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短編集

一人ぼっちの少女が奴隷と出逢ったら


「お前、どういうつもりで俺を買ったんだ?」


 ノエルは奴隷の人にそう聞かれて、とても困ってしまった。

 だって買うつもりなんてなかったんだもん。





 ドリアル国の、ルアーンという場所は、とにかく田舎だ。

 開けた街もなく、旅行者も来ない。ほとんどの場所は高山で、恵みをもたらさない森も広がっている。

 畑を作っても土が悪くてうまく育たないので、ほとんどの人たちは酪農をして暮らしている。

 基本的にはヤギを飼育し、乳からチーズを作ってそれを遠くまで売りにいくのだ。


 ノエルは両親が崖から落ちていなくなってから、ずっと孤児だった。

 近所に住んでいた気難しいお爺さんに五歳の頃から育ててもらい、やっと十五歳になったからと思ったら、お爺さんも死んでしまった。

 「胸が痛いから医者に行ってくる」と言って、そのまま医者から帰ってこなかった。

 町の人たちで協力して葬式をして、土の中に埋められるおじいさんにさよならをした。


 そしてノエルは一人になってしまった。


 寂しさを感じながらノエルはお爺さんと一緒に作ったチーズを遠くの市へ売りに行った。

 お爺さんは「俺が死んだら、俺の財産のチーズは全部売っていいから、金を作ってこの家を出て行っていいからな」と言っていた。だからノエルは言われた通りにした。

 それからお爺さんは「一人でここから離れるときは男の格好をしていくんだぞ。お前みたいなのがフラフラしていたら、何が起こるかわからんからな。山の中に引き摺り込まれて酷いことをされるかもしれん。絶対気をつけるんだぞ、約束しろ」と言っていたので、ノエルは男の格好をした。

 髪は元々作業の邪魔になるので伸ばしていなかったが、少し襟足が伸びていた。でも髪を切ってくれていたお爺さんはもういないので、そのままにしておいた。

 それでも男には見えなかったので、できるだけ女だとわからないように顔に土を塗って、汚れた子供みたいにしていた。


 そしてチーズを売り払うと、見たことのないくらいのお金が手に入った。


 ノエルは来た道を帰りながら、これから一体どうしようと考えていた。

 行く宛はない。それでもお爺さんはノエルがあそこを出て行くことを望んでいた。「こんなところで、お前みたいな若いもんが一人で生活して行けると思うな」と言っていた。


 ヤギは全て山に放した。元々そこに暮らしていたヤギたちだ。すぐにどこかへ離れていった。ヤギは自分が行きたいところが、きちんとわかっているんだろうかと羨ましくなった。


 そんな思いに囚われながら道を行くと、汚い格好をした人たちが道端に並ばされて、一人だけ格好のいいおじさんがニヤニヤ顔で人々に声をかけていた。

 並ばされている人たちは、両手両足を緩めに縛られた上に、首に紐を巻かれていた。ノエルが一体何が行われているんだろうと、何か恐ろしいものを感じて隠れて見ていると、一人、また一人と人がいなくなっていく。

 格好のいいおじさんにお客がお金を払って一人二人と連れて行くのだ。

 

 “奴隷”


 ノエルの頭にお爺さんから聞いた単語が蘇った。

「金持ち風の奴らには近寄るな。お前みたいなのはな、捕まえてって、奴隷として売っちまおうと考えてるような奴らばかりだ」

 町に金持ちの貴族がやってきた時、お爺さんがそんなふうに言っていたことがある。「あの貴族は何しに来やがったんだかわからねぇが、絶対に近寄るんじゃないぞ。わかったな」と言われた。ノエルはウンと頷いた。


