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58.舞い戻った者達

「ほれほれ!さっさと妾の元に跪くがよい!」


あれから数日。

ランベリーとテネトは魔王の城へと拠点を移していた。

見るからに怪しい雰囲気の大広間。

そこに集まった大量の魔族や魔物。

そしてその前では、テネトがふんぞり帰っていた。


「よしよし。可愛いのぉ!ほれ、貴様にも妾が力を与えてやるからなぁ……!」

「遊んでないでさっさと仕事を済ませろ。俺達には時間がないんだ。」


魔物の頭をテネトが撫で、そのまま首を噛む。

魔王と連携してグレコを殺す。

その目的のため、ランベリー達は活動し始めていた。


「あのなぁ、そもそも妾のような魔族が魔物と契約するなんて滅多にないことなんじゃからな。少しは趣というものを理解せぇ。」

「そんなものは知らない。お前からすれば魔物は子供のように思えていても、俺からすればただの兵器だ。」


グレコを殺すにあたって、何よりも必要なのは戦力だ。

グレコ自身の戦闘力は恐るるに足らないが、奴には【掌握】がある。

現状サイラスがどうなっているかはわからないが、グレコが所属していたバルトラが奴の支配下に下っている可能性は十分にある。

それを考慮すれば、こちらも相応の戦力を持っておかねば。


その考えの元、ランベリーはテネトに配下の魔物を強化することを指示した。

そもそも軍隊としての統率が薄い魔族達は、通常配下の魔物に契約は施さない。

だが今回は別だ。

使えるものは全て利用しなければグレコには勝てない。

その共通認識の元、今回の集会が実行された。


「契約と言ってもこやつらは頭が悪いからな。お主のように大幅な強化は出来ん。基礎的な戦闘能力の強化が限界じゃな。」

「死んだ後お前のスキルで操れるようにもしておけ。考えることができなくても暴れて貰えばどうにかなる。」

「良いのか?多分そうするとこやつら死後は無差別に人を襲うぞ。一体二体ならともかく、大量の死体を【死霊】で動かすと詳細な操作は出来んからな。」

「その時は俺が殺すから気にするな。」


指示を聞いてテネトが魔物の首を絞める。


【死霊】


テネトの持つこのスキルは、単に屍を動かすスキルではない。

例え相手が生きている場合でも、事前に首を絞めてスキルを付与しておけば、死後その体を操ることが出来る。

この工程を事前に踏んでおくことで、ただでさえ強力になった魔物達が死後も戦えるようになるのだ。


「で、此奴らを使ってどうするつもりなんじゃ。正面突破でグレコに向かって言っても話は混乱するだけじゃろうて。お主は良くとも妾達は魔族じゃからな。」

「勿論そんなバカなことをするつもりはない。サイラスにまだ俺の仲間が二人残っているはずだ。お前とのことは隠しつつ、まずは二人と合流する。」


グレコと戦うにあたって、何も仲間がテネトしかいないわけではない。

騎士団の詰所でコルワと出会って以降、国の状況は詳しく知らないがまだアイラとライラは生きているはずだ。

あの二人と連携し、人類と魔族双方の戦力を結集する。

まずはそこからだろう。


「お主の仲間達と合流するのはいいが、妾は何をしとこうかのぉ。この魔物達の取り扱いも考えといて欲しいんじゃが。」

「そいつらはサイラス周辺の平原に展開させておけ。アイラとライラがいる限りお前らが暴れたところで大した被害は出ない。それにグレコがバルトラを奪ってる場合はあいつも前線にいるはずだ。運が良ければ魔物でグレコを殺せる。」


