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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第4章 一閃、全ての因縁を断ち切って明日へ

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最悪の災禍に終止符を

 毒の巨人が斃れてから程なくして。

 辺りに満ちていた毒の海がみるみる消失していく。


「倒した……のか?」


「そう、だと思う。モンスターらしき魔力はなくなってるし。それに……」


 天頼が前方に視線をやる。

 その先を追えば、凝魔結晶を覆っていた黒いゲルも同様に消えていた。


(……あれも巨人が統制していたのか)


 でもまあ、それならこちらにとっては好都合だ。

 あの毒液がなければ、天頼の術式が掻き消されずに済む。


 ただ問題があるとすれば、俺らに凝魔結晶をぶっ壊すだけの余力が残っているかどうか、か。


 凝魔結晶は言って仕舞えば高純度、高密度の莫大な魔力の塊。

 相当の威力がなければ破壊は不可能だ。


 それこそここら一帯を更地に帰す程の攻撃でなければ。

 そんでもって、これが出来るとすれば——、


 無理を承知で確認する。


「……天頼、いけそうか?」


「勿論。ちょっと待ってね」


 即答だった。


 こくりと頷き、術式の構築を開始する天頼。

 だが、若干ふらついていて、今にも転倒してしまいそうだ。


 ——かく言う俺も立つだけで一杯一杯なんだけど。


 打刀を地面に突き立て、杖代わりにした時だ。

 天頼が不意にバランスを崩し、仰向けに倒れそうになる。


「っと、危ねえ……!!」


 咄嗟に手首を掴み、ぐいと引き寄せる。


「ふう……ギリセーフ、ってところか」


「ご、ごめん……」


「気にすんな。……けど、本当に大丈夫か?」


 再び問いかければ、天頼は観念したように頭を振る。


「……正直言うと、かなりキツイ。今みたいに剣城くんに支えてもらわないと、もうまともに立ってられないくらい」


 しかし、一呼吸置いて、


「——でも、今こうしている間にも、ダンジョンの外では多くの人々が戦ってる。それなのに、のんびり休んでなんてられないよ。一刻も早く凝魔結晶を壊してアウトブレイクを終わらせなきゃ」


 自分に檄を飛ばすように言うと、もう一度、術式の発動を試みる。


(ったく、他人の事となると無茶ばっかりしやがって)


 そこがこいつの良いところでもあるんだけど。

 なら、俺がやるべきことは一つだ。


「……分かった。天頼が倒れないよう支えるから、思い切りぶっ放せ」


「………………ありがとう」


 少しだけ消え入りそうな声。

 僅かに躊躇う様子を見せながらも、俺にもたれかかるように身を預けて、天頼は魔力を収斂させた。


 息を整えつつ、意識を集中させる。

 急速に、それでいて丁寧に。

 魔力が高まってきたところで、徐に言葉を紡ぎ出す。


「——”彼方より飛来する流星”、”荒ぶるは怒涛と狂飆(きょうふう)”」


 これは……詠唱か!?


 しかも多重詠唱——二つの術式を並行して構築している。

 これなら少ない魔力でも出力を上げつつ、比較的低い難易度で術式を成立させられる。


 ——でも、これで身体が保つのか。

 二重起動ではあるけど……四属性全部使ってるだろ、これ。


 声に乗せられた魔力で察する。

 脳裏に過る一抹の不安を余所に、詠唱が重ねられていく。


「”天理の裁き、齎すは終焉の大地”、”大神の審判、回帰するは原初の海洋”」


 唱え終えると同時、天頼から魔力が漲る。

 ——術の発動準備が完了した。


 そして、二つの術式が同時に放たれる。


地崩滅隕(ちほうめついん)終嵐禍海(しゅうらんかかい)!!!」


 瞬間——二つの天災が凝魔結晶へと強襲する。


 片方は、業火に包まれた隕石。

 もう片方は、電撃を伴う黒い竜巻。


 後者の術式の影響だろうか、その発生源である凝魔結晶の周辺には、激烈な暴風雨が発生していたが、こっちまで術の余波がやってくる事はなかった。

 暴風雨が術式の効果を領域内だけに押し留める檻の役割を果たしていたからだ。

 加えて、まるで見えない水槽があるかのように、領域内だけに水がどんどん溜まりだしていた。


 少し遅れて、上空から落下してきた隕石が暴風雨の中に突入する。

 刹那、領域内で凄まじい爆発が発生した。


 それも一回だけじゃない。

 隕石が凝魔結晶に衝突する僅かな間に何度も連続で大規模な爆発が引き起こされていた。


 だとしても、隕石と凝魔結晶が衝突した瞬間は、一際大きい破壊音が轟いたからすぐに分かった。


 ——だけど、まだ完全破壊とはならなかった。


 凝魔結晶の魔力は、まだ健在している。

 表層の大部分は消失していたが、肝心の中心部が残っているせいだ。


「くっ、これでも駄目なのかよ!」


 拳を握り締め、歯噛みした時だ。

 天頼が力無く俺の方に倒れた。


「——天頼っ!!!」


 クソ、やっぱ限界が来ちまったか——!


 すぐに抱き止め、丁重に地面に降ろす。

 案の定、両脚には一切力が入っていなかった。


「悪い、無理をさせ過ぎた」


「……そんな顔、しなくても大丈夫、だよ」


 言って、天頼は小さく笑う。


「私は、私がやるべき事をやっただけ、だから。それに……まだ、術は終わってないよ」


「へ、それって——」


 理解するより早く、暴風雨の術式に変化が起きる。

 暴風雨の中で走る稲妻の数が急激に増えだし、溜まっていた水が球状に圧縮を始めた。


 術式の領域内が水に包まれながらも、中では稲光が絶え間なく閃く。

 雷の威力はどんどん上がっていき、一際鮮烈な輝きを放った。


 瞬刻——階層全体を閃光が覆い尽くし、耳を擘くほどの轟音が鳴り響いた。


 身体強化で全身を保護している上に爆心地から遠く離れているにも関わらず、一時的に視界と聴覚が全く機能しなくなるほどの規模の爆発だった。


 とはいえ、破壊力から考えればその程度で済んだと考えるべきだろう。

 領域外にまで影響が及んでいたら、今頃俺と天頼は消し炭となっていたはずだ。


 それから真っ白になった視界とキーンと甲高い耳鳴りが続く中、目と耳の回復を待っていると、ふと強風が頬を打ちつけ、頭上から冷たい何かが降り注ぐ。


 これは……水、か?


 爆発によって四散した水が小雨のようになったのか。

 服や髪が濡れだしたからすぐに分かった。


 ということは、もう暴風雨の領域も無くなっている。

 見えなくても待機中の魔力を感じ取れば判別できる。


 ——それともう一つ、大きな魔力が完全に消失している。


 ほっと一息、ようやく肩の荷が下りる。

 徐々に眩んだ視界が元に戻る。


「……よく、やってくれたよ。天頼、お前は本当に……凄えよ」


 彼女の肩をぽんと叩き、ぽつりと呟く。

 前方——聳えていた凝魔結晶は粉々に砕け散り、周辺は更地と化すどころか、地盤ごと引き裂かれていた。

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