 あの人たちは奴隷として売られているんだ。

 ノエルは気づいて戦慄した。


 近づいたら私も奴隷として捕まえられるかも。


 そう思ったが、格好のいい男が、最後に残った奴隷を売り切ろうと大声を張り上げていた。

 しかしもう夕方で、人もまばらになってきた。

 声は聞こえているはずなのに、誰もあの男に近づこうとすることはない。


 男は売り損ねた奴隷に向かって怒鳴りつけて拳を振り上げていた。

 奴隷は少しも怯まずじっとしていた。


「私が買います!」


 ノエルは間一髪大声を振り上げて男の拳を止めた。

 そして走ってその場に行き、値段を聞いた。


 チーズを売った金額の中からたった数枚硬貨を取り出すだけでその売買は成立してしまった。


 安いチーズよりも安いなんて。


 ノエルは驚きを隠せなかった。

 そして男に、奴隷の首についた紐を持たされ、送り出された。


 少し歩いて、これからどうしたらいいか考えるが、考えがまとまらなかった。


「おい、どこに行くんだ。もう暗くなるぞ」


 奴隷から低い声が聞こえた。

 振り返ると、彼は黒い髪の隙間から片目でノエルを見下ろしていた。

 そこで初めてノエルはその奴隷を観察した。


 ボロボロの服に、伸びるがままに任せたような黒髪。それは顔の半分以上を覆っていて、その造形を隠している。後ろ髪は肩に触れるくらいの長さだ。

 身長はノエルより少し高い。ノエルは百六十センチくらいなので、彼は百七十行くか行かないかくらいだろう。声の感じからすると、若い。ノエルとどちらが若いかはわからなかった。

 ふと見ると、彼は両手両足が縛られたままだ。普通に歩いているので気づかなかった。歩けるように間の紐の長さが調節してあったようだ。


 ノエルは慌ててしゃがみ込んで足の紐を切ろうとした。


「お嬢ちゃん、奴隷が逃げたら困るから、縛ったままで帰りな」


 通りを歩いていた、いかにも親切そうなおじさんが困ったような笑顔でそうアドバイスしてくれた。

 ノエルはびっくりして振り返ると、何人もの人がこちらを見ていた。

 怖くなってそのまま立ち上がって「そうします、ありがとうございます」と答えてしまった。


 ノエルは道をそれて森の中に入った。それから人の視線がなくなったところでつい首の紐を引っ張ってしまっていた奴隷の人を振り返った。


「ご、ごめんなさい、引っ張ってしまって。わたし、沢山の人に見られて、驚いて……」

「別にいい」


 それからノエルは改めてしゃがみ込んで、彼の足のロープを切った。手のロープも、首のロープも。


「やめろって言われてたのに、なんで切った」


「い、痛いかと思って」


「そうか、逃げてもいいってことか?」


「そ、それは……はい」


 ノエルは、許可を取られる事に怯えた。何か間違ったことをしたかもしれないとビクビクしてしまう。

 男は顔にかかっていた前髪を手で払い、青い眼を露わにした。

 顔はノエルと似たようなもので煤で汚れていてわからない。


「怯えたうさぎみたいだな」


「うっ……すいません」


「いや、謝らなくていい」


 男はしげしげとノエルのことを観察していた。こうなってみると、ノエルより少し年上かもしれないと思えた。彼はひどくしっかりしている。


「お前、どういうつもりで俺を買ったんだ?」


「どうって、な、殴られそうだったから」


「奴隷が欲しかったわけじゃないのか?」


「はい……」


「ガキだな」


「じゅ、十五です」


「じゃあガキだな」



 うっとなってノエルはしょんぼりした。確かに顔に泥を塗って、汚れた子供みたいにしていた。だからって、十五歳を子供なんて。この国いいところの娘ならもう結婚している年齢なのに。


「お前、親は? いいのか奴隷なんかに小遣い使って」


「親はいません。十年前に死んで……」


「保護者は?」


「育ててくれたお爺さんは先日心臓発作で死にました」


「……そうか」


 突然ノエルは、お爺さんが死んでから、ずっと誰とも事務的な話以外していなかった事に気づいた。そしてそのことがとても悲しくなって、もう我慢できなくなってしまった。だからこの名前も知らない奴隷の人に自分の事情をすっかり話してしまうことにした。


