提案と失敗
評価いただけたみたいで嬉しい。高評価ありがとうございました!
「はい、じゃあコンセプトカフェになりました!良いかなみんな!」
多数決の結果として、文化祭の内容はコンセプトカフェに無事決まった。黒板には投票数が書かれており、その内容は僅差だ。委員長が確認をとるが。
「コンカフェだって!何着るんだろうね!」
「どうせなら売り上げ一位目指そう!」
やる気のある奴。
「料理すんの?面倒くせー……」
「接客とかすんのかねぇ」
やる気のない奴。
「三次元のメイド……なるほどなるほど悪くない」
なんかキモい奴など、クラスとしては割れてしまっている。
おそらく僅差で決まってしまった事も影響しているんだろう。いまいち纏まりにかける結果となっている。
「まずは何出すか決めなきゃダメじゃない?メイドカフェならオムライスとか?」
明日の献立でも考えるような軽さで、クラスの女子が挙手する。まぁ文化祭なんて、所詮はそんなものだ。
(さて、どうやって参加するか)
残念ながら、俺はクラスの中心的立ち位置に存在するような人間ではない。二、三人程度となら会話出来るが、多人数がいる場合はそこまで話せない陰キャだ。このような場で大きく目立って発言する事はないのでどう切り出すか迷う。
「じゃあ料理部の意見聞こうぜ。なぁ、脇阪」
声を上げたのは、クラスでもあまり馬の合わない男子だった。その口調に、善意よりも冷やかしが混じっているのは分かる。
――男子のくせに料理部。
そんな古くさい考えを持っている人間は、今でも珍しくない。それに、文化祭案で自分の意見が通らなくて内心イライラしているんだろう。
(あ、ありがてぇ!助かる!)
だが、その嫌がらせとも言える発言のおかげで、自然と会話に参加出来る。
「分かった。まずコンセプトはとりあえずメイドカフェで良いのか?」
案外乗り気の俺を見て、先程の男子が驚いている。そう驚くなよ、こっちはお前に礼をする立場だぞ。
「そうだな……じゃあローストビーフなんてどうだ?」
教室が一瞬、静まった。
「ええー? そんな難しいの無理でしょ」
ローストビーフ。日本では祝い事や、店で食べるイメージは強いんだが。
「案外簡単なんだよ。過大評価が大きい料理の一つだな」
本当に手を込んで作らなければ、炊飯器と肉があれば誰でも作れる。
「当日には肉を切って、米の上に乗せるだけ、誰でも出来る」
これならば、料理をした事がない人間にも出来るだろう。調理工程も、提供の仕方も、頭の中ではもう組み立て終わっている。
「それに、想像してみろ。パフォーマンスとして、メイドさんが客の目の前で肉をカットしてくれるのって……良くないか?」
さらに、やる気のない男子のモチベーションを上げる。
「……良いと思う」
「なんかエロくね?」
エロくはないだろ。何言ってんだコイツ。
「なんかいけそうな気がしてきたね」
「文化祭でお肉って珍しくていいんじゃない?」
女子の反応も上々、即興で考えたにしては我ながら上手くいったな。
「じゃあ決まりってことで、いいですよね。先生」
少しだけ、手応えを感じた――その瞬間。
「うん、駄目」
即答だった。
教室に、微妙な沈黙が落ちる。一瞬で、企画は潰れた。
「脇阪くん、複数人と話すの苦手って言ってたけど、前に体育でみんなを煽って無かった?」
「あれは面白そうだから出来た!」
「……結構、酷い話だと思うよ?」




