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27.嘘も方便

「ばーん!コルワちゃんさっんじょー!」


カッシルと協力関係を結んだところで、コルワが扉を開けて入ってくる。

すぐ隣で戦っていたとは言ってもこの広い砦の中だ。

ましてグレコは目の前の少女との交渉に注力していた。

コルワの方がどうなったかの知りもしない。


「あれれ〜?何さ仲良く握手なんかしちゃって。もしかしてその子もセドナちゃんみたく洗脳したの?」

「巫女のコルワ!?お前も侵入していたのか!」

「そうだよ〜♪いや〜僕って有名人なんだねぇ。どうする?僕も握手してあげようか?」


いつもの調子でふざけるコルワと、警戒し剣を握るカッシル。

ダード達にこの協力関係を知られるわけにはいかないが、コルワは別だ。

こいつの頭には正義や道徳といったものは刻まれていない。

バルトラを裏切ってカッシルと手を組むなど、コルワなら逆に喜びそうな話である。


「落ち着けカッシル、こいつは多分味方だ。コルワ、俺とこいつはたった今味方になった。俺達は今からサイラス騎士団側のスパイとなってバルトラを潰すために行動する。」

「ほう、それはそれは……。相変わらず面白いことしてくれるねぇ!」


思った通りコルワが大層楽しそうに笑う。

カッシルの方は相変わらず警戒心MAXといった様子だが、まぁそれは仕方ないだろう。

表面を取り繕ったグレコならともかく、常時トチ狂ったコルワなど信じるに値しない。

これ以上の説明をしてやるより、今はコルワに聞くべきことがある。


「で、そっちはどうなったんだ。俺達は今から色々と取り繕ろう必要がある。ランベリーがまだ居るなら大分面倒だ。」

「ふふーん♪無事退却させたよー!まぁ相手が僕だからね!僕に勝てる相手なんてこの世に存在しないのさ!」


まぁコルワがここにやってきたことと、血塗れの体からしてそんな気はしていた。

コルワの言うことが100%正しいかと言われたらそうではないだろうが、少なくともここにランベリーはいない。

あの男が居たらこちらの策略などガン無視でグレコを殺しに来るだろう。

グレコが一安心したところで、今度はコルワが質問を投げかけてくる。


「裏切るって話はわかったし細かい理由とかはどうでもいいんだけどさ。こっからどうするの?僕らの作戦ってサイラス騎士団の壊滅でしょ?騎士団長を生かしたまま帰ってきた、って言ってもヴィトは許してくれないんじゃない?」

「それはそうなんだよな……。カッシル、お前俺らがバルトラの情報を収集するまで死んだことにならないか?」

「なっ……!無理に決まっているだろ!私は騎士団長だぞ、王家に顔を見せる機会も多いし一瞬でバレる。第一私が死んでも別のラストア辺りが騎士団長になるだけだぞ。」


そのラストアが死んでいる可能性もあるのだが、まぁそれはそれだ。

コルワをカッシルの代わりにぶち殺し、その死体を再生させずにカッシルの遺体ということにしようかと思ったが、どうやら難しいらしい。

まぁ確かにカッシル一人死んだことになっても、騎士団の戦力壊滅ということにはならない。

成果としては不十分、そうヴィトに判断されてもおかしくはないだろう。

それにその方式だと、騎士団側に説明がつかない。

グレコは一旦現在の情報を纏め、意見を募る。


「ヴィトはサイラス騎士団を叩きのめすこと自体を目的にしていたわけじゃない。要は奈落を、バルトラを襲われなければいいんだ。絶対にこっちを襲ってこない、その証拠さえあればいい。」

「それならサイラス騎士団は他の任務で忙しいということにしたらどうだ。私達だって暇じゃない、火急を要する任務があれば奈落の襲撃は後回しになる。そうすればそっちの上司もうまく説得できるんじゃないか。」


なるほど、カッシルの提案は最もだ。

その策ならば奈落も守られるし、グレコがカッシルの首を取ってこなかったことにも説明がつく。

話を掻き乱すだけのコルワとは違って、カッシルは少しばかり頭も回るようだ。


「よし、じゃあそれを採用しよう。騎士団側には『グレコが市井に逃走した、戦闘を辞めて追いかけろ。』と伝え、バルトラ側に『俺とカッシルは互いに拮抗していたところ、騎士団に変異種の魔物が発生したとの通報が入った。そのため俺達は取引をし、一時的な不干渉同盟を結んだ。しばらく奈落には攻めてこない。』と伝えることにする。」

