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48.勇者と魔王と策士達

「グレコグレコ!見て見て本場のメイドさーん♪」


メイド服に身を包んだコルワが目の前で回る。

こいつのこの動きももう見慣れてきたが、背景が背景だけに新鮮だ。

無駄に大きく豪華絢爛な扉。

奈落のボロ宿とは大違いだ。


グレコ達は今、サイラス王城へと住処を移している。


「お前な。俺達の仕事はメイドでも使用人でもなくボディーガードだ。そんな戦いにくそうな格好でいるんじゃねぇ。」

「えー戦う方はグレコとロッツがやってくれるから大丈夫でしょ♪ねー、ロッツ〜?」

「黙れ、この変態が。お前に関してはフーネ様の慈悲でここに呼ばれているのだ。身を粉にして働け。」


どことなくグレコと雰囲気が似ているロッツがコルワの頭を叩く。


アンソムによる革命の後、グレコ達はフーネのボディーガードとして徴用された。

官職でこそないが、フーネと行動を共にすることが職務。

それはすなわち国内の重要会議にも参加できることを意味しており、グレコとしては百二十点の成果である。


不満点があるとすれば、ロッツと同じ職であるためこの男がいついかなる時も一緒にいることだろうか。


「それで、俺のご主人様は今日何をする予定なんだ。いつまで経っても起きてくる気配がないが。」

「今日はアンソムの一件の報告会が行われる予定だ。フーネ様とアイラ様が会談するだけだが、警戒は怠るな。」

「もしかしてそこで僕らへの報酬も話してもらえる!?出世はしたけどまだ何ももらってないんだよね!お金、お金が欲しいな僕は!」


フーネの私室の前だというのに、コルワが体面を気にせず踊り狂う。


あの件以降、アイラやライラが慌ただしくしていたことはグレコも知っている。

あれだけの規模でクーデターが発生し、そのリーダーがサイラスの超重要人物だったのだからそれも当然だろう。

王女として彼女達は情報を掴む義務がある。


そして、あのオーク達の件も重要な問題だ。

当代魔王の復活。

そっちの話もまだ終わっていない。


「ふわぁ。おはよう、ロッツ。グレコちゃんにコルワちゃん。元気ー?」

「元気元気ー!いぇーい!」


ようやく起きてきたフーネとコルワがハイタッチを交わす。

本当にこれが一国の王女なのかという思いだが、この女もそれなりに賢いことは分かっている。


グレコをボディーガードに置いたこと。

これは国防の観点から見てかなりの良案だ。


グレコはスキル等の関係上、戦闘にめっぽう弱い。

故にボディーガードとして王女の横に付けておいても、絶対に不意を突いて暗殺するようなことはやってこない。

それにもしやって来たとしてもロッツが対応できる。


加えて昼夜問わずフーネを守るという仕事である以上、アンソムを洗脳した時のようにグレコが暗躍する時間も合法的に奪える。

間違いなくサイラス王国を壊そうとしているが、絶対に尻尾を出さないグレコ。

それを監視するにはこれ以上ない職である。


どうせ裏で暗躍されるのだから、表に出しておけ。


それがサイラス王家のグレコに対する基本方針だ。




「アンソムが事件を起こす少し前、彼の屋敷の使用人が二人死んでるわ。サイラス騎士団の話だと事故死ってことだけど、多分アンソムが洗脳されたのはこの時。」


会議が始まり、アイラが淡々と事後調査の結果を報告する。

さも「お前がやったんだろ」という視線をグレコに向けているが、そんなことは関係がない。

確定的な証拠が出ない以上、グレコを大罪人として処刑することはできないのだ。


何よりそんなことをしようとすれば、グレコは世間的にかなり恐れられる。

そうなった場合グレコは処刑人なり何なりを【掌握】で操作するだけでいくらでも暴れられる。

国家から大罪人と認められたグレコは、正真正銘手のつけられない化け物になってしまうのだ。


事実上、グレコを処刑するということは不可能に近い。


「他に洗脳されていそうな役人はいなかった?術師が誰かは知らないけど、アンソムに直接会うところまでいったんだもの。多分この国のかなり内部にいるんでしょう?」

「洗脳……とまではいかないでしょうけど、ワジルが密かに革命を計画していたことは分かったわ。まぁあいつは昔からお母様のことが嫌いだし、いい加減追放する時が来たってことでしょう。」

