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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第2章 限界を飛び抜けて、空を駆けるは

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先制攻撃は必ずしも

 洞窟のダンジョンは、他のダンジョンと比べて階層が少ない。

 それ故に、東京二十三区内に出現したダンジョンの中で初めて踏破されたのがここだと記録が残されている。


 池袋にある森のダンジョンが二十五層、新宿の荒野のダンジョンが三十層であることを考えれば、階層の少なさがよく分かる。

 ちなみに、今までに国内で発見された中で階層が一番多いダンジョンは、東京湾ダンジョンであり、現在確認されているだけでも八十六層もあるという。


 ——まあ、一旦それは置いといておくとして。


[四葉さん、やっぱりやめませんか? 俺、死にますよ]


 ダンジョン最下層の最奥部にいるモンスターは、ボスモンスターとかそういった名称で呼ばれ、周辺のモンスターよりも数段上回った強さを誇っている。

 このダンジョンであれば、強さ的に限りなくA級に寄ったB級といったところか。


 ……普通に負けるくね?


「大袈裟だよ、アシスタントくん。君なら勝てるよ!」


[また冗談を。ヤバくなったら助けてくださいよ]


「うん、勿論! いつでも全力出せるようにスタンバっておくから!!」


 いや、そんな本気で準備するくらいなら、天頼自身で倒してくれよ……!!


 とはいえ、それをやったら企画として成り立たなくなるよな。

 一応、今回は俺がメインで戦う配信なわけで、リスナーの多くは(何故か)俺の戦いを期待しているわけだし。


”SAくん頑張れ!”

”SAくんなら勝てるよ!”

”かっこいい戦い期待してるよ!”


 全く……なんでそんな俺の戦闘を見たがるんだよ。

 ゴブリンの時だけは、ちょっとだけ近接戦闘もしたけど、それ以外の大半は遠隔斬撃で離れて倒しただけだろ。

 見てても大して面白いもんでもないだろうに。


 ——けどまあ、やれるだけやってみるか。


 スケッチブックを天頼に手渡し、大小の刀を鞘から引き抜く。

 右手の打刀は順手に、左手の脇差は逆手に握り締める。

 肉体に魔力を漲らせ、それぞれの刀に魔力を流し込み、前方を見据える。


 ダンジョン最深部。

 体育館ほど開けた空間に堂々と鎮座するのは、頭部に女性の上半身らしきものが生えたような異形の大蛇型のモンスター——クイーンナーガ。


 全長十五メートルを超える巨体と見た目通りの怪力を誇り、地属性の魔術を操る一応B級モンスターだ。

 流石にベヒーモスと比べれば、放たれるプレッシャーは可愛らしいものだが、それでも俺からすればコイツも大概だ。


 俺で勝てるのか……違うな、それをこれから確かめるのか。


 まあでも、真正面から戦わずとも魔力を全力で籠めた一太刀を先制でぶっ放せば、初手でケリをつけれるか——


「アシスタントくん!!」


「、——っ!?」


 天頼が叫ぶと同時、足元に魔力が発生する。

 それは術式が発動する証——刹那、岩の槍が俺の肉体を穿とうと地面から勢いよく突き出てきた。


 咄嗟に飛び退くことで回避には成功するが、そっちに気を取られたせいで刀に籠めていた魔力が霧散してしまう。


「チッ……!!」


 クソ、不意打ちするつもりが、逆に先制攻撃されちまった!

 離れているからって悠長に魔力を籠めたのは判断ミスだったか……!!


 でも、そりゃそうだよな。

 必ずしもこっちのタイミングで戦闘が始められるとは限らない。

 そんな当たり前の事実が頭から抜け落ちていた俺の凡ミスだ。


 こうなった以上、正面衝突は避けられない。

 だが、真っ向からぶつかって勝てる相手でもない。


 ——頭を使って戦わないと……!!


 体勢を立て直すと同時、俺は再び二刀に魔力を籠め、打刀でクイーンナーガに牽制の遠隔斬撃を繰り出す。

 狙いは大蛇の眼球——しかし、籠めた魔力量が少なかったせいで瞼に切り傷を付ける程度に終わってしまう。


 やっぱ硬えな、おい……!


 そもそもの肉質が頑丈っていうのもあるが、放出された魔力が全身を覆っているせいで余計に攻撃が通らなくなっている。

 肉体に纏った魔力がダメージを肩代わりして、威力を著しく減少させるからだ。

 加えて、こうして生まれた魔力の見えない鎧は、同じ魔力による攻撃でないと破るのは困難を極める。


 これはモンスターだけでなく、人間にも同じことが言える。

 だからこそダンジョンの中には、魔力を扱って戦える冒険者しか入ることが立ち入りを制限がかかっていた。


 ——何にせよ、とりあえずここに留まるのはまずいか……!


 通路に居たらまたあの岩槍が突き出てくる。

 狭い場所であれを避け続けるのはまず困難——であれば、広い場所で駆け回りながら戦った方が賢明だ。


 開けた空間に躍り出るや否や、俺は地面や壁を切りつけて短い間隔で遠隔斬撃を繰り出す。

 空いたスペースを走り回ってクイーンナーガと一定の距離を保ちつつ、足元から突き出る岩槍を躱しながら、撃ち出すのに最低限の魔力が溜まり次第、絶えず斬撃を飛ばしていく。


 術式を放つだけでなくクイーンナーガ自身も積極的に突っ込んで俺を食い千切ろうとしてくるが、動きはそんなに速いわけじゃない。

 落ち着いて判断さえ出来れば、容易に回避は可能だ。


 ——これはベヒーモスと命懸けの鬼ごっこをした経験がかなり活きているな。

 もしあれを体験してなかったら、ここまで冷静ではいられなかった。


 もう二度と同じ体験はしたくないが、内心で小さく感謝する。

 それからも向こうの攻撃を避けつつ、反撃の遠隔斬撃をきっちり浴びせていくうち、更に厄介な点に気づく。

 奴が俺の攻撃に合わせて魔力の出力を上げていることだ。


 魔術を扱うモンスターは、共通して魔力の操作技術に優れている場合が多いが、その中でもクイーンナーガは頭一つ抜けている。

 証拠にジャスガするような感じで俺の攻撃を受けるタイミングに合わせて魔力の出力を上げていた。


 流石はボスモンスターなだけある。

 おかげで未だに有効打となる一撃は与えられていないが、そこに関しては問題ない。


(そろそろデカいの一発いっとくか……!!)


 脇差に籠めた魔力は十分溜まっている。

 打刀による遠隔斬撃に慣れてきただろう今、強烈なのをぶち込んでやる。


 突き出る岩槍を避けた直後、俺は近くの岩壁に脇差を切り付けた。

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