「だから、お爺さんに言われた通り、全部のチーズを売って、旅に出ようかと思って、今日の市場で売ってきたところなんです。でも私、どこにも行くところがなくて。でもお爺さんは、あそこで一人で暮らすなって言ってて。でも、一人であそこを離れる時はいっぱい気をつけろって、変な人に捕まるかもしれないから男のふりをしろとか、金持ちに近づいたら奴隷として売られるから近づくなとか、だからわたしずっと頭がいっぱいで……」


 気づいたらノエルはポロポロ両目から涙を流していた。


「なるほどな」


 奴隷の人は、ゆっくり近づいてきたかと思ったらノエルの頭をポンポンと撫でていた。


「頑張ったな」


 ノエルはうっうっと声を漏らすことしかできなかった。

 一回溢れ出したらもう止まらなくて、奴隷の人の服の裾を掴んで泣きに泣いた。

 その間、その人は逃げもせず、ずっとそばにいてくれた。





 しばらくして気づくと、ホウホウという梟の鳴き声しか聞こえなくなっていた。

 上を向くと、まだきちんと奴隷の人はいて、そこに立っていた。


「お、やっと泣き終わったか?」


「はい……すいませんでした」


「大丈夫、大丈夫。別に俺にはやることなんてないしな」


「そういえば逃げるって……」


「いや、やめとく。お前も俺と同じ一人で、行く宛もないんだろ? じゃあ一緒にいてやる」


 ノエルは、知らない奴隷の人から言われたその言葉が、なぜかとても嬉しく感じた。

 一人にならなくていい、たったそれだけのことで、救われた気がした。

 一人になったことが、とても辛かったのだ。


「ありがとうございます」


「いや、俺をあの阿呆の奴隷商人から解放してくれたのはお前だ。しばらくお前の奴隷でいるよ」


「あ、あの……」


 ノエルは奴隷の人の服を握ったまま引っ張った。


「ん?」


「奴隷じゃなくて、と……友達に、なってもらえませんか」


 ノエルは俯いた。真っ暗でも自分の頬が真っ赤なことはその熱さでわかった。

 ノエルは友達がいたことがない。そもそも人の少ない町で、しかもほとんどの時間をお爺さんの家で過ごした。

 お爺さんには「儂はお前の友達にはなれん。俺のことは親だと思え」と言われてしまった。

 かつての失敗経験のせいで、とても緊張した。この人も「友達じゃなくて奴隷だ」と言うだろうか?


 少し待って、あまりの沈黙にノエルは恐る恐る顔を上げた。

 その途端に声が降ってくる。


「お前さ……ああ、まあいいや。なるよ、友達」


 そう言って彼は照れ臭そうに顔を背けた。

 ノエルはびっくりして声が出せなかったが、ハッとして彼の服をまた引っ張った。


「あの、名前、教えてください」


「俺の名前か、俺はシルバーだ」





 ノエルは人のいなくなった広場へ戻ると、噴水の水で顔を洗った。遅い時間になってしまったのでここで宿に泊まらないといけないと思ったからだ。夜中は特に後ろぐらそうな人間は止めてくれない。

