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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第2章 限界を飛び抜けて、空を駆けるは

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応用の抜刀一閃

 斬撃は高速で地を這っていき、グランザハークの眼球に命中こそしたが、


「チッ、硬えな……!!」


 魔力の装甲を破れず、結果として不発に終わってしまう。


 やっぱり災禍を振り撒いたモンスターなだけある。

 俺如きの攻撃じゃ、かすり傷にもならねえってか。


 ——それでも、だ。


「もうちょっと威力があれば攻撃が通りそうだな」


 全く効いてないってわけじゃない。

 ちゃんと手応えはある。


 ……つっても、今ぶっ放したの普通に全身全霊ガチ本気の一太刀だったんだけど。


 堪らず苦笑を溢していると、


「君、もしかして……遠隔で斬ったものの感触が分かるのか?」


「まあ、直接感覚が伝わってくるわけではないっすけど。なんとなく感じ取れるって感じです」


 じゃなきゃ、ずっと離れた位置にいる奴を斬れたかどうかなんて判断できねえよ。

 一応、最終的に目視でも確認はするけど。


「……なるほど。そうか、君が——」


 俺をまじまじと見つめながら阿南さんは、何か腑に落ちた様子で呟いた。

 その直後、


反讐硬壁(カウンターウォール)


 地面に大盾を突き立て、周囲に半透明の障壁を展開させると同時、近くにいた魔獣型のモンスターが障壁に激突した。

 瞬間、魔獣型のモンスターが不自然な挙動で吹っ飛ばされ、地面に落下する頃には首が半分もげて物言わぬ肉塊となっていた。


「何だ……今の」


「強化障壁——私のスキルだ。魔力を消費することで、この通りに防御壁を展開するシンプルなものだよ」


「え、シンプル……? いや、あの……なんか今、ガードだけじゃ説明つかないやられ方してたんですが」


「ああ、それは受けたダメージを反射するようにスキルを拡張したからだよ」


「……は?」


 スキル拡張って言った、今?

 なんかさらっと言ったけど、今スキル拡張って言ったよな。

 いや、それよりも……、


「なんでスキル拡張したらカウンター性能が付くんすか……!?」


「はは、どうしてだろうね。必死にスキルを使っていたらこうなっていたよ。そんなことより……今は、向こうに集中するべきじゃないのかい?」


 言って阿南さんは、遠くで大怪獣決戦を繰り広げる天頼とグランザハークを視線を傾ける。


「……」


 なんか釈然とはしねえが、阿南さんの言う事も尤もだ。

 スキル拡張については、この戦いにケリが付いてからじっくりと聞く事にしよう。


 意識を深く鎮める。

 打刀を鞘に納め、魔力を刀身に鞘の内部に流し込む。

 さっき飛ぶ遠隔斬撃を放った時の感覚を蘇らせる。


 障壁が展開されている現状であれば、魔力の収斂のみに集中できる。

 それにメインの掃討部隊からも大分離れているから、もしこっちに攻撃が飛んできても巻き込まれが発生する可能性も低い。


 それなら……次はこれで叩っ斬る。


 さっきのは本気の一撃ではあったが、手を尽くしたわけではない。

 これなら、ワンチャン俺の斬撃でも有効打になり得るかもしれない。


「阿南さん、ちょっと集中するんでスキルはそのままでお願いします」


「了解。君の好きなようにするといい」


「……あざます」


 言いながら俺は、地面に片膝を突き、居合の構えを取る。

 深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。

 鞘内部の魔力を圧縮し、高速で循環させる。


 感覚に鈍りはない。

 これならもう一度、同じ精度での抜刀が出来そうだ。


 まぐれの一発では意味がない。

 新たな技術は、恒常的に再現できてこそ真の完成なのだから。


 ——決して偶然で終わらせるな。


 強く自分に言い聞かせ、身体の奥底に眠る魔力を激らせる。

 集中力が高まるにつれて余計な感覚が遮断されていき、抜刀の準備が完了しようとした時だった。

 三度目のグランザハークの魔力ブレスが俺に襲いかかってきた。


「……っ!」


 またも攻撃寸前。

 このタイミングを窺ってんじゃないかと勘繰ってしまいたくなる。


 しかし、泰然自若——焦りは無い。

 何故ならさっきとは違い、俺を守ってくれる盾があるから。


 漆黒の閃光と阿南さんが展開した障壁が激突する。

 刹那、激烈な衝撃波が生まれ、周りにいるモンスターが身体を肉クズに変えながら吹っ飛ばされていく。

 だが、障壁には一つの傷も付くことすらなく、やがてブレスが収まった。


 天頼と大怪獣決戦を繰り広げているにも拘わらず、俺を叩き潰そうとこちらに意識を割いたことで、グランザハークに大きな隙が生まれていた。

 そして、そんなあからさまな隙を天頼が見逃すはずもなかった。


 ——天頼の術式が起動する。


 それは、地属性の魔術。

 指定した範囲に地面が陥没するほどの重力場を発生させ、強力な大気圧で対象を圧し潰す術式。

 発生した重力場によってグランザハークの頭部は、凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。


 そのタイミングで俺も鯉口を切り、鞘から刀身を引き抜く。


 鞘の中で循環させておいた圧縮魔力を解き放ち、瞬間的に全身と刀身に巡っている魔力量を一気に増加させる。

 飛ぶ斬撃を放つ際、鞘口辺りに収斂させていた魔力のリソースをこれらに回すことで、通常の遠隔斬撃の威力を爆発的に高めるのが狙いだ。


 遠隔斬撃を叩き込むは奴の眼球……いや、違う!


 抜刀と共に地面を斬りつけ、遠隔斬撃を放つ。

 天頼の術式によって全身に纏う魔力の装甲が弱まった今、真に狙うべきは、奴の顎下辺り。


 つまりは——逆鱗。


 生物にとっての最大の急所の一つは、ドラゴンであってもその例外ではない。

 伝播した斬撃が発生した刹那、グランザハークの首筋から膨大な鮮血が吹き出し、首から上を地面に固定されたままのたうつように暴れ出した。

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