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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第2章 限界を飛び抜けて、空を駆けるは

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限界を超えるのは

 突如として自身の最大の天敵ともいうべきモンスター二体が目の前に立ちはだかった時は、絶望にも近い緊張が走った。

 以前に味わったじわじわとにじり寄るような戦慄が蘇り、呼吸が浅くなり、足が竦みそうになった。


 だけど——自分でも不思議なくらいに平気でいられた。

 別に恐怖に打ち克つほどに精神が強くなったからではない。

 頼りになる相棒がいてくれたからだ。


 四葉は信じていた。

 再び彼が、眼前のモンスターを斬り伏せてくれることを。

 それから彼が抱えている己の弱点を克服してくれることを。


 それが唯一の勝ち筋であるから。


 だからこそ四葉は、奴らを他の場所に行かせないことに尽力した。

 時間を稼ぐことに専念し、大した有効打にもならない術式を何度も放ち続けた。


 程なくしてまず一体……ダークネスカオスジャンボスライムがどこからか飛んできた斬撃によって核を両断された。

 これが鋼理の遠隔斬撃によるものだというのは、すぐに理解できた。


 ダークネスカオスジャンボスライムを構成する強烈な酸の液体を無視して核を叩き切る手段は限られている上、この倒し方は以前、森のダンジョンで鋼理が行ったやり方と同様のものだったからだ。


 遠隔斬撃——地表を伝播し、指定した地点に斬撃を発生させるスキル。

 異常なまでの圧倒的射程と精密性を誇り、これまで幾度に渡って自身を助けてくれた。


 何故か本人は過小評価しているが、相当なポテンシャルを秘めているスキルだ。

 とはいえ、このスキルは一つ明確な弱点を抱えている。

 斬りつけた物体の表面しか這うことが出来ないという性質上、飛んでいたり浮いていたりする相手には斬撃が届かないことだ。


 となると、浮遊するスフィア種相手では鋼理の遠隔斬撃は通用しない。

 加えてスライムと同じ体組織で構成されているから、当然ながら四葉の術式も通用しない。

 まさに打つ手なしといった状況といっていいだろう。


 ——そう、本来であれば。


 しかし、結果は違うものとなった。

 どこからか飛んできた圧縮された魔力がダークネスカオスジャンボスフィアに撃ち込まれると、刹那——中心にある核が両断されてダークネスカオスファンボスフィアの全身が崩壊した。


 鋼理がスキルを応用することで、飛ぶ斬撃を可能としたのだ。

 おかげでスフィア種の撃破も成功し、四葉の前に立ち塞がっていた障害は完全に取り除かれた。

 天敵がいなくなってしまえば、ここから先は四葉の思うがままだ。


 ——ありがとう、剣城くん。


 心の中で四葉は呟く。


 ——やっぱり君は、わたしにとってのヒーローだよ。


 鋼理は自身の限界を超え、役割を果たした。

 であれば、今度は自分の番だ。


「わたしも頑張らなきゃ、だよね……!」


 右手に火属性の魔力を練り上げ、左手に水属性の魔力を練り上げる。

 二つの術式を並行して起動させるが、それだけでは足りない。

 ただ身体強化した状態で走って合流するにも時間がかかり過ぎてしまう。


 じゃあ、どうするか——、


「韋駄天」


 術式の同時三重起動。


 両脚に風属性の魔力を纏わせ、一定時間、脚力を向上させる術式を発動する。

 更に間髪置かずに続けて、


遊雲(ゆううん)


 全身に別の風属性の術式を起動。

 こちらは風属性を帯びた暴風を纏い飛行を可能とする防御兼移動用術式だ。


「皆んな、もしかしたら途中でカメラがダメになっちゃうかもだけど……その時は、どうか許してね」


 苦笑混じりにカメラに向かって伝える。


”いいよ、緊急事態だもん”

”がんばれ!”

”今度は四葉ちゃんがSAくんを助ける番だよ!”

”仕方ないなあ。でもその代わりにちゃんとモンスター倒してよ”


「うん、ありがとう! じゃあ、行ってくるね!!」


 そして、準備を終えた少女は空を疾く駆けていく。






「ぐべあっ!!」


「SAくん!? 今、思いっきり吹っ飛ばされたけど大丈夫!?」


「……う、す。なんとか、平気っす」


 結界入り口まで飛ばされてたか……。

 抜刀直後に魔力で肉体を固めておいたのと、どうにか受け身を取れたからどうにかなったけど……背中から落ちると普通に痛えな。


 でもまあ、大した怪我にならなかっただけでもよしとするべきか。


「えっと、天頼ちゃんの方はどうなったの……!?」


「もう問題ないっす。障害はどうにか排除しました。多分、すぐにこっちに来てくれるはずです」


 言った直後だ。

 グランザハークの背後を狙って巨大な水の龍が襲い掛かった。


 突然の急襲にグランザハークは完全に不意を突かれたからか、もろに攻撃を喰らい地面に倒れる。

 それを目の当たりにした掃討部隊の面々に混乱が走る。

 だけど、あの龍には見憶えがあった。


 あの術式は確か——流龍滅瀑(るりゅうめつばく)……だったか。


 今でも記憶に新しい。

 何せあの術がきっかけでえげつない水蒸気爆発が発生したからな。


 更に畳み掛けるように上空から隕石のような火球がグランザハーク目掛けて落下してきた。

 火球がグランザハークに衝突した瞬間、小規模の水蒸気爆発が発生し、業火が全身を包み込んだ。


「うわっ、何あれ……!?」


赫灼隕(かくしゃくいん)——天頼の火属性魔術っす。それと、さっきの水の龍をぶっ放す術式もあいつのっすね」


「うひゃあ……配信では見たことあるけど、生だとこんなに迫力あるんだ……!!」


「そりゃまあ、あいつの本気は軽い天変地異とそう大差ないですから」


 多分、周りの被害を一切考慮しないで術をぶっ放しまくったら、巻き込まれで怪我人続出しまくるぞ。

 ……まあ、それは置いておくとして、だ。


 二連続で術式が飛んできたってことは、つまり——、


「これで……花形登場っすよ」


 ——無風のはずの結界内に暴風が吹き荒れる。

 風の発生源は結界上空——見上げれば、小さな人影が一つ。


 天頼が嵐を纏いながら、地面に倒れたまま動けずにいるグランザハークを見下ろしていた。

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