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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第4章 一閃、全ての因縁を断ち切って明日へ

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誓い

 目が覚めた時には、全てが片付いていた。


 蛇島には死なれてしまったが、鬼垣の拿捕には成功し、今は留置所に収容されているらしい。

 凝魔結晶を破壊したことでアウトブレイクが終息し、モンスターの無尽蔵な大量出現が収まったすぐ後、陸奥森さんと二階堂さんが場を制圧したとのことだ。


 戦闘が終わる頃には、流石の二人も魔力切れ寸前だったみたいだが、阿南さん曰くまだまだ戦える余力はあったみたいだ。


 東仙さんもそうだったけど、やっぱSランク冒険者は化け物だわ。

 全然追いつける気がしねえ。

 けど……いつかは、そっち側になれるように頑張らねえと、だよな。


 かつて——親父が組合筆頭まで登り詰めたように。


 それとダンジョン外で繰り広げられていた戦いも終結していた。

 アウトブレイクが終息したことで防衛戦から殲滅戦に切り替わり、日付が変わる頃には全てのモンスターの駆逐に成功したという。


 戦闘の余波で湾岸周辺の建造物とかの物的損害は発生してしまったが、一般人への被害は奇跡的にゼロだったようだ。

 この程度の損害で済んだのは、冒険者らの奮闘や組合の尽力があったのは前提にあるが、アウトブレイクの発生地点が東京湾ダンジョンだったことも大きい。

 もしこれが都心部だったら、被害はもっと大きくなっていただろう。


 ——とまあ、これが今回の事件の顛末だ。

 俺と天頼は仲良くぶっ倒れた後、組合本部内にある医療施設に搬送された。


 どっちも重度の疲労と魔力欠乏が祟って、意識を取り戻すまでに一日半、魔力が全快するまでに二日(天頼は丸々四日)かかってしまったが、順調に回復してすぐに退院の運びとなった。


 入院中は色んな人が見舞いに来てその対応で大変だったが、本当に大変だったのは退院した後だ。

 というのも、厳堂旧研究所に潜入して以来、なんやかんやで二週間近くも学校を休んでたもんだから、久しぶりに登校した際にめっちゃ注目を浴びたせいだ。


 そりゃいきなり学校を休みまくれば、普段教室の隅にいるだけのぼっち野郎であっても心配されてもおかしくないけどさ。

 だからって、まさか引っ切り無しに話しかけられるとは思わねえよ……。


 ——つっても、それは初日だけで、翌日からはまたいつものぼっち生活に戻ったんだけど。


 でも、元に戻ってくれて本当に助かった。

 あんなのが毎日とかマジでメンタルが持たねえって。


 一応、休んでいた理由は組合が上手く誤魔化してくれたから、俺がSAくんだって事は学校の人間にはバレていないものの、あれを経験してからは、絶対に隠し通すと固く心に誓った。






 まあ、そんなこんなで少しずつゆっくりではあるが、日常が戻っていき——二週間が経過したある日のことだ。


 砂漠のダンジョン三十五層。

 ボスモンスターが出現する階層で本日の天頼の配信が開始する。


「はーい、みんなー! よっはー! 今日も元気にダンジョン配信やってくよー!」


”はーい(*≧∀≦*)”

”待ってました!”

”始まったー♪”

”四葉ちゃんよっはー!”


 うっわ……相変わらず凄えな。


 数分足らずで目で追いきれなくなるほどのコメントで溢れかえる。

 別に俺はカメラを眺めているだけだが、裏でモデレーターをしている水森からすればたまったものではないだろう。


 今後のことも考えてモデレーターを雇った方がいいんじゃないかと思うが……まあ、水森が全部捌き切るんだろうな。


 ……それはそうと、一時期配信も動画更新もピタリと止まっていたのに、よくここまで盛り返せたな。

 普通ならチャンネル登録者が減ってもおかしくないのに、維持するどころか前とは比較にならない勢いで伸びてるのはヤバすぎだろ。


 やっぱアウトブレイクの際の活躍がデカいのか。

 天頼が凝魔結晶を破壊した事実が広まったら、チャンネル登録者が異常な早さで大幅に爆増し、気がつけば九十万人を突破していたくらいだし。

 この調子なら百万人の大台に乗るのも時間の問題だろうな。


 モンスターが襲ってこないか周囲を警戒しつつ、チャット欄を眺めていると、冒頭の簡単な挨拶を終えた天頼がパンと手を叩く。


「今日の配信はアシスタントくんと二人でボスモンスターの討伐をやってくよ! けど、その前に二つお知らせがあります!!」


”お知らせ?”