「そうねぇ。優秀ではあるんだけど……。まぁケイン派だったアンソムが革命を起こしたんだもの、昔からの家臣は排除しても怒られないでしょう。」


フーネ、アイラ親子が早々と話し合いを済ませていく。

やはりワジルも似たようなことを考えていたのか。

グレコが薄ら笑いを浮かべていると、アイラが話を変える。


「それともう一つ、アンソムの件とは完全に別でお母様に報告があるわ。」

「報告?」

「えぇ、私達が倒した当代魔王の復活についてよ。」


そう言ってアイラが魔王復活についての話をしていく。

内容としてはグレコが知っているものと全く同じ。

だが、たったそれだけの情報でもフーネを驚かせるには十分だった。


「当代魔王ねぇ……。私は先代にすら詳しくないからわからないけれど、実際に討伐した人達としてはどうなの?仕留め損なっただとか、そういう話は。」

「ある訳がないわ。確かに少し歯応えがない感じはしたけれど、それは多分奴のスキルが死者蘇生に関するもので戦闘力が低かったから。ちゃんと私の魔法で粉々にして、封印まで施したはずよ。ねぇ、グレコ。」

「あぁ、それに関しては保証出来る。俺達はあの魔王を手順通り撃破した。あいつが復活することは絶対にない。あるのは数十年後に控えてる次代魔王の出現だけのはずだ。」


グレコは魔王討伐において一切手を抜いていない。

元々グレコが勇者パーティにいたのは自分の地位を高めて【掌握】の力を強めるためだ。

魔王を討伐すればその目標は限りなく達成される。

その前提がある以上、グレコは己の持てる力の全てを使って魔王を叩き潰した。


「じゃあその封印ってのを解かれたのかねぇ。というかそもそも封印って何なんだい?」

「魔王ぐらい強力な魔物は無条件で再生能力を持ってるんだよ♪それを封じるのが封印。特殊な術式で死にかけの魔王を閉じ込めておくことで、徐々に徐々に魔王の命を奪う。数十年後に次代魔王が生まれるってのも前の魔王が死ぬのにそれだけかかるからってことだよ!」

「よく知ってるわねコルワ……。そんなこと一部の研究者しか知らないっていうのに。この馬鹿のいう通り、封印が解ければ魔王が復活する可能性はあるわ。けど解除なんて……。やり方は私しか知らないはずよ。知ってたとしてもかなりの魔力を必要とするから並の人間には出来ないはず。」


アイラが自信を持って言い放つ。

その時点で、グレコには一つの想像が思い浮かんでいた。


「いるじゃないか。お前が術をかけるのを間近でみていて、無尽蔵の魔力を持ってる人間が。今は行方不明なんだったか?」

「行方不明って……もしかしてランベリー!?た、確かにあいつなら出来るでしょうけど、何でそんなことをするのよ!」

「知るかよあいつの思惑なんて。だが今状況的に一番怪しいのはあいつだろうが。ライラの占星術であいつの様子は確認できないのか?」

「それは……ライラが言うには【無視】で占星術による監視を無効化してるって話だったわ。け、けど……!」


仲間に降りかかった嫌疑を払拭しようと、アイラが反論を考える。

グレコとしても、「魔王復活の犯人がランベリー」というのは嫌な想像だ。

アイラ、ライラという前菜に復讐をした後は、ランベリーをメインディッシュにするつもりだった。

その男が魔王を復活させたとなれば、復讐の難易度が跳ね上がる。

ただでさえ【無視】という世界一厄介なスキルを持っていると言うのに、その男が魔王の力まで得てしまっては。


どうにもならない。


それがグレコの本音だ。


「何だか話がややこしくなってきたけれど。うちの国がやることは何よりも国防ね。内部の革命犯にしても外部の魔王にしても守りを固めないことには始まらないわ。私は内政を整える。アイラちゃんは勇者と魔王の情報を集めなさい。」

「分かったわ。この国の為だもの。この身を賭して働いてあげるわよ。」


才女達が手早く指示を出し、会議が終わっていく。

相変わらず仕事の早いことだが、それはグレコにしても変わらない。

サイラス王国のことを知り尽くし、国家の中枢に入ることもできた。

そろそろ行動に移る時期である。


「さて、俺達も仕事するか。」


小さく呟き、グレコは伸びをする。

さぁ、二つ目の復讐を始めよう。

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