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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第二章 努力の程度は人それぞれ

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和風喫茶、開店準備

「おお、それっぽくなってるな」

 友人と駄弁りながら教室に向かう。扉には暖簾がかけられており、中に入ると、教室は飾り付けもあってか、案外それらしい雰囲気になっていた。


「脇阪くん、夏希知らない?」

 クラスメイトにそう聞かれて、少々しくじったと思った。夏希は接客担当だ。色々任せていたが、接客側が優先だろう。

「悪い、家庭科室で頼み事してる。俺が戻ったら教室行ってもらうよ」

「良いよ大丈夫、私行ってくるから。教室見といてよ」

 そう言いながら家庭科室に向かう女子を見送り、言われた通り教室を見渡してみる。


 椅子には座布団が敷かれ、机を寄せて作られた客席には、和風テイストのテーブルクロスがかけられている。それだけでも案外普段の教室とは違って見える。


 黒板には白いチョークで墨文字を意識したようなメニューが大きく書かれていた。こういうものは自分では書けないので、書ける奴を尊敬する。


 内容は、水炊き、ご飯、団子、手作りカステラのたった四つ。セットで頼めば安くなるという謳い文句を添えてある。

 お茶については客席に置かれている保温ポットから自由に取れるセルフスタイルだ。小皿には小袋で塩を置いてある。水炊きスープの味調整用だ。


(こう見るとやっぱメニューは少ないけど、まぁなんとかなるだろ)

 メニューの量そのものは少ないが、文化祭という行事であまりメニュー量が多いのは難しいし、この程度の方が潔さを感じて良いんじゃないだろうか。


「じゃあ準備始めるわ」

 そう言いながら鍋をIHヒーターの上に置いて、保温を開始する。温めた鍋から、はっきりとした鶏の出汁の匂いが立ち上り、教室の空気が一段変わった。


「具材はどんだけ入れるんだっけ?」

 調理担当の男子から確認が入る。


「全部二つずつ入れる感じで良いよ。あんまり多くても良くないだろ」

 野菜と鶏肉を含めてそこまでボリュームがあると、せっかくの文化祭だというのにここだけで腹が膨れてしまう。それは良くないだろう。


「おかわりはありなん?」

 おかわりって⋯⋯されたら嬉しいけども。

「基本ないとは思うけど、リクエストが多い時には考えてみるか」

「あると思うけどなぁ、珍しいし、美味いし」

 それは贔屓目というやつだろう。自分達が作ったものはなんでも美味く感じる物だ。



「着てきたよー!どうよ!可愛いっしょ!」

 そうやって準備をしているとドアが開き、着物を来た接客担当の男女が教室に入ってきた。普段見ない光景は中々に華がある。


「ねぇねぇ脇阪くん、夏希、どう思う?」

 くるり、立ち回りながらクラスメイトがそう聞いてくる。夏希はと言うと、案外慣れたようで昨日程の初々しさは感じない。

 なんだかデジャヴだな。昨日も同じ事を聞かれた気がするんだが⋯⋯。だが昨日の自分より、今の俺は成長しているのだ。


「ああ、似合ってるよ、こりゃあ成功間違いなしだな」

 似合ってる、という言葉が素直に出てきた。本心だし嘘は言ってない。


「客引き頼むぞ看板娘」

 「綺麗だ」なんて、本当に思った言葉は、今度こそ言わないでおこう。

 

「看板娘については否定したいけど⋯⋯まあ、頑張る」

 そう言いながら、夏希はパタパタと廊下に向かう。その足取りは着物のせいで動き辛そうに見えたが、そのぎこちなさもまた良い物だろう。


「え、何さっきの雰囲気⋯⋯昨日と違くない?」

「気の所為だよ、ちゃんと褒めないと周りから叩かれるからな」

 あまり夏希との事を話していると、どこかでボロが出そうになる。調理担当は素直に調理を行おう。


「よし、とりあえず料理の提供の仕方からおさらいしとこう。まずは⋯⋯」

「脇阪くん」

 スープと具材を別々に提供する事を説明しようとした所で、廊下にいた筈の夏希が話しかけてきた。


「どうかしたのか?何か問題あったのか?」

 そう聞くと、夏希は嬉しそうに廊下を指差す。


「ごめん、看板娘はいらないかも」

 廊下を出てみると、まだ開始時間ではないというのに、何故か既に二十人程の列が出来ていた。


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