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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第4章 一閃、全ての因縁を断ち切って明日へ

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終点の番人

 未だ誰も足を踏み入れた事のなかった領域——東京湾ダンジョン八十七層。

 突入してすぐに目的のそれが視界に映る。


「あれが……凝魔結晶、だよな」


「うん、間違いないと思う。でも……」


 天頼が言い淀む。


 前方に聳えるのは、高さと幅が共に三十メートルを超える巨大な紫の結晶——凝魔結晶。

 ダンジョンの外にモンスターを溢れ出させる災禍の元凶。

 そいつを黒いゲル状の液体が覆い、傍には同様のゲルで形作られた獣頭の巨人が護衛するようにして佇んでいた。


 巨人の大きさは凝魔結晶にも劣らず、周囲にはドス黒い瘴気が溢れ返っている。

 あれもグランザハークと同じく、近づいただけでお陀仏になるパターンだろう。


「モンスター……じゃあなさそうだな」


 この階層だけどこにもモンスターの影すら見当たらねえし。

 となると、考えられるのは——、


「多分、蛇島の術式で生み出された眷属じゃないかな」


「だよな」


 恐らくは、万が一に突破された場合の保険ってところか。

 どこまでも用意周到なことで。


 ——ったく……腐れ外道が、ふざけやがって。


 集中力を研ぎ澄まし、深く息を吸い込む。

 刀身に魔力を収斂させ、鞘の中で循環させる。


「時間が無え。さっさとあの結晶ぶっ壊して、東仙さんのところに戻るぞ」


 そんでもって、八十六層に入ると同時に、遠隔斬撃で蛇島の首を断つ。

 卑怯だろうがなんだっていい。

 それで奴をこの手で殺せるのなら。


「……了解」


 天頼は頷いて、術式の発動準備に入るも、


「——ねえ、剣城くん」


「どうした?」


「その……ううん、ごめん、何でもない。絶対に凝魔結晶を破壊しよう!」


 頭を振った直後、高密度な火属性の魔力が迸る。


赫灼隕(かくしゃくいん)!!」


 小手調べも出し惜しみも無し、初っ端から出力全開の術式が起動する。

 上空に生成された極大の火球が凝魔結晶へと落下——遠く離れた草花すらも灼き尽くす程の激しい熱を含んだ業火の巨塊が結晶と巨人へと襲いかかる。


 しかし、巨人が火球を受け止めた瞬間、肉体を構成する液体が多少蒸発しただけで術式そのものを掻き消してしまった。


「……は?」


「えっ、なんで!?」


 一瞬、思考がフリーズしかけるが、すぐに脳裏に答えが過る。


「……ダークネスカオススライムだ。あの巨人と結晶を覆っているあの液体は、あのスライムと同じ効果を持ってんだ」


 でもまあ、考えてみれば納得は出来る。

 ダークネスカオススライムの液体は強酸性の毒液だ。

 であれば、蛇島の術式で再現できてもおかしくはない。


「それって……つまり——」


「ああ、属性魔術は通用しねえ」


 二階堂さん対策が天頼にも諸に影響しちまってる。

 そんで天頼がメタられてるってことは、俺が倒すしかない。


 俺が、あの怪物を——斬る。


 やれるとかやれないじゃない。

 斬らなきゃならない。


 でも、どうやって——。


 持ち得る限りの頭を働かせ、毒の巨人の倒し方を思考する。

 必ず何かしらの突破口はあるはずだ。


 とはいえ、そう悠長にしてられる余裕もない。


「——剣城くん、来るよ!!」


「、っ!!」


 俺らの存在に気づいた巨人が両拳を地面に叩きつける。

 階層全体に地響きが轟くと、叩きつけた箇所から黒く濁った毒液がとめどなく溢れ出し、こちらに押し寄せてきた。


「壁巌!!」


 巨人の動きをいち早く察知した天頼が足元に術式を展開させる。

 直後、俺らがいる場所を中心として台地のような巨大な一枚岩が地中から突き出てくると、すかさず、


濫渦流(らんかりゅう)!!」


 一枚岩を囲むようにして洪大な激流の防壁が発生する。

 程なくして激流と毒が激突し、猛烈な陣取り合戦が始まる。


「うわ、凄え……」


 ——って、呑気に驚いている場合じゃねえ。


「サンキュー、助かった……!」


「どういたしまして! ……でも、そんなに長くは持たなそう。微弱にだけどあの毒にもダカスラみたいに属性魔力に対して耐性があるっぽいから。拮抗してられるのも時間の問題だよ……!!」


「……なるほど。じゃあ、そうなる前にケリをつけろってことか」


 元から短期決戦で決めるつもりだったけど。

 より一層とっとと終わらせないといけない理由ができたな。


 ——息をゆっくりと吐き出す。


 身体の隅々にまで練り上げた魔力を行き渡らせる。

 深く腰を落とし、極限にまで集中が高まった刹那——抜刀一閃、遠隔斬撃を遠く離れた巨人へと叩き込む。


 ありったけの魔力をぶち込んで放たれた斬撃は、衝突し合う激流と毒の表面を伝いながら巨人の首筋まで到達すると、そのまま頭部を胴体から切り離してみせた。


 だが、巨人の身体が崩壊する様子はない。


「チッ……!!」


 首を落としても死なねえってことは、弱点は別にあるってわけか。

 なら、どこをぶった斬ればいい……?


 目を凝らして観察するが——流石にここからだと見当がつかねえな。

 となれば……久しぶりにこいつの出番か。


 打刀を鞘に納め、代わりに脇差を引き抜いてから、腰裏のポーチに手を伸ばす。


「剣城くん、それって……」


「愛用品だ。一人でダンジョン探索してた頃のな」


 取り出したのは、前回のアウトブレイク以降、ずっと奥底で眠らせていた探索用の単眼鏡。

 天頼と一緒にダンジョンに潜るようになってからは使う機会がめっきり減ってしまっていたが、念の為に持っておいて正解だった。


 ——こいつで巨人の急所を探る。


 脇差に魔力を籠め、俺は単眼鏡を覗き込む。

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