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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第二章 努力の程度は人それぞれ

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文化祭、二日分の約束

「よし、これで仕込みは終わったな」

 文化祭当日の午前7時、準備がある程度終わる。

 鶏ガラを濾したスープに、スープの中で火を通したモモ肉と鶏団子。キャベツとネギについては、あらかじめある程度火を通した状態で、注文が入ってから再びスープで温める感じだ。


「上手くいって良かったね」

 そう言いながら夏希が微笑む。他人事みたいな言い方だな。夏希だって、十分頑張ったのに。


「まぁな、正直助かったよ」

 彼女がいなければ、仮眠も取らずに調理を済ませる事になっただろう。


「⋯⋯私、役に立てた?」

 少し俯いて、変わった事を聞いてくる。余計なお世話だったかも、とでも思っているんだろうか。



「当たり前だろ?前田さんがいなかったら、こんな上手くいってないな」

「そっか⋯⋯嬉しいな」

 夏希は俺の言葉を噛み締めているようだった。当たり前の事を言っただけなのに、随分と嬉しそうだ。


「じゃあ明日も、手伝うから」

 ⋯⋯明日も?確かに文化祭は二日制なので、明日も同じ様に調理しなければならないが⋯⋯


「いや、それは流石に駄目だろ。他の奴に手伝ってもらうよ」

 二日連続で、夏希に無理をさせるのは心苦しい物がある。


「私が、手伝いたいんだけど」

 だというのに、夏希からの返事には強い意志を感じた。俺なんかのために、そこまで時間を割いてくれるのか。


「そう、か。⋯⋯じゃあ、頼むわ」

 その事実が、断らなければならない、という気持ちを打ち消す。


「うん、任せて」

 明日も朝から夏希と調理場に立つ。その事実に、俺の心が不思議と浮き足立つのを感じた。



「おはようワッキー!お?前田さんもおはよう!早いね」

 少し浮ついたような空気を感じていたら、家庭科室のドアを開けて上原が入ってくる。


「おはよう、前田さんも早くに起きたんだとよ、文化祭楽しみで寝られなかったらしいぞ?」

 夏希が余計な事を口走る前に先回りして誤魔化す。二人で一緒に料理してた、なんて言ったらどうなるか分かったもんじゃない。


「そ、そんな子供みたいな理由じゃないから!」

 そう怒るなよ。仕方ないんだよこの状況を誤魔化すには。


「やっぱ仲良いじゃんお前ら⋯⋯お、料理出来てんの?良い感じじゃん!」

 俺達の様子をあまり気にする事なく、上原は水炊きの方に目を向ける。この調子だと、無駄に気を遣う事も必要なかったかもしれないな。


「だろ?結構上手くいったと思う。教室に運ぶの手伝ってくれ」

「はいよ、どれから運ぶ?」

「どれからでも良いだろ。前田さんはスープを別の鍋に移し替えといてくれるか?」

 残念ながら、寸胴で取ったスープを教室で温める機材はないため、一旦別鍋に移し替える必要がある。


「分かった。任せて」

 夏希にその仕事を任せて、男手二人で他の具材から教室に運んでいく。



「そういやワッキー、これまさか一人でやったわけじゃないよな?」

 鍋を運んでいる最中に、上原がごもっともな質問を投げかけてくる。


「あー⋯⋯いや、一人じゃない」

 少し、言葉か濁ってしまった。まぁ深く聞かれたら、先生と一緒にやったと言っておこう。一応嘘ではないしな。


「なんだよちょっと濁してんじゃんか。明日もあるんだったら俺も手伝うぞ?」

 ありがたい申し出だった。確かに今日は大変だったし、三人で出来ればもっと効率が上がるだろう。


「⋯⋯いや、いいわ、ありがとな」

 だというのに、断ってしまった。


「他に手伝ってくれる奴がいるから」

 思い浮かぶのは、先程までの光景。随分と俺は、あの時間の事が気に入っているらしい。


「⋯⋯ふーーーん?なるほどなぁ?」

 なんだその分かった。みたいな顔は。


「おかしいと思ったんだよな、二人で一緒にいるの」

「お前が思ってるような事は何もない」

 言った所で無駄だろうが、釘だけは刺しておく。


「おやぁ?いつものワッキーなら、前田さんと準備なんてしてない。って言う所だと思うんだけどなぁ?」

 うぜぇなコイツ。絶好するか?


「早めに来たから、ちょっと手伝ってもらっただけだよ、それ以上でも以下でもない」

 嘘ではない。元々頼んでいなかった訳だから、俺からしてみれば、あの場に夏希がいて、手伝ってくれた事がおかしいんだ。


「あっそ、そう言うのは勝手だけど、あんまり謙虚にしてても、すぐ取られちまうかもよ?前田さんって人気だからな」

 ⋯⋯それはそうだろう。顔も良くて、気立ても良い。ここまで俺に尽くしてくれるような優しい奴は、誰からも好かれるだろう。


「⋯⋯うるせぇ」

 その事実は分かっていることなのに、否定も肯定もしたくなくて、ただ一言吐き捨てるたけになってしまった。


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