”なんだろう”

”ワクワク”


「まず一つ目は……なんと! 今度の日曜日にそらっち……じゃなくて、二階堂空ちゃんとコラボ配信を行います! 詳しい時間とかは追ってΩで告知するから、まだフォローしてないよーって人は是非フォローしてね!」


”おお、ついに夢のコラボが!!!”

”キター!”

”え、あの二階堂空と!?”

”二天魔術と四大魔術の共演が見れんの胸熱過ぎか!!!???”


 ただでさえ盛り上がりを見せていたチャット欄のボルテージが更に上がる。


 やっぱ似たタイプの術者同士の共闘は熱いもんがあるよな。

 実際は東京湾ダンジョン突入作戦でバリバリ共闘してたけど。

 とはいえ、あの時は配信してられる状況じゃなかったから、リスナーからすれば今度の配信が初見になるのか。


 ちなみに本当はもっと早くにやるつもりだったけど、なかなか互いの都合が合わなくて今回のスケジュールになってたりする。


「それから……もう一つ、大事なお知らせがあります。アシスタントくん、こっちに来てもらっていい?」


 天頼に手招きに点頭で応じてから、俺はカメラの前に立つ。


”お、SAくんじゃん”

”なになに、SAくんも関係してるの?”

”ハッ! もしかして……わたしたち付き合いました報告?”


 違えよボケ。

 そんなんしたらガチ恋勢共に炎上させられるっての。


(……まあ、いいや)


[どうも、アシスタントです]


 スケッチブックを開きながらぺこりとお辞儀をすれば、天頼がにっこりと満面の笑みで言う。


「それでお知らせが何かというと——ずばり! この前のアウトブレイク終息の活躍が認められて、冒険者ランクが昇格しました!! なので今日からわたしはSランク、アシスタントくんはAランク冒険者になります!!」


”うおおおおおおっ!!!!!”

”二人とも!? 凄え!!!”

”おー! おめでとう!”

”遂に四葉ちゃんもSランク……!”

”え、待ってやばいやばいやばい”

”これはトレンド不可避待ったなし”

”SAくんもランク昇格おめ!!!”


 瞬間、大量の賛辞と祝福のコメントが流れ出す。

 雪崩みたいな勢いでどんどん投下されるから全然追いきれねえ。


(おお……! コメントとはいえ、ここまで祝われるとなんかこそばゆいな)


「えへへ、皆んなありがとね! でも、これで慢心せずに配信頑張っていくから、これからも応援してくれると嬉しいな! アシスタントくんからも何か見てくれてる人に向けてメッセージとかあったりする?」


[あります。ちょっとだけ時間もらっていいですか?]


「うん、もちろん」


[ありがとう]


 天頼にページを見せてから、俺はカメラの目の前に立つ。


 ——よし。


 一つ深呼吸をして、スケッチブックを捲る。

 あらかじめ用意しておいた文章をカメラに映す。


[今から伝えることは四葉さん本人にはまだ伝えていない内容です]


[自分は彼女に拾い上げてもらってここまで来れました]


[そうじゃなきゃ未だ一人で底辺冒険者として燻ったままだったでしょう]


”ん、急にどうした?”

”ありゃ、思ったより真面目な内容だ”

”いきなりの自分語り草”


 その通り。

 これは自分語りであり、決意表明であり——誓約だ。


 マスクの下で笑みを溢しつつ、再びページを捲る。


[だから自分がこうしてAランク冒険者になったのは奇跡だと思ってます]


[けれど、奇跡のまま終わらせるつもりはありません]


[すぐに自分も彼女に追いついてみせます]


[もっと強くなって、必ずSランク冒険者になります]


 まさか、こんな馬鹿げたことを大々的に吹聴する日が来るとは。

 自分でもビッグマウスが過ぎんだろとは思うが、これくらい思い切った方が腹を括れるし丁度いいだろう。


 ——それに……俺の中でSランクに上がることは通過点に過ぎないしな。


 俺の本当の目標。

 それは、いつか親父に並び——超える。


 流石にこっちは大っぴらにはできないけど、いつか絶対に成し遂げてやる。

 どれだけ険しい道だとしても、今なら挫けることなく本気で目指せるはずだ。


[自分からは以上です]


 スケッチブックを閉じ、最後に一礼してから俺は、カメラの外側に出る。

 白紙のページを開き、[お返しします]と書き込んで天頼に見せる。


「はいはーい。見てる人にはなんて伝えたの?」


[内緒、後で配信見返して]


「えー!? 教えてよー! むぅ、アシスタントくんのけちー」


 頬を膨らませる天頼を宥めながら、俺らは歩き出す。

 掲げた目標を達成する為にも、まずは目の前の事を一つずつやり遂げよう。


 ——なんて、心に誓いながら。

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