いち与党支持者ななろう趣味作家が、先の参議院選挙をふりかえって、思ったことをつらつらと書き連ねてみる。
自民党支持者、今の石破政権が好きな人のたわごとです。
例えば、この「小説家になろう」というサイトでより多くの人に読まれたいと思ったら、何をすべきでしょうか? まあ、いろいろな意見はあると思いますが、私なら「長文タイトル」「テンプレ」「人気ジャンル」と、まずは内容以前のことを挙げます。で、その次は一行目から読まれることを意識した文章とか話の構成とか、そういったものでしょうか。とにかく読みやすく、そして最初から面白く。むしろ最初こそ、読者を引き込むための努力を惜しまない、そういうのが大切なのだと思います。
まあ、私はそういうことをぶっちぎって自分の好きな話を書いている人ですけどね。でも、だからこそ、読まれないことにも納得しています。先に書いたことが自分にできるかどうかもわかりませんし。読まれる話を意識して書ける人はすごいなぁと、(正直に言うと半ば意識して、ですが)そう思うことにしています。
……選挙の話のエッセイなのに、こんなことから書き出してしまいましたが。正直ね、今回の参議院選挙、自公が負けて立民維新も勝ったとは言いにくい状態で国民参政が大勝ちした理由は、だいたいがこの「小説家になろうで読まれるための方法論」で説明できるような気がすると、自分は思ったりするわけですよ。
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ワンイシューという言葉があります。bingで検索すると「単一論点政治」のwikipediaへと案内してくれるこの言葉、まあ要するに何か議論をしたり主張したりする際に、その争点を一つにしぼることができれば比較しやすくなるよねと、そういう話です。
各政党のマニフェストなんかを見るとわかるのですが、政治で論じることって、経済に外交、教育に環境に他に何があったかな……、とこんな感じで、本当に多岐に及びます。で、各政党は常日頃からこれら一つ一つに対して他の政党よりも自分たちの方がいいと有権者に訴え続けて、選挙で白黒をつけて、選挙が終われば各論を整理してまた主張をしてと、そんな無限ループに身を投じているわけです。
この「多岐に及ぶ各論」を一つにしてしまえば主張が伝わりやすいし比較もしやすいよねと、ワンイシューというのはそんな意味あいの言葉ですね。「郵政民営化の是非」とか「政治と金」とか、本来であれば「数ある論点の一つでしかないはずの何か」を最重要課題として挙げてそれだけで是非を決めてしまおうと、乱暴な言い方をすればそういう話になります。
まあ、政治の話題を好んで聞く人にとってはおなじみの、あるていど実感がもてる話ではないかと思います。
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と、ワンイシューという言葉について、ここまで書き連ねてみましたが。つい先日、2025年夏の参議院選挙は、このワンイシューがうまく機能しなかった選挙のように感じています。
……いや、ワンイシューな「争点」がなかったわけでは無いんですよ。減税の方法論――給付金がいいか消費税減税がいいか――というのがそれで、選挙が始まる前に各党がそれぞれの減税論を準備して、有権者に呼びかけもしていました。
ただ、それで「どの政党の減税案がいいか」というような盛り上がり方をしたようには、あまり思えないのですよ。それどころか、その争点となるはずの「消費税減税」をやるのかやらないのかよくわからない国民民主党と、そこに重きを置いていない参政党が、今回は選挙に勝ってしまっています。
国民民主党と参政党は、わかりやすい争点無しで「この政党はいいな」と有権者に思わせることができた政党で、だから選挙に勝ったのではないかと、自分はそう思っています。
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で、最初に挙げた「なろうでよく読まれるための方法論」になるわけです。
なろうで読まれたいと思ったら何をしますか?
長文タイトルをつけますか?
テンプレ作品を書きますか?
人気ジャンルを選びますか?
一行目から面白さや読みやすさを意識して、退屈な設定の羅列は避けますか?
面白い話を書けば、そんなのなくても素晴らしさは伝わるという姿勢を貫きますか?
それで読まれなかったとき、そういった作品が読まれる風潮を嘆きますか?
