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73.復讐を揺るがすゲーム

「そういうことだ。この化け物を殺すには、化け物の手を借りるしかないんでな。」


ランベリーと一定の距離を保ちつつ、グレコはコルワに笑いかける。

当のランベリーはというと、コルワが抱えた二つの死体を見つめ硬直していた。

この戦いを行う時点で、アイラとライラが参戦してくることは彼にも分かっていたはずだ。

だが実際に死体を見てみると違う感情が湧いてくるのだろう。

グレコはそう想像し、死体を眺めた。


顔面が完全に潰れたアイラと、安らかに眠るライラ。


グレコからしてみれば、何一つ驚く点はない。


「う〜んどうしよっかなぁ♪この二人は退屈だったからなぁ……。グレコがその分楽しませてくれるなら全然ありだね!」

「これまでのことを考えてみろ。俺がお前を楽しませなかったことなんて一度もないだろ。そこに関しては保証してやるよ。」


体をくねらせ可愛子ぶるコルワ。

はっきり言って、この魔族に主導権を握られるのは癪だ。

だがそうするしかない。

それが現状のベストである。


戦争までの一ヶ月間。

グレコはランベリーを殺す策をひたすらに考えていた。

寝首をかいたり毒を仕込んだり。

ありとあらゆる作戦を検討したが、どれも効果があると思えなかったのだ。


【無視】がある以上ランベリーに力で勝つのは不可能。

騙し討ちを仕掛けても、確実に一撃で殺さなければダメージを【無視】されて反撃される。

グレコの復讐を果たすには、コルワとの契約は必須。

それがグレコの結論である。


しかし、手段を選ばないのはグレコだけではない。


「コルワ、契約するなら俺としろ。勝ち馬に乗るという話なら、絶対に俺だぞ。」


グレコと共にコルワを見つめるランベリー。

この男にはもう、節操というものが存在しない。


「えー?グレコはまだ分かるけど、ランちゃんはなぁ。テネトちゃんとの契約で十分強化されてると思うんだけど。カッシルちゃんがいるならともかく、もうこの子動けなそうだし。」


コルワのいうことは間違いない。

カッシルがいなくなった今、ランベリーはグレコを瞬殺できる。

グレコとコルワの契約が成立すれば話は変わるが、守りの術も攻撃の術も持たないグレコなど蟻以下だ。


「グレコに強くなられちゃ困る、なんて理由なら面白くないよねぇ。何度も言うようだけど、僕は面白い人の味方だからね?」

「勿論それもあるが、それだけじゃない。せっかくグレコを殺すなら完膚なきまでに叩きのめす。それが最善だとは思わないか。」

「うーん中々に邪悪な回答だね♪確かに僕と契約すればランちゃんは名実ともに世界最強だからねぇ……。」


グレコとランベリー。

両者から契約を求められ、コルワの顔がどんどんとニヤついていく。

コルワからすれば楽しくて仕方ない状況。

人間の醜さが詰まったような空間の中で次に響いたのは、コルワの手拍子だった。


「よーし!じゃあまずゲームをしようよ!どうせ僕が味方についた方が勝つんでしょ?」

「実にお前らしい提案だな。俺としては大歓迎だ。カッシルがぶっ倒れた以上、俺はお前の靴でも何でも舐める所存だからな。」

「いい心がけだね!じゃあ僕をより面白い方法で殺した方が勝ちね!さっ!どうぞどうぞ!」


そう言ってコルワが飛び上がる。

これが最終決戦だというのに一体何をやっているのだろうか。

グレコはそう感じながらも、剣を握る。

完全にコルワに弄ばれているような気がしないでもないが、こういうゲームであればグレコが圧倒的に有利だ。


「おいランベリー。せっかくだからお前から挑戦させてやるよ。一人ずつ挑まないとわかりにくいだろ。」

「そう言われずともそのつもりだ。」


それだけ告げてランベリーが走り始める。

そのまま軽く飛び上がり、コルワの胸元を掴み。

あの細い体を空に向かって放り投げた。


「俺の【無視】は重さを軽くすることも出来るし重たくすることも出来る。重さや、重力、空気抵抗に速度。ありとあらゆる物を【無視】すれば、こんなことも可能だ。」


空に向かって超高速で飛んでいくコルワ。

最早視認できる速度でその場からいなくなったコルワは、ものの数十秒の内に帰還した。

帰還、といってもコルワの姿は全くなく、ただごく小さなサイズの肉片が返ってきたのみ。

その肉片をしばし眺めていると、コルワはゆっくりと体を再生し始めた。


「ははは!凄い凄い!僕宇宙まで行ったのは初めてだよ!この星凄い青いんだね!」

「数十秒の間の宇宙旅行だ。こんな死に方をした奴は多分世界でお前だけだぞ。」


首だけの状態でコルワが高笑いをする。

大気圏での焼死。

確かに面白いといえば面白い殺し方である。


「いや〜アイラちゃんが最初からこれぐらい出来てたら死なずに済んだろうになぁ。中途半端に殺しちゃったせいで僕の復活速度は元に戻っちゃったよ。う〜んやっと全身僕の体に戻った!気分がいいねぇ!」