そう言いながらランベリーは身支度を始める。

ここしばらく、ランベリーはあまりに自由な行動を取りすぎた。

まずは現在のグレコの状況を把握し、的確に対処する。

ランベリーはグレコと違って圧倒的な武力を持っている。

細々とした策を立てずとも、ただひたすらに剣を振るえばグレコを殺すことなど一瞬だ。


「グレコがこれ以上人を傷つける前に、さっさとケリを付けるぞ。俺には、あいつを殺す義務がある。」

「そうは言うがしばし待った方が良いぞ。お主は妾との契約で力を強くしたばかりじゃ。まずは力に慣れるところから始めよ。事を急くと体が壊れるぞ。」


テネトの言う通り、ランベリーは己の力が変化していることに気づいていた。

本来であれば【無視】は任意でしか発動できないはずだ。

だが、ここ数日の間【無視】が勝手に作動する場合がある。

この状態でグレコと戦っても、不慮の事故で部外者を傷つけたり敗北を喫したりしかねない。

しばらくは新たな力に慣れるところから始めなくては。


「仕方がないか……。だがまったりしてられないことは事実だ。多少力が暴走しようとすぐに制御してみせる。」

「大した自信じゃのう。全く、グレコにどんどんと似ていっておらんか?お主。」

「あいつと俺を一緒にするな。あいつは俺の友であり、敵だ。」


ランベリーはそう言って唇を噛み締める。

こうして、勇者、魔王、そしてその配下にいる有象無象の魔物達が、グレコ討伐に向けて動き始めたのであった。




「一体……何がどうなってるんだ。」


サイラスへと戻ってきたランベリーの目に飛び込んできたのは、驚きの光景だった。

かつて拠点としていたサイラス城に集う大量の民衆。

そしてその中心で必死に弁を振るうアイラ。

長い間国を開けていたとは言え、あまりに状況が変化しすぎている。


「これ、勇者よ。こちらから一つ謝罪がある。よく聞け。サイラスの付近におった魔物達が民を襲ったらしい。」

「民を?魔物の展開は平原までと言ったはずだろ。何で民が犠牲になるんだ!」

「妾達だって民を狙っておったわけではない!コルワが平原を走り回っておったからそっちを狙っておったんじゃ。そうしたら何故だから知らんが大量の民達が街の外に走ってきた。配下とはいえ魔物は所詮野生動物。目の前に人が現れれば殺してしまう。」

「くっ……。民の避難が終わるまで一旦魔物を下げろ。その後もう一度平原に展開するんだ。明らかに今グレコが何かしらの行動を起こしている。あいつを国から逃すな。」


通信魔法で話しかけてきたテネト。

その報告の内容は耳を塞ぎたくなるようなものだが、テネトにも悪気があるわけではないだろう。

元より魔王と手を組んだ時点で多少の犠牲は仕方がないと思っている。

今対処するべきは目の前の騒動を収めることだ。

安定を絵に描いたようなサイラス国で、これほどのクーデターが自然に発生する訳がない。

この騒動の背後には、必ずグレコが存在する。


「奴はまだこの国にいるはずだ……。」


ランベリーは高く飛び上がり、辺りを見渡す。

視野、距離、処理能力。

自分の体の限界を全て【無視】し、国家全体を見通す。


複数要素の同時並行【無視】


契約によってこの力を手にしたランベリーは最早戦闘能力だけの男ではない。

索敵も、防御も、勿論攻撃も。

全てを一人でこなしてこそ、真の強者というものだ。


「居た。」


街の外れ、小高い丘の上に立つグレコ。

誰かと交戦中のようだが、関係はない。

いち早く、奴を殺さねば。




「久しぶりだな、グレコ。」


地面に降り立ち、因縁の男と顔を合わせる。

既に体は血だらけ。

どうやら相当激しい戦いを終えた後らしい。

だが、ここで手加減をするほどランベリーは甘くない。


「逃すか。」


グレコが撤退しようとしたのを感知し剣を振るう。


「くっ……。加減が……!」


やはりテネトとの契約で強化されたスキルは未だ使い慣れない。

目の前にいるグレコの足を切ろうとしたつもりが、見える範囲全てを破壊してしまった。

明らかなオーバーパワー。

だが、ここで剣を止めるわけにもいかない。

すかさず通信魔法で遠くにいるテネトに語りかける。


「聞こえるかテネト!俺はここでしばらく暴れる!お前はグレコを絶対に国外に出すな!」

「それは構わんが、良いのか?サイラスはお主にとっても大事な国じゃろうて。」

「人は殺さないように努力する。」


一太刀目を放った時点で既に一人の男を切り捨ててしまった。

だがランベリーの所感ではこの男は並の人間ではない。

腹を真っ二つにしてもまだ息をしている辺り、サイラスの魔導技術によって強化された人間なのだろう。

上手く手加減をし、被害を最低限に。

中と外からグレコを挟み込む。

それが現状の最善策だ。


そう判断して剣を振るっていると、見慣れた顔が目の前に降ってきた。


「はっろ〜♪ランちゃ〜ん!」

「コルワ……!」


つい先日までグレコの味方だとしか思っていなかった相手。

長い間旅を共にした仲間の一人。

そして世界最大の裏切り者。


先代魔王、コルワ。


男でも女でもない、ただの化け物が眼前に立っていた。

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