いい話を書けばより多く読まれて評価されるなんてのは、傲慢だと思います。より多くの人に読まれてより多くの人に評価されたいのなら、そのための努力をすべきです。そのためには、作品そのものをより多くの人に読まれて評価される形にするのも一つの方法で、強力な手段だと思います。
……この、「まずは何としても読まれるよう、あらゆる努力をする」という姿勢こそが、今回勝てなかった政党に欠けていたものだと思います。
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2025年夏の参議院選挙で勝った政党、国民民主と参政党は、これをやったのだと思います。興味を引く話題を軸に有権者を引き込み、聞く人を飽きさせないようにして楽しませながら主張をする。楽しませるといっても受けを狙うとかそういうことではなくて、できるだけシンプルにわかりやすく、それでいて納得できる、そんな話しかたを心がけるということです。わかりやすくてためになる、そんな話は、聞く側も十分楽しいですからね。
そして、そんなわかりやすく楽しい話は、拡散もしやすくなります。この話は評価が高い、じゃあちょっと聞いてみようか。そんな軽い気持ちで話を聞きにきた人たちを引き込んで「この政党は良いな」と思わせることができたのなら、他の政党や政策の比較をしないままに支持者を増やすことができます。それは、選挙を戦う上で強い武器になると思います。
そんな「わかりやすい話」をするために、わかりやすく話せる政策を策定して掲げる、そういう戦略で選挙を戦って、そして勝ったのではないのかなと。
……とういかなんというか、この両党は他党を批判するときも「わかりやすい」ですよね。時流に乗って、政策の是非をイメージで語る。それって公党としてどうなのと思うのですが、社会から認められている以上、それも一つの方法だと直視すべきだと思います。
最近のびてきた「新・社会に不満を持つ層」みたいなのがあります。地球平面説を信じたりワクチンを怖がったり15分都市というコンセプトにディストピアを見たり昆虫食に俺は食いたくねぇみたいな反応をしたり外国人が許せなかったり7Gで世界に終末が訪れたり(違)という層。
こういう層は景気に関係ないというか、むしろ社会に余裕があるからこそ生まれる層で、だからこそ「景気が上がれば不満も薄れる」みたいな期待もしない方がいいのかなと思います。そういうテーマで面白い話を聞かせてくれる人がいる限り生まれ続ける、そういうものかなと。
そういうところにも貪欲に手を伸ばして支持を伸ばしたりと、とにかく票を取るためにはあらゆる手を尽くす、そんなイメージがあります。
今まであまり選挙に行かず政治論にも触れずにきた層には特に有効で、政治には触れずにSNSをしてきた層はもちろん、政治には触れずにSNSをこれから始める層にも有効で、つまり今後投票率が上がるほど、この両党のような戦略を取った政党が勝つ可能性が上がるのかなと、そんな風に思っています。
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結局ね、「政策を競う」という従来の手法が、もう古い手法になってしまったのだと思うのですよ。昔は政治家の主張を聞きたければテレビで流れる政治の番組を見るしかなくて、そこでは各党の政治家が呼ばれて意見を戦わせることが多く、だからこそワンイシューのような手法が強かった。
でも、今はSNSの時代です。流れてくるのは個人の意見で、誰も各党の政治家を集めて意見を戦わせる場所をお膳立てしてくれない。議論を聞いて楽しいのはその場で戦うのを見るのが楽しいのであって、相手もいない場所で「消費税減税より給付の方がいい」とか言われても、何も楽しくありません。
だから「〇〇という政策で将来の日本は明るくなる」みたいな楽しく聞けるような話をしなくてはいけないし、それを広げなくてはいけないのかなと。なのに、今回の与党の主張は「給付」だった訳です。
別に給付という政策が日本を明るくしないとか私は思わないのだけど、あの政策にそういう夢や希望を感じる人は多分少なくて、その看板で呼び寄せられた人もきっとそんな話は期待していない。だから、違う話をしたらそこで聞くのをやめてしまいかねない。
人を期待させる看板に、それを裏切らない序盤。そうして人を引き込んで、ようやく伝えたいことを伝えられる。その双方が与党の主張には欠いていた。言いたいことが伝わらないのも当たり前だと思います。
