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タロットカードのお告げ 2

馬車に乗り、城へとついたころはすでに日が暮れていた。


キラキラと輝く広間に入ると、華やかな音楽に合わせてダンスを踊っているカップルを見てエレノアは目を輝かせる。


「いつ見ても、夜のパーティーは素敵ね」


着飾ったドレス姿の美しい女性達が右往左往しており、相手がいないのは自分だけではないのだと一安心をする。


「じゃ、私たちは挨拶周りをしてくるから何かあったら報告するのよ。あと変なことはしないでね。占いは禁止、王子にも接触禁止よ。あなた臭いから失礼があったら大変よ」


「はい。私は臭くないわ」


両親が去っていくのを見てエレノアは会場を見回した。


隣国の王子はどこに居るのだろうか。


ぱっと見、王子が居るような雰囲気は無くエレノアはフラフラと会場内を歩く。


ふと壁際に立っている騎士と目が合ってエレノアは目を細めた。


(どこかで会ったことがあるような気がするわ)


黒い騎士服に、黒い髪の毛は前髪だけ少し長い騎士の顔はかなり整っている。

真っ黒な彼の瞳も真っ黒だ。

身動き一つせず、警備をしている黒い騎士にエレノアは近づいて顔をじっと見つめた。


「仕事中なんだからあまり見るなよ。エレノア」


「えっ?誰でしたっけ?」


視線だけを動かしてエレノアを見ながら騎士が言った。

自分の名前を知っている上に、かなり親しい雰囲気を出してくるこの男性は誰だろうか。

一体どこで会ったかと記憶をさかのぼるより早く、騎士が口を開く。


「誰って……俺を忘れるとかいい加減にしてくれよ。アドルフだよ」


「えっ!アドルフってあのアドルフ?」


「俺を忘れているエレノアに逆に驚くんだが」


驚くエレノアにアドルフも眉間に皺を寄せて呟いた。


「だって、大きくなっているわ。アドルフってよく小さい頃遊んだあのアドルフよね」


「お前と遊んでいたのは俺以外居ないと思うけど。エレノアは変わらないな……っていうか今更俺に気づくとか……」


エレノアは絶句して目の前に立っているアドルフを見つめた。


(昔、遊んでいたアドルフよね……)


幼少期に毎日の様に遊んでいた男の子を思い出すが、小さくてかわいい顔をしていた気がするとアドルフの顔を見つめた。


昔から変わっていないのは髪の毛の色と、黒い瞳ぐらいで、背の高さはエレノアの頭一つ分大きく見上げるぐらい大きくなっている。

可愛らしかった顔も、面影すらなく可愛いと言うよりカッコよく変化している。

幼かったころの可愛さは無くなり、一人の男性として立っているアドルフを見上げてエレノアはため息をついた。


「可愛かったアドルフが居なくなって残念だわ」


「カッコよくなっただろう?」


自慢気に言われてエレノアは仕方なく頷く。


「そうね」


「嫌々頷くなよ」


顔をしかめたアドルフにエレノアは白い目を向けた。

キラキラした舞踏会と言う空間に騎士として立っているアドルフはとても素敵だ。

騎士と言ってもそうそうなれるものでもなく、城勤めといえばそれなりのエリートだ。


「だって、人生上手く行っていますって感じなんだもの。城の騎士をして、それだけ顔が良ければ人生困っていないわよね」


「へぇ……。そういうエレノアは人生困っているっていうの?」


からかうように言われてエレノアは口ごもった。


「そりゃ、ね」


「どうぜ、結婚相手が見つからないってことだろ」


「どうしてわかるの?」


驚くエレノアにアドルフは鼻で笑う。


「そりゃね。噂話は聞いているから」


「どんな噂よ」


エレノアが遠い目をしていると、後ろから低い声がアドルフを呼んだ。


「アドルフ。仕事中だぞ」


「申し訳ありません。オーランド隊長」


アドルフが慌てて敬礼をするのを見てエレノアは振り返った。


立っていたのはアドルフと同じ黒い隊服を着た大きな体をした騎士だ。

短い髪の毛に鋭い瞳をエレノアに向ける。

アドルフは美しさを持ったカッコよさだが、大きな男性は力強さを持ったカッコよさに見えてエレノアは感心する。


(城の騎士は顔がいい人が多いわね)


エレノアに見上げられて、男性は眉を上げる。


「あぁ、エレノア嬢か。夜会に来るなど珍しいな」


「なぜ、私をご存じで」


確かに夜会にはめったに顔を出さないことを知っているなど、どうしてかと驚くエレノアにオーランドは歯を見せて笑った。


「風の噂だな」


「あら、エレノア嬢。ごきげんよう」


オーランドの隣から可愛らしい声が聞こえてエレノアはゆっくりと視線を横に移す。

大きな体のオーランドに目が行っていて連れている女性に初めて気づいた。

胸元で綺麗にカールされた金色の髪の毛に、エメラルドグリーンの瞳、美しい顔をした女性にエレノアは慌てて頭を下げた。


夜会などほとんど参加をしないエレノアでも知っている、パトリシア姫だ。


「失礼いたしました。パトリシア姫」


頭を下げたエレノアにパトリシは上品に笑った。


「一度会ってみたかったのよ」


なぜ?と首を傾げたくなるが、エレノアは微笑んで軽く頭を下げた。




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