俺も見たことないから。


「あー⋯⋯ごめんね後輩くん。夏希には面白くない話だったのかも」

 話の腰を二度も折られたというのに、別のクラスメイトが話を振ってくれる。良い奴らだな。


「脇阪くんにそんな仲良い女の子がいたって聞いて、嫉妬しちゃったんだよ」

 あ、違うわただのカプ厨だわ。なんかニヤニヤしてるもん。


 だがしかし、なるほど、夏希視点からすれば、自分の話をある事無いこと吹聴されて激怒しただけなんだが、晴が夏希の弟だとバレていないと、周囲からは夏希が嫉妬したように見えるのか。


「いえいえ、大丈夫ですよ。⋯⋯夏希さんって先輩の彼氏なんですかー!?」

 夏希にまで聞こえそうな、わざとらしい大声である。このクソガキやべぇな。ガシャン!と、夏希が向かった厨房側の方で大きな音が聞こえた気がするが、気にしないでおこう。


「えー?どうなんだろ?どうなの脇阪くん?」

 周囲までニヤニヤしてやがる。このクラス終わってない?


「んなわけないだろ⋯⋯釣り合わないだろそんなん」

 とりあえず一旦否定しておく。それもあまり意味ないだろうけど。

 何故こんな流れになったのか分からないが、とりあえず、ここ数日はクラスでネタにされそうだ。

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