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母がいない間だけ、幼馴染が俺の料理を食べに来る  作者: bonta
第二章 努力の程度は人それぞれ

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人から見る自分の姿

グツグツと、寸胴の中で鶏ガラが煮込まれる音が響く。

「思い出した?中学の時の事」

湯気の向こうから、夏希がこちらを見て、そう聞いてくる。


「思い出したというか、覚えてるというか⋯⋯」

 鶏もも肉の処理をしながら、俺は曖昧に言葉を返す。


「まあ確かに、中学の時に、俺には努力が足りないって思ったのは確かだな」

 だから負けても悔しくないし、全力の奴には勝てないと思ってる。この考えは変わる事はないだろう。


「⋯⋯脇阪くん、そろそろちゃんと言っておきたいんだけど」

 少し呆れたような声で、夏希が声を出す。


「中学の時、部内で一番頑張ってたのって、脇阪くんだよ?」

 はっきりと、夏希はそう言った。間違った事は言っていないと感じる。まっすぐな声だった。


「いやいやいや」

 手を止め、思わず反論してしまう。


「結構サボってただろ。俺他の奴のタイム測定とかしてたぞ」

 陸上部ってマネージャーいなかったから、タイムとか自分達で適当に測ってたんだよな。


「その後、同じだけちゃんと走ってた」

 それは⋯⋯まぁ、一応練習で決められた本数だからな。


「鬼ごっこと称して後輩と遊んでたぞ」

 後輩を鬼にして、グラウンドを走るという遊びだった。悔しがる後輩の顔が面白いんだこれが。


「長距離専の子達と三キロ鬼ごっこしてるの、おかしいよ?」

 ⋯⋯まぁ、一応自分の練習も兼ねてたんだよ。長い距離走るのも、暑い夏の時以外は嫌いじゃなかったし。


「私の弟も、あれでやる気出してたよ。先輩に勝つんだって。タイムも測ってたよね」

「⋯⋯タイムはついでに測ってただけだよ」

 せっかく走るのに、結果が分からないのはつまらないと思っただけだ。


「タイムが縮んだらあんなに褒めてたのに?」

 ⋯⋯まぁ、必死に食らいついてくる後輩のタイムが縮んでいくのを見るのは結構嬉しかった。鬼ごっこで負けた日には、コンビニで肉まんを奢ってやった記憶がある。



「練習以外でも、普通後輩がやるような片付けも全部率先してやってくれてた」

「⋯⋯それは頼むのが面倒だっただけだよ」

 頼まれて、嫌がられる姿を見るのが面倒だった。それだけの話だ。


「そうだよね、脇阪くんは、人が嫌だと思う事を頼めないんだよね」

 言い方変えるだけで随分と感じが良くなるな。


「でも、そんな先輩だから、後輩みんなに好かれてた。面倒見が良くて、周りを見てくれる先輩だって」

 思い返すと、確かにみんな寄って来てたかもしれない。案外人気者だったのか。自分では気付かないもんだな。


「だからこそ私の弟も⋯⋯私だって、脇阪くんの記録が出なかった時、悔しかった」

 確かに後輩は⋯⋯夏希の弟は、俺のために泣いてくれた。それは何故なのか、深く考えた事はなかった。


「私達がもっとちゃんと、脇阪くんの事サポートしてあげてたら、きっと結果は変わってた」

 俺は、今も昔もやりたい事をやっていただけだ。なのに、それが誰かに影響を与えるなんて思わなかった。


「それは⋯⋯違う。俺の実力が、努力が足りなかっただけなんだよ」

 

「違わないよ」

 即答だった。彼女は本当に、そう思っているのだ。


「脇阪くんは⋯⋯ゆうくんは、今も昔も、ずっと人以上に頑張ってるよ」

 認めるしか、ないのかもしれない。だって俺の事を認めてくれる彼女は、本気で努力してきた人だと、俺は思っているから。


「⋯⋯そんなの、分かるわけないだろ」

 だというのに、捻くれた心が出した言葉は、否定の言葉。


「分かるよ」

 その言葉を、夏希は直ぐに打ち消す。


「ずっと、見てたんだから」

 その一言が、胸に、静かに落ちてきた。


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