第39話 8月26日 - 大野正志「■■■の夏休み」
■文字が■■■になる
きょうも永遠の8月■■日です。
朝起きて、日記を書こうとしたら、へんなことが起きました。
書いた文字が、■■■に変わっていきました。
「きょうは」って書いたのに、「■■■は」になりました。
消しゴムで消して、もう一度書いても、また■■■になります。
ひらがなも、カタカナも、漢字も、ぜんぶ■■■に変わっていきます。
お母さんに見せたら、お母さんは読めるみたいでした。
「きょうは、って書いてあるじゃない」
でも、ぼくには■■■にしか見えません。
学校に行く道で、看板を見ました。
「■■商店」 「■■■科医院」 「立入■■」
文字が、どんどん■■■に侵食されていきます。
でも、なぜか意味はわかります。
■■■でも、何が書いてあるか、なんとなくわかるんです。
■言葉も■■■れる
学校に着いたら、みんなも同じでした。
「■■■も、文字が■■■になる」
山田くんが言いました。
いや、言ったような気がします。
声も、ところどころ聞こえなくなってました。
■■■みたいに、音が欠けてました。
先生が黒板に書きました。
「■■が■■■している」
何が崩壊してるって?
言葉? 文字? それとも■■■?
授業中、教科書を読もうとしました。
でも、ページが■■■だらけでした。
黒い■が、インクのシミみたいに広がってました。
触ったら、手が■■■くなりました。
黒いインクじゃなくて、■■でした。
何もない■■。
存在しない■■■。
給食の時間、メニューを見ました。
「本日の■■■」 「■■■■■」 「■■■」
全部■■■でした。
でも、食べ物はちゃんとありました。
カレーライスでした。
味も、ちゃんとカレーでした。
でも、「カレー」って言葉が■■■になってました。
■■■■たちの■■■
午後、大変な■■■が起きました。
■■■が、■■■■■して、■■■になりました。
みんな、■■■してました。
でも、■■■はありませんでした。
だって、もう■■■に■■■してるから。
■■■の■■■も、■■■でした。
チリン、■■■、チ■■■。
音まで、■■■になってきました。
そして、■■■■■が現れました。
■■■な■■■で、■■■を■■■してました。
「タス■■」
「■■ケテ」
「■スケ■」
助けて、って言ってるのかな。
でも、だれを? 何から?
■■■から?
夕方、家に■■■ました。
お母さんが、■■■してました。
「■■■、大丈夫?」
大丈夫じゃ■■■。
でも、それも■■■できません。
今、■■■を書いてます。
でも、これも■■■■■■です。
明日は、もっと■■■になるでしょう。
全部が■■■になったら、■■■はどうなるんでしょう。
■■■も■■■になるのかな。
それとも、■■■だけが残るのかな。
もう、■■■の名前も■■■れそうです。
ぼくは、■■■■■。
いや、■■■■■■■。
■■■。
■。
担任教師の赤ペンコメント:
■■くん、■■■を■■■くれて、■■■とう。先生にも、もう、むずかしいことは■■■■。でも、■■くんの■■■は、ちゃんと先生にとどいているよ。■■■、それで■■■。たいせつなのは、■■■にあるのだから。