 顔が綺麗になったら女だとバレてしまうかも知れないが、今は新しくできた友達がいるから、お爺さんの言いつけを破った事にはならない。


 ノエルはスッキリして、シルバーにも顔を洗うように勧めたが、彼はそれを拒否した。仕方なくできるだけ俯いていてもらう事にして、宿に入った。

 遅い時間だったので店主に睨まれたが、なんとか多めに払って部屋をもらった。二部屋取ろうと思ったが、シルバーに断られたのでツインにした。


 部屋に入ってクタクタになって座った。

 今日はチーズを初めて一人で売って、怖くて仕方なかった奴隷商人に話しかけて、初めて奴隷を買って、初めて友達ができた。

 誰にも拐われなかったし、危ない目にも合わなかったから、天国のお爺さんにも褒めてもらえる気がした。

 ぼーっとしながらベッドに横に倒れると、シルバーが「腹が減った」とつぶやいた。


 宿の下の食堂はもう終わってしまっていたので、ノエルは慌ててリュックから自分の食事用に用意していたパンとチーズを取り出した。

「これ、どうぞ」

「いいのか?」


「どうぞ」


 ノエルはそれだけ言ってまた自分のベッドに戻った。もう疲れ果てていてお腹も減らなかった。


 そしてぐっすり眠った。


 朝起きても、部屋の中にはシルバーがいた。

 友達になってよかったとノエルは思った。





「お前、警戒心なさすぎる」


「何が?」


 宿を出てしばらく行ったところで安い食堂に入って二人は食事していた。

 出費を抑えてスープとパンだけだが、シルバーも文句は言わなかった。


「女だろ、俺に襲われないかとか思わないのか?」


「友達なら襲わないよ。お爺さんが悪い奴には捕まるなって言ってたけど、シルバーは悪い人に捕まってた側だから、いい人側でしょ? だから大丈夫」


「……お前の話から、お爺さんって奴はめちゃくちゃうるせぇなと思ってたけど、気持ちがわかったわ。お前は阿呆だ」


 シルバーがスープをすくっていたスプーンでノエルをピッと指した。

 雫が飛んできて顔に当たったので、ノエルはそれを拭いながら顔をしかめた。


「えっシルバーのことを売ってた悪い奴隷商人さんと一緒ってこと?」


 ノエルの嫌そうな顔を見てシルバーは昨日あの男を阿呆と言ったことを思い出したようで、眉を寄せた。


「違う。あいつと一緒って意味じゃねぇ。俺が悪かった、お前は阿呆じゃない……大阿呆だ」

「それって悪い意味?」


「まあ、……そうなんだが、善悪の悪いじゃない。無知だって事だ。だから奴隷商人とは違う」

「そっか、じゃあいいや」


 シルバーは「いいのかよ」と言って片手で額を抑えると、頭痛に苦しんでいる人みたいに下を向いてしまった。


「シルバー、頭痛い? 蜂蜜頼む?」

「なんで蜂蜜?」

「お爺さんが具合の悪い時は蜂蜜をスプーンいっぱいくれてたの」


「……いいお爺さんだな」


「うん」

 ノエルは満面の笑みを返した。シルバーも仕方なさそうに笑った。


「爺さんもお前には敵わなかっただろうよ」


 お爺さんが「お前には敵わないよ」という時は、とても優しく頭をぽんぽん撫でてくれる時だった。

 そんな時、ノエルはとても愛情を感じて、嬉しかったのを思い出す。


「シルバーも私に敵わないと思う?」


 思わずノエルがそう聞くと、


「ああ、敵わないよ」とシルバーは笑って、わざわざ手を伸ばしてノエルの頭をポンポンしてくれた。


 お爺さんのことを知らないシルバーが同じことをしてくれたことに運命を感じた。

 ノエルはとても温かい気持ちになって、今日からはなんでもできそうな気がしてきた。

 





 二人は話し合って、結局お爺さんの家に帰る事にした。

 一人でこの家に住むなと言われていたが、二人なら住んでもいいと言うことだとシルバーが教えてくれた。


 そして両親とお爺さんのお墓に行って、初めて友達ができたことを報告してまわった。


 二人はヤギをまた捕まえ、乳を絞ってチーズを作った。

 シルバーは頭が良くてそれをすぐに覚えた。





「シルバーって、なんでもできるの?」


 屋根の修理が終わって梯子で降りてくるシルバーを見ながら、ノエルは感嘆の声を漏らした。

 シルバーは地面に降り立つと、額に流れていた汗を袖で拭った。


「いや、出来なくてもやらなきゃならないだろ。雨漏りしてんだから」


「絶対絶対落ちないでね」


「いや、もう終わったとこだよ」


 シルバーは自分が立っている地面を両の手のひらで示した。

 ノエルはその仕草に笑わず、拗ねたように頬を空気で膨らませた。


「次の時の話」

「わかったわかった」


 シルバーはニッと笑った。ノエルは、次の修理の時までシルバーがここにいるか確かめたいのだ。

 だからポンポンと頭を撫でて安心させてやる。

 そんな時、ノエルは何を考えているのか知らないが、細めた目をキラキラと輝かせて、頬が桃のようにピンクになる。

 それがまたシルバーには可愛かった。


「私に敵わない?」

「ああ、敵わないよ」


 これもまた定番だ。とても好きなやりとりのようで、ノエルは頭をポンポンされるとよくこれを言う。

 もしくはこれを言うと、期待した目で頭をシルバーに向けてくる。そうするとシルバーはいつも頭をポンポンしてやった。そうするとノエルがとても嬉しそうに頬をピンクにするからだ。


