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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第4章 一閃、全ての因縁を断ち切って明日へ

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穿ち、塞ぎ

「——それじゃあ、タイミングは阿南さんに任せるね」


 最終確認を終え、二階堂さんがそう言うと、


「承知した」


 阿南さんは、小さく頷き、


「三、二、一……」


 一拍間を置いてから、カウントダウン。

 そして、


「行くぞ!!」


 展開していた魔力障壁を解除。

 それと同時——、


勝利を導く揺動の一擲(シグル・グングニル)!!!」


 征士郎さんが槍を全身全霊で投擲する。


 刹那、魔力出力を最大にして放たれた槍は、まさに破壊と殺戮を撒き散らすミサイルそのもの。

 軌道上に存在していたモンスターを木っ端微塵に消し飛ばしながら、音速を越える速度で真っ直ぐに飛んでいった。


反讐硬壁(カウンターウォール)!」


 並行して、阿南さんが再度、反撃の魔力障壁を展開する。

 盾は地面に突き立てず、持ち上げた状態で構えている。


 阿南さんがスキルを発動させた瞬間、更に並行して、


(ゆう)


 東仙さんが術式を起動。

 障壁内にいる俺たちの身体がふわりと浮き上がる。


 これでお膳立ては完了した。


 大群の中に抉じ開けられた道。

 受け止めたダメージを衝撃にして返す守りの壁。

 そして、重力の支配から解き放たれた肉体。


 これらが意味するのは、つまり——、


「——(じゃく)


 引斥魔術を用いた高速移動による脱出。

 術式の発動を認識した直後、静かに地面に着地した時、周囲の景色は既に敵の包囲網のど真ん中から階層の端っこへと切り替わっていた。


 壁との激突で発生した衝撃はが一帯に迸ってから、阿南さんは障壁を解除し、


「急げよ、東仙!」


「ああ。ここは任せたよ、阿南!」


 東仙さんと短く言葉を交わして、追手を食い止めるべく前線に躍り出た。


 続け様に、二階堂さんが白と黒の魔力を周囲にばら撒き、炸裂させる。

 瞬く間に大量のモンスターが蹴散らされていく。

 だが、倒したそばからまた新たなモンスターが続々と出現していた。


 その光景を後目にして、俺は東仙さんの後を追う。


 阿南さんら三人をここに置いていくことに心配はない。

 一騎当千の実力を誇る征士郎さんと二階堂さんがいる以上、この大群を相手取るのも問題ないだろう。


 ——だとしても、のんびりしてなんかいられねえけどな。


 足止めを買ってくれた三人の決断に報いる為にも、ダンジョンの外でモンスターの侵攻を食い止めてくれているであろう冒険者たちを助ける為にも、一刻も早く凝魔結晶を破壊しなければならない。

 それが災害から無辜の人々を救うことにも繋がるのだから。


「天頼、行くぞ!」


「……うん!」






 *   *   *






 スキルによって一人でに戻ってきた槍をキャッチした陸奥森は、即座に槍を構えて敵の攻撃に備える。


 敵の数は数百を超え、倒したら倒した分だけ新たに湧いてくる。

 正真正銘、終わりのない戦い。

 終止符を打つには、先行した三人の誰かが八十七層にあるはずの凝魔結晶を破壊する必要がある。


 自身の役目は、それまでここに残って敵を釘付けにすること。

 これができるのは、自身と後方に立つ二階堂だけだ。


 それは十二分に理解している。

 分かっているが、


「あーあ、カッコつけて東仙さんらを送り出したのは良いけど、やっぱあっちに付いていきたかったなー」


「ごめんね。けど、これがベストなんだよ」


「わーってるよ。けど、昌隆さんまで残す意味あったか? ここにいる奴らを相手にすんなら俺ら二人だけでもどうにかなったろ」


「そうかもね。だけど、阿南さんが次の階層への道を守ってくれたら私と君は、敵を倒すことだけに専念できる。そうすれば、早くここを片付けて三人を追いかけやすくなる可能性が上がる。そっちの方がいいと思わないかい?」


 二階堂の言い分に陸奥森は、暫し思案してからニヤリと口端を釣り上げる。


「そうだな。どうせ暴れるなら、周りを気にしないで好き勝手に暴れた方が良いに決まってんもんなァ!」


「……やれやれ、私は子守役というわけか。だがまあ、私も二階堂の提案には賛成だ。速攻でモンスターを殲滅ならびに鬼垣を捕縛して、三人の後を追うとしよう」


 蛇島と同様、鬼垣も速やかに無力化しなければならない。

 再び凝魔結晶を複製される恐れがあるのに加えて、どういう訳か、がしゃ髑髏を始めたとしたS級モンスターの何体かは奴の指揮下にある。


 奴を自由にしてしまうと、S級モンスターが延々とこちらを追跡するだけでなく、最悪の場合、蛇島がいる中で相手にしなければならなくなる。

 それを防ぐという意味合いでも、二階堂は戦力を二分させていた。


「それじゃ、殲滅戦といこうか。私もちゃんと本気を出すからさ」


 言って、二階堂は詠唱と共に術式を起動する。


「——”黄昏と黎明”、”陰陽の狭間”、”昼夜が交わりし世界”」


 それは、空間そのものに働きかける光属性と闇属性の混合魔術。

 術者の光属性と闇属性の出力を爆発的に向上させ、他者の術式の出力を著しく低下させる二天魔術の極致——。


 詠唱を交えたのは、術の効果を上げ、範囲を広げる為だった。


「”白と黒は総て我が手に”——イクイノックス・ニヒリティ」


 発動した瞬間、夜空に覆われていた階層の半分が明るくなる。

 深夜と白昼が綺麗に拮抗した特殊な空間へと変貌を遂げ、二階堂の魔力出力が跳ね上がった。


「こっちは、準備おーけーだよ」


「ハハッ、それがお前の本気ってわけか。だったら、俺も負けてらんねえな……!」


 ずっと全力を出すのは控えていたが、ここまできたらもう出し惜しみはしない。

 陸奥森は、手にしていた槍の穂先に魔力でできた文字を刻み込み、


「さあ、完全顕現だ——大神の魔槍(グングニル)!」


 体内の魔力を滾らせるのだった。

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