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射程無限剣士、ド陰キャ戦法でS級モンスターをぶった斬ったら謎の暗殺者扱いされて鬼バズする  作者: 蒼唯まる
第1章 陰から白日へ、一歩

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幕間〜幼き頃の記憶〜

「父さん父さん! 俺に稽古つけてよ!」


 幼い少年が目をキラキラと輝かせて、ソファに座る銀髪の男性の元へと駆け寄る。

 少年の腕に抱えられている二本の木刀に視線をやると、男は少しだけ困ったように、だけど柔和に笑みを浮かべる。


「やれやれ、お前は相変わらず元気だな。分かったよ、一丁やろうか」


「やった! 今日こそ一本取ってみせるからね!」


 少年から木刀を受け取ると、二人は庭先へと歩いていく。

 それから互いに木刀を構え、向かい合うと、


「さあ、来い!」


「うん、行くぞー!」


 少年は勢いよく地面を蹴り、男の懐へと飛び込んだ。


「やああああああっ!」


 しかし、少年の渾身の一振りは簡単に防がれてしまう。

 木刀同士がぶつかり、少年が力一杯押し込んでもぴくりともしない。


「おっ! また腕を上げたな。前やった時よりも動きが良くなってるぞ」


「涼しい顔で言われても全然嬉しくない!」


「ははは、そりゃ父さんはとっても強いからな。さあ、どんどんかかってこい!」


「ぐぐぐ……絶対ぎゃふんと言わせてやる……!!」


 木刀を力一杯に握りしめ、少年はめげることなく再び男の元へ飛び込んでいく。

 最終的に少年が疲れ果てて動けなくなるまで付き合ってもらった。


「ああ、クソッ! また一本も取れなかったー!」


 手合わせを終えると同時、仰向けに倒れると少年は、鬱憤を晴らすように叫んだ。


「前にやった時よりずっと強くなってたぞ。流石は俺の子だ!」


 男の言葉に少年は、期待を胸を膨らませながら飛び上がるように上体を起こす。


「本当!? じゃあさじゃあさ、あとどれくらいで父さんに勝てるようになる!?」


「そうだなあ……ざっと二十年ってところか」


「えーっ!? 長すぎるよ!!」


 ぶーぶーと唇を尖らせる少年に、男は自慢げに胸を張りながら、大きく口を開けて笑ってみせる。


「そりゃ、父さんはとーっても強いからな。簡単にお前に追いつかれるわけにはいかないさ」


「だからって二十年も待てないよ!」


「そうか。なら、とっておきの秘密道具をお前にやろう」


 そう言って男性は、庭の片隅に置かれてあった物置を漁ると、中から一振りの木刀を取り出した。

 通常サイズよりも一回りほど大きいが、特段変わっている点と言えるのはそのくらいだ。


「ただの木刀じゃん」


「違う、超スーパーな木刀だ。中に特殊な鉱石が仕込んである」


「ふーん。それで、これで何をすればいいの?」


「素振りだ。毎日欠かさず、ひたすら振り続けるんだ」


 すると、少年の顔があからさまに歪む。


「え〜、地味! もっと分かりやすくパワーアップする方法はないの?」


「ない! 強くなるには地道な鍛錬を積み重ねるしかないんだ。たとえ周りがどれくらいのスピードでどれほど成長しようと、自分のペースを崩さず淡々と、けど決して手は抜かずにちゃんとな。そうすればいつの日か、努力が花を咲かす日がやって来るから」


 男は少年の頭にポンと手を置くと、わしゃわしゃと撫でながら笑いかける。

 しかし、それで納得できなかった少年の表情は依然不満そうだ。


「また小難しいこと言ってる。そんなんで本当に強くなるの?」


「勿論だ。父さんもそうやって強くなったんだから間違いない。だから騙されたと思ってそいつを毎日振ってみるといいさ」


「……分かった。嘘だったらアイス買ってよね。三段のやつ」


 渋々ながらも少年は、男から超スーパーな木刀を受け取る。

 実際に持ってみると想像の数倍重く、思わず落としてしまいそうになったが、どうにか堪えてそのまま素振りを始める。

 近い将来、絶対に男を見返してやると、心に誓って。


 この日から、超スーパーな木刀での素振りは少年の日課になった。

 そして、その一週間後——突如発生した未曾有の大災害によって、男は命を落とした。






 ——アラームが鳴る。


「……ん」


 朝、か。


 まだ朦朧とした意識でスマホを手に取り、アラームを停止させる。


「眠……」


 このまま二度寝したいけど……起きないと、か。

 自分に言い聞かせて、どうにかベッドから降りる。


 日課だけはサボるわけにはいかないからな。


「なんか、懐かしい夢を見たな……」


 サッと身支度を済まして眠気が醒めてきた頃、ふとぼそりと呟く。


 思い返してみると、親父……結構良いこと言ってたんだな。


 今なら親父が言ってた事がちょっとは分かる気がする。

 確かに強くなるには地道に努力するしかねえな。


 焦らす、自分のペースでな。


「——さてと、今日もやるか」


 そして、住んでるアパートの前に出た俺は、今日も欠かさず超スーパーな木刀で日課の素振りを始める。

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