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私は、今の石破政権がかなり好きです。何が好きかって、あの政権の国会放送はとにかく面白いんですよ。なんなんでしょうね、あのちゃんと受け答えしてると思えば実ははぐらかしたりしてるあの話術。昔のネチっこさというかゲルっこさも薄まってて、とてもいい感じに思えます。はぐらかしたりしてる話術なんて書きましたが、歴代の首相の中ではかなり正直な受け答えをする人だとも感じていて、そういう意味でも好感を持てる人だと思っています。
でもね、自分たちの掲げる政策の主張は、かなり弱いと思います。石破政権の目指すものは何なのか。どんな日本にしたいのか。どうやってそんな日本にするつもりなのか。そういったものがいまいちはっきりしないと。……そしてそれは、石破政権だけでない。その前の岸田政権や菅政権にも言えることだと思います。
安倍政権の後、社会のデジタル化が一気に進んだり初任給の伸び率が4~5%も伸びたりと停滞した社会が一気に動き出した感があって、その変化は政府が主導した結果でもあるはずなのに、そういったことに対する評価がかなり低くなってしまっているのかなと。
結局、今の与党は「俺たちはこれだけの仕事をしているんだ」という宣伝が全くといってもいいほどうまくいっておらず、その結果として今の苦境に陥っていると、そう思えます。そこはね、正直、与党にはもっとしっかりしろと言いたくなるのです。
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安倍政権の頃、自民党は今より安定して票を集めていました。あの頃は(少なくとも政権発足当初は)、今ほどSNSが一般的ではなかったと思います。でも、じゃあ安倍政権も今のSNS全盛の世の中なら負けてしまうのかと言われれば、そうは思えません。と言うか、むしろ、あの頃の方がよほどうまくSNSに対応できる気がします。
――アベノミクスというわかりやすい核。金融緩和、財政出動、産業政策という三本の矢。レーガノミクスを元に命名されたこのアベノミクスは日本を良くするための政策で、実行すれば確実に日本はよくなる。これは他党と比較することなく主張できる政策で、むしろ今のSNS社会で威力を発揮する形の主張だと思います。
まあ、実際には財政出動はされず、成功したのは日銀による金融緩和政策とNISAによる投資誘導による株高誘導で、それが悪い政策だとは思わないけど、これはどちらかというと「元手のある人、リスク資産に投資する余裕のある人が得をする経済政策」で、本来のアベノミクスとは理念が違うように思えるのですけどね。
でもまあ、実態はどうあれ、宣伝としては、かなりうまくいっていたと思います。……正直、個人的にはちょっと微妙だなぁとも思うのですけどね。ちょっと正直さには欠けるかなと。
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まあ、選挙で勝つために「勝てる政策」を掲げるのは本末転倒だと思います。まずはよりよい政治のための政策を考えてそれを掲げるべきで、現政権はそれをしていると私は思っています。……が、だからといって宣伝をおろそかにしていいわけではないとも思うんですよ。
読まれるために小説を書くわけじゃないけど、書いた小説が全く読まれなかったとき、その小説を書く意味はあったのかといわれると、正直考えたこともあります。書いたことを無意味にしないために宣伝をするのが間違っているとも思えません。
思うに、民主主義というのは、有権者が政治に興味を持って学ぶ姿勢が必要なように、施政者の側にも有権者に自身を知ってもらうための努力が必要なのだと思います。その努力を、今の政権与党が果たしているとは、正直思えません。そこはこう、もう少し、何とかしてほしいなと思います。
私は今の石破政権が好きな人ですからね、続いてほしいなと本気で思っています。
……というか、自民党総裁が今変わったところで、次の選挙は3年後くらいですよね。自民党総裁の任期は3年だから、次の選挙の直前くらいで任期が切れることになる。どうせ次の選挙は総裁を変えて臨むことになるのに、今変えてどうするのだろうと本気で思うのですよ。回復した支持率で総選挙とかに打って出るつもりならまだわからないでもないですが。するかなぁ、というか、選挙できるほど支持率回復するかなぁと。
と、自民党がもう少し今のネット社会に対応できるようになるといいなと思いつつ、思うことをはきだしてみた結果、こんな文章がでてきましたとさ、まる。