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魔断の剣1 碧翠眼の退魔師  作者: 46(shiro)
第7章 邪妖の宴

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第4回

「なっ?」


 至近距離で直視したまぶしさに、漣は両手で目を庇った。

 その隙を逃すわけにはいかないと、セオドアはまるで他人からの借り物のように要領を得ない重い足に鞭打って部屋の中心へ駆け寄ると、布袋の口からこぼれていた竜心珠をすくい取るやいなや漣の頭上目がけて放り上げた。


「あーっ! 俺の!!」


 こんな状況になってもまだ欲の皮を突っ張らせるエセルなど完全無視して口呪をつぶやく。


 落下を始めようとした瞬間、竜心珠は彼女の言葉に反応して宙にとどまり、その場でキュルキュルと音をたてて回転を始める。回転はどんどん速まって、またたく間に高速となったその表面から放たれた光は真下の漣の姿がちょうど収まるくらいの円を描いて小さな白光の雷のようなものを放ち始める。


「!!」


 目を(みは)った漣が、自分を囲った力が何であるかを悟った瞬間、初めて顔色を変える。だがそのころにはもう、白光の雷はチラチラと床にまでその舌を伸ばしていた。


「くっ、この程度の縛陣など――」


 内側から強引に突き破ろうとして伸ばした指が、浄光の壁に触れて赤く腫れ、次いでぷつぷつと水泡を浮かせたと思うや皮膚がめくれ上がる。


「つっ」


 激痛に椹えられず引き戻した指は、並外れた治癒力で一瞬後には元の美しい白魚の指に戻ったが、無理に出ようとすればまた同じ目にあうことは分かりきっていた。


「今だ! 行くぞ!」


 漣が光の拘束への対処にとまどっているのを確認したセオドアは、痛めた左足を引きずりながらエセルのそばへ寄ると腕をつかんで走れと促す。


「封魔してるんじゃないのか?」


 との呑気な言葉に、セオドアは舌打ちしてつかんだ手に力をこめた。


「ばかを言うな。たしかに封魔法も習ってはいるが、竜心珠ほどの力を個人で操れる技量など持ち合わせていない。

 あれは竜心珠の内にある力に出口を与えて、ただ放出させているだけだ」


 つまりは暴走。


 循環させていないし抑えてもいないから、力を放出しきれば消える、ただの時間稼ぎだ、との言葉にあんぐりとエセルが口を開ける。


「り、竜心珠の無駄使いーっっ!」

「自分の命のほうを考えろと言っただろう!」


 命以上に価値あるものが、この世に存在するかっ!


 反論こそしなかったものの、それでも未練たらたらに見ているエセルの手を強引に引っ張ってセオドアが向かったのは、廊下へ通じる出口でなく、奥の小部屋のほうだった。


 逃げたいのはやまやまだが、漣は出口を背にしていたので、竜心珠を発動させた今は廊下へ続く扉の前が完全にふさがれてしまっているのだ。


 小部屋は入る前から見て分かるように三方が壁の密室で、隣室へ続く扉というものはない。

 こうなったら宝物庫にありがちな抜け道を探して逃げるしかないだろう。

 都合よくそんなものがあるかは、神のみぞ知るだ。

 だがほかに手段はないと、覚悟を決めて入り口をくぐったときだ。


 まさにこのとき。

 セオドアは己の運命と出会ったのである。

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