 そして出会ってすぐから、ノエルはシルバーの服を掴んで歩くのが癖になっていた。

 逃がさないようにしっかりと掴んでいるのかもしれないとシルバーは思っていたが、わざわざ聞くことはしなかった。


 もう愛しくて、離れる気はなかった。





 一年後のノエルが十六歳になった年、シルバーはプロポーズした。

 シルバーは十八歳で、ノエルは十六歳だった。


 二人は教会に行って結婚した。






 これまでずっと二人は別々のベッドで寝ていたのだが、今日からはベッドをくっつけて一緒に寝るのだとシルバーが言った。それからノエルを優しく撫で、やさしくキスをした。

 そして二人はゆっくりと時間をかけて一つになった。

 ベッドの上でのシルバーは性急さが一切なく、

 その全てがとても優しかった。



 シルバーはノエルの隣で静かに寝息を立てている。


 ノエルはその顔を至近距離で観察した。長いまつ毛、美しい眉、完璧な形の鼻。シルバーの顔は完璧に整っていた。

 最初にそのことを知った時、なんでこんなに美しい青年があんな道端で汚い奴隷として売られていたんだろうと思ったほどだった。

 シルバーは、小さな頃に奴隷に売られ、愛玩奴隷として扱われていたらしい。その後、体が大人になるにつれて性奴隷にさせられたのだという。そこでたくさんの性技を仕込まれ、いい加減うんざりして逃げ出したというわけだ。そして顔に煤を塗りたくって歩いているところを結局他の奴隷商人に拉致され、また売られていたのだと。その時、奴隷商人を損させたくて愛玩奴隷だったことがバレないように、頭の緩いふりをして、安く買い叩かれていたらしい。それをノエルが買い取ったのだ。


 シルバーを買ってよかった。


 ノエルとシルバーはあの最初の時から、奴隷と主人という関係ではなく、ずっと友達としてやって来た。二人は手を取り合って生活し、そして恋に落ちた。

 最初はシルバーがノエルのことを好きになったんだといった。ノエルだって好きだったのに、ずるいと言ったが、お前のは依存してただけだと鼻で笑われた。

 確かに、あの頃一人でいるのが怖かった。いや、今でもシルバーと離れたくない。ずっと、死ぬまで一緒にいたい。


 ノエルはそんなことを思いながらシルバーの前髪を撫でた。

 シルバーが目を開けてノエルを見た。

「ノエル、平気?」

「うん」


 ノエルは、目が覚めて一番に心配してくれるシルバーが嬉しくてにっこりと笑った。

 シルバーが笑ってノエルの髪を直した。

「気持ちよかった?」

「うん。すっごく。ノエルは?」

「俺も」

「うれしい」

「俺も」

 シルバーが手を伸ばしてノエルの頬を触り、またキスをした。自然と舌を絡めるキスになっていた。まったりとした緩慢な動きがすごく心地よい。ノエルは頭がぼーっとしてほわほわして、何も考えられない。ずっとこうしていたいと思ってしまう。

 でも結局顎がだるくなって途中でやめて、お互いに笑い合った。


「シルバー私たちずっと一緒だね」

「ああ、ずっと一緒。大好きだよノエル」

「私もだよ、シルバー」


 そして二人は心地よい眠りに落ちた。




 二人はしばらくして子供を授かった。

 それまでも、それからも、ずっと仲睦まじく幸せな家族として、ヤギチーズを作って末長く幸せに過ごした。

読んでいただいてありがとうございました。

お時間宜しかったら⭐︎評価していただけると嬉しいです。

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