先ほどまでのコルワは何か別のものと一体化していたのか、ごく僅かではあるが歪な体をしていた。

しかし細胞レベルで燃焼されたことで、その部分も焼却。

元の綺麗な肌と四肢を取り戻し、コルワが再び二本足で立ち上がる。


「じゃ、次はグレコかな♪これを超えるとなると中々難しいよぉ〜!」

「はっ、俺を見くびるな。こちとら普段から人を殺す方法しか考えてないんだ。宇宙空間に連れて行った程度じゃ、俺を越えられない。」


グレコはそう言ってコルワに近づく。

ランベリーにアイラ、ライラ。

相手を殺す作戦を考える上で、没となった殺し方。

グレコの頭の中にはそうしたものが山のようにあった。


「コルワ、口を開けろ。」

「ん?グレコがあーんしてくれるなんて光栄だね!それだけで5点ぐらいはあげられるよ!」


戯言をいうコルワを無視し、グレコは服に隠していた瓶を取り出した。

瓶の中にいる一匹の虫。

そのままそれをコルワの口元にねじ込み、その場に腰を据える。


「これからその虫がお前体の中を這い回る。俺はそいつを操作してお前の内臓に噛み付かせていく。内臓全部をズタズタに食い破られたくなかったら、さっさと消化することだな。」

「へぇ〜!面白いゲームだねっ……!」

「まずは喉だ。その虫は魔物の仲間で凄まじく噛む力が強い。精々頑張ることだな。」


そう話している間も、コルワの表情はどんどんと青ざめていく。

サイラス魔導研究所にいた際に発見した魔物。

いつか使えると思って取っていたが役に立つタイミングが来たようだ。

このサイズの虫を無抵抗で口の中に入れてくれる奴など、コルワ以外存在しない。


「そろそろ胃の辺りだろ。あの辺りは臓器が多いからな。ほら、さっさと消化しろ。」


そんなこと言われても……!

コルワにまともな声帯が残っていればそう言っていそうな表情。

呼吸は乱れ、口からは血が流れ。

コルワは普段から死にまくっているせいで痛みをほとんど感じないらしいが、内臓にダメージを負った事はあまりなかったらしい。

想像以上の激痛を感じたらしく、コルワはグレコから剣を奪って己の腹を切り開き始めた。


「お、なんだもう限界か。思ったより我慢が効かなかったらしいな。」

「ぷっはー!!無理無理無理!信じられないぐらい痛いし気持ち悪いよ!お腹掻っ捌く方がずっと楽!」


腹部の切断面から内臓を引っ張り出し、無理矢理虫を体外に排出したコルワ。

外傷は一切ないというのに内臓はズタボロ。

実に珍しい負傷の仕方をし、コルワは息を荒げながら再生していった。


「ダメージではランベリーに劣るが、新鮮な殺し方って面では俺の勝ちだろ。」

「不快さって面でもね……。片や宇宙旅行、片や一寸法師って、ほんと殺し方にも性格が現れるよね。」

「お前はこういう悪どい殺し方の方が面白いかと思ってな。お前は俺と同じ性悪な人間だろ?」

「大正解。最高の気分だったよ……。」


未だに内臓を這い回られた不快感が残っているらしく、コルワはしきりに唾を吐く。

命運を賭けたゲームは終わり。

コルワはゆっくりと評価を下し始める。


「うーんどうしようかなぁ。どっちも面白かったし悩むところだ……。」


頭を抱え始めるコルワ。

グレコとランベリーは、その様子を固唾を飲んで見守っていた。


「よし!じゃあ二人とも目を閉じて?僕がいいと思った方の首元を噛むからさ!」


そう言ってコルワが近づいてくる。

グレコが大人しく目を閉じようとした最中、ランベリーの所作に気づく。

剣を握り、殺気を放つランベリー。

契約者として選ばれればそれでよし、選ばれなければ即座に剣を振り全てを壊す。

相変わらず抜かりのない男だ。

だがしかし、契約成立の是非に興味がないのは、グレコも同じだった。


「じゃ、いただきまーす!」


その声が響き、グレコはゆっくりと笑う。

そしてその横で、血が流れていく。


「やっぱりさ、僕はグレコが死ぬところの方が見たいんだよね♪」

「はっ、中々人望がないらしいな。俺という男は。」


目を開いた先で、ニヤつくコルワ。

そして首元から血を流し、剣を構えるランベリー。

迫り来る敗北。

しかしグレコには、それすらも計算内であった。

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