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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第二章 努力の程度は人それぞれ

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開店と、嬉しい誤算

――どうしてこうなった?


「またお客さん入って来たよ!ニ名様。セット注文」

「分かった、そっちでスープ用意してくれ、こっちで他準備するから」

 慌ただしくも、焦らずに食事を準備する。まだ昼時ではないというのに、何故みんなしてお茶菓子だけでなく水炊きも頼む?


「脇阪くん!もうスープなくなっちゃいそう!」

 そんな事を考えていたら、スープの在庫が残り少なくなってしまう。予想しているよりも随分と早い。


「水炊きおかわり希望だってー!」

 またか、まさかただの鶏鍋がここまで人気があるとは知らなかった。


「分かった、誰か!家庭科室から追加分とってきてくれ」

 話している間にも、別鍋から一人前の具材を取り出し、器に入れる。将来飲食店は絶対しないと心の中で強く決めた。


 どうしてこうなった!?

 手を止める事なく、頭の中で開店前の情景を思い浮かべる。



――何故に、既に列が出来ている?

 夏希に促され、廊下を見れば、そこには長蛇とまでは行かなくても、一度のサイクルでは回らない程度の学生が並んでいた。


「まぁそうなるよなぁ、俺等のクラス結構本気だったし」

 接客担当の男子がボソリ、と呟く。確かに周りを見てみると、他のクラスよりも頑張っているのかもしれない。

 内装は凝っている方だし、世の中の男子はみんな和服美人が好きなのだと思えば、この行列も納得は出来る。


「とりあえず準備をしよう。カステラか団子か分からんから、両方とも用意しとくぞ」

 自分を納得させ、とりあえず並んでいる人数を大体把握し、いつでも茶菓子が提供出来るように準備しておく。流石に朝から水炊きがポンポンと頼まれる事はないだろう。


「初のお客さん、セット注文だって!」

 そう思っていたのに、来た客は何故かみんなセットを頼んでいった。

 後から聞いた話ではあるが、どうやら俺のクラスが随分本格的な物を作っている、と話題になっていたらしい。



 そうして現在に至る。

「脇阪くん、スープだけおかわり出来ないかって」

 夏希も必死に接客をしている。忙しそうではあるが声が弾んでいる。案外楽しそうだ。

「いや別に無理ではないけど⋯⋯じゃあ100円で」


「分かった。じゃあメニューに追加しとくね」

 そう言いながら、夏希が黒板に「スープおかわり100円」という文字を追加する。


「100円ならもう一回頼んでみる?」

「そうだな、じゃあスープおかわり!」

 ⋯⋯値段設定を間違えた気がする。100円ならもう少し飲んでみよう、などと思う物好きが結構いるんだな。


「カステラだけ持ち帰り注文かかった!出来る?」

「悪いけどそれは無理だな、量に限りがあるし、文化祭の提供物は原則持ち帰るのは禁止だ」

 カステラの評判も上々。先生も説明に加わってくれている。


「手作りなんだってこのカステラ」

「料理部監修だってさ、料理部なんて学校にあったんだ」

 料理部としての活動も問題なく周知できたのは僥倖だろう。


「やっべぇ美味いよな、これ」

「鶏肉って興味なかったけど、これは良いな」

 血気盛んな男子達にも好評のようだ。この年なら普通は牛肉が一番好きだろうに。


(⋯⋯もう、認めるしかないか)

 意味もない言い訳を探すのが面倒になってきた。ここにいる学生達は、全員がそうではないと思うけど。


「ご馳走様!凄い美味しかった!」

「文化祭でこんな本格的なの食べれると思ってなかったよ!」


 みんな、俺が作った料理を食べに来ている。それを事実として受け止めた時、随分と気分が良かった。


「脇阪くん!スープとご飯だけ追加したいって!ねこまんましたいんだって!」

「これ以上ややこしくしないでくれ⋯⋯」

 ただし、これ以上忙しくなるというのは、勘弁してほしかった。

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