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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第2章 限界を飛び抜けて、空を駆けるは

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あなたにとっては些細でも

 鋼理が事務所を出ていってから暫くが経った後。

 残った四葉は、両膝を抱えて惚けながらソファに座り込んでいた。


「——四葉。今日は剣城と一緒に帰らないんだ」


「……うん。今日はいいや」


 言いながら隣に腰掛ける陽乃に対して答えるも、どこか上の空だ。

 だが、四葉の思考の大半を占めているのは、今しがた話題に上がった少年のことだった。


「喧嘩……ってわけじゃなさそうね。ダンジョンから帰ってきた時は、関係は良好そうだったし」


「……ダンジョン散策は楽しかったよ。剣城くんのスキルを強くする為の手伝いも出来たし」


「ふーん。その割には、魂が抜けてるようだけど」


 陽乃の指摘に四葉は「そうかも」と短く返す。


 ——言ったそばからこれか。

 思うも言葉に出さず、代わりに小さく嘆息をついた。


 陽乃から見ても四葉の鋼理に対する入れ込みようは異様だ。

 これまで四葉が自分以外の誰かと組みたいと言ったことは一度も無かった。

 それどころか有名どころのパーティーの勧誘も全て断ってきた程だ。


 それこそ配信活動を始めるよりも前……ソロでダンジョンに潜るようになってからずっと。


 四葉は、見た目と性格に似合わず想像以上に用心深い。

 配信者をやっているからとかではなく、ひとえに彼女本来の性格によるものだ。


 だというにも関わらず、あの日、四葉はこの人をバディにしたいと言って鋼理をここに連れて来た。


 ——無名のEランク冒険者でしかったなかった彼を。

 当初は、先日の礼としてBランク冒険者に昇格させる推薦をする予定でしかなかったのにも関わらず。


 ただまあ、結果として四葉の見る目は正しかった。

 まだまだ四葉との実力には乖離こそあるが、相棒に相応しい人物だと今では本心からそう思える。


 ——だって、四葉が配信中に無理して笑う事が無くなったから。


 長年の付き合いだからこそ分かる親友の小さな違和感。

 それがめっきり減った事が、鋼理の何よりの貢献だと陽乃は思っている。


(……四葉にとって彼は、本当に心の拠り所になってるのね)


 ちょっとだけ妬けるし、一抹の寂しさも感じるが、四葉が良いのであればそれで良い。


「ところで、今日はダンジョンで何をしてたの?」


「お散歩だよ。のんびりぶらぶらと歩いて、剣城くんには護衛をしてもらいながら付き合ってもらって、それから……剣城くんのスキル拡張の作戦会議」


「……なるほど」


 聞いている限りだと、特に問題らしきものは感じられない。

 いや、まず男女二人だけでダンジョン探索をしている時点で色々と思うところがあるのだが、今はそこに関しては目を瞑るべきか。


 そうなると……やった事というよりは、その道中での会話内容、起きたことが原因の可能性が高い。

 普段通りのまま帰って行った鋼理の様子を見るに、向こうには何かしたという自覚はなさそうだ。

 それに非があるようなことをすれば、間違いなく四葉が咎めているはずだし、異性相手だからといって尻込みするようなタイプでもない。


 けど、念の為——、


「無いとは思うけど、四葉。あんた……剣城になんかされた?」


 訊ねれば、四葉はふるふると頭を強く振る。


「じゃあ、あんたが何かやらかした?」


「……うん」


「悪いことでもした?」


「ううん、ただちょっと一つお願いをしただけ」


「何をお願いしたの?」


「その……名前で呼んでって」


 その場限りのニックネームだけど。

 今にも消え入るような声で四葉は続けた。


「……それだけ?」


 小さく頷きだけが返ってくる。

 表情を窺えば、表情は真っ赤に染まっていた。


(——ああ、やっぱりか)


 その表情だけで全てを察するには十分だった。

 薄々気づいてはいたことだから特に驚きはない。


 寧ろ、本人の前でよく普通を装えるなと感心するくらいだ。


「剣城にはなんて呼ばせたの?」


「……いちは」


「いちは……ああ、四葉から一葉ってことね」


 なぜわざわざ偽名で呼ばせたのかその経緯については、なんとなく想像がつく。

 だとしても、呼び名はもうちょっと本名から離れたものにするべきなのではと思わないでもないが、もう過ぎたことだ。


「……それで、その事と何が関係が?」


「えっと、その……」


 質問を続ければ、四葉は口籠もり、そのまま黙りこくってしまう。

 それから十秒近くたっぷりと時間をかけてから、


「……ドキッとしちゃった」


 両膝に顔を埋めながら消え入るように呟いた。

 相当恥ずかしいのか、耳の端まで真っ赤になっていた。


「——なるほど、大体の事情は分かったわ」


 だから鋼理は平然としていて、四葉だけこんなになっていたというわけか。

 そして、四葉が今何を考えているのかも。


(……全く、世話が焼けるわね)


 正直、幼馴染みがここまで奥手だったとは思いもしなかったが、とりあえずしばらくは陰ながら二人の様子を見守ろう。

 陽乃は四葉の頭をぽんぽんと手を乗せ、優しく撫で回すのだった。

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