「うーん、多少無理がある気もするけどこの難しい状況に辻褄を合わせるにはそれしか無さそうだね。よっし、そうと決まれば!」


コルワの良いところは理解力があるところだ。

自発的に動くことはしないが、人に指示されれば二つ返事で動き始める。

コルワは意気揚々と部屋を飛び出して行った。

グレコとカッシルもそれに続き、玄関付近にいるダードと騎士達に会いにいく。


「作戦の都合上、カッシルが先に騎士を動かしに行ってくれ。俺の仲間が暴れる可能性があるから気を付けろ。後高確率でラストアが死んでるか死にかけてるかしているからそれも任せた。」

「ラストアが!?貴様ら一体どんな化け物を連れてきたんだ……。」

「そう怒るな、俺だってあの化け物はいずれ倒したいんだ。あくまで今仲間なだけ、実際のところは俺達の共通の敵ということになる。」


カッシルにさりげなく面倒事を押し付けたが、やはり不満げな表情をされた。


ダード・ラッツェル


グレコが騎士団もといカッシルと手を組もうとしたのは、この男の存在が大きい。

バルトラと戦争をすることになった場合コルワやセドナはほぼ間違いなくグレコ側につくだろうが、ダードは絶対にヴィトの味方をする。

そうなると、あれだけ時間をかけて手を触れることしか出来なかった老人を殺さねばならない。

その為の戦力として、カッシルは非常に有用だ。




「逃がすな!騎士団の威信をかけてこいつらを捕らえろ!」

「捕まるわけないだろ!」


入り口付近に着いた途端、セドナと騎士が戦う声が耳に入ってきた。

カッシルより先に彼らに見つかるわけにはいかない。

グレコは身を隠し、様子を伺う。

セドナの戦闘経験が浅いのもあって地面に倒れている騎士達は血を流しているだけで死んではいない。

ダードの方ががここにいないことを見るとラストアと対面しているのだろう。

思ったよりサイラス騎士団に被害は出ていないようで一安心である。

カッシルに見限られないためというのもそうだが、後から彼らと協力してバルトラを攻撃する際のことを考えても、サイラス騎士団の面々にはできる限り死んでほしくない。


「総員戦闘を止めろ!そいつらは本命ではない!例のグレコが街に逃亡した、さっさと追うぞ!」

「団長!?し、しかしここの被害も甚大です!ラストア殿も謎の老人と戦闘しに行って帰ってきません!」

「そんなものは後だ!我々が最も守るべきものはなんだ!仲間でも上司でもない、民の命だろう!ラストアがくたばっているならさっさと回収に行け!」


カッシルが堂々と叫び、騎士達が一斉に動き始める。

こうしたリーダーシップが彼女を騎士団長まで引き上げたのだろう。

感心している内に部屋から兵士達が居なくなり、グレコ達はセドナに会いにいく。


「はろはろ〜セドナちゃーん♪今日のお仕事は終わりにしてお家に帰るよ〜!」

「コルワにご主人!?作戦はどうなったんだ、今の女団長って呼ばれていたけれど……。」

「まぁ色々と事情があるんだ。それよりダードはどこに行ったんだ。」

「お呼びですかな、グレコ様。」


探そうとしたところで本人が現れる。

流石のダードだととは言え相手は騎士団のNo.2。

大層苦戦したようで、ダードの背中は血に染まっていた。


「ラストアは倒したのか?」

「えぇ、倒しはしたのですがたった今騎士団の者に回収されてしまいました。致命傷を与えた訳でも有りませんから死ぬことはないでしょうな。申し訳ございません。」


ダードが深々と頭を下げ任務の失敗を謝罪する。

確かに元々の作戦では失敗だが、こと今に関してはラストアが生きていてよかった。

心のうちで胸を撫で下ろし、ダード達へ事情を説明する。


「実はカッシルと密約を結んだ。何でも近くで変異種の魔物が出たらしくてな、俺らの相手をするよりそっちの処理がしたいそうだ。だから今あいつらを見逃す代わりに、奈落襲撃の方も一旦見逃すと確約させた。」

「変異種って……さっきはグレコが逃げ出したって聞いたけれど。」

「あれは建前だ。あそこで変異種が出たという情報を出しても無駄に騎士団の統率が乱れるっていう判断だろ。人間急に真逆の目標を言われても混乱するだけだからな。」


適当に言い訳をし、砦を後にする。

大分ガバガバな理論であることは自分でも理解しているが、今そこは問題ではない。

一旦奈落に帰ってヴィトに報告するときがこそが本番だ。

嘘八百並べて信用を勝ち取る、それこそグレコの得意分野である。

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