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23.忍ぶこと、それが極意

「おー!改めてみるとでっかいねぇ!こんな建物が城下町にあったんだぁ!」


横でコルワが素っ頓狂な声を上げる。

全くどうしてこんなことになってしまったのか。

グレコは頭を抱え、コルワを睨みつける。


「おい、頼むから静かにしてくれ。今からここに潜入するって言ってるのに無駄に目立つ奴があるか。まして俺ら二人は顔が割れてるんだぞ。」

「はーい!コルワちゃん静かにしまーす!」


全くこいつは完全にこちらを馬鹿にしている。

どうせ【不死】があるのだしここらで一度殺しておこうか。

グレコが腰に下げた剣に手をかけた時、横から制止される。


「落ち着いてくださいグレコ様。今のうちに作戦会議をしておきましょう。」

「あ、あぁそうだな。いいか、俺達は今からこのサイラス騎士団本部を攻撃する。俺とコルワが潜入、ダードとセドナは正面突入して陽動。内部にいる戦力を壊滅させ、明日の奈落襲撃を防ぐことが最終目標だ。」


四人で顔を近づけ、作戦を確認する。

ダードの試練を乗り越えてから一週間弱。

最早一刻の猶予もない。

表向きは奈落を脅かす騎士団を滅ぼすために、裏向きはサイラス姉妹への復讐を容易にするために。

それぞれ目標は違うが、目的は一致している。


「ご主人達が戦う相手の方が多分強い。気をつけて。」

「あぁ、恐らく突入組が相手するのは騎士団長かラストア。後は他の騎士達。決して弱くはない相手だから気をつけてくれ。ダード、セドナのお守りは任せたぞ。」

「承知致しました。この腕にかけて、お守りいたします。」


突入組の二人を見送り、グレコ達潜入組はフードを被る。

敵の主戦力を隠密しながら発見し、突入組の戦闘に介入させない。

下手に乱戦にするより各個撃破の方が勝算があると判断しての計画だ。

特にランベリーが乱戦に参加してしまえば、手がつけられなくなる。

後方から無造作に放たれる、距離を【無視】した攻撃。

あんなもの、チートという他ないのだから。


「よし、コルワ。中に入るぞ。事前に話した通り、正門脇の通気口。そこが俺らの侵入口だ。」

「わかってるわかってる♪そう思って今日はちゃんとそれっぽい服を着てきたからね!」


コルワがローブの内側の服を見せつけてくる。

ボンテージスーツ。

こういうものはスタイルのいい女が着るから人気なのであって、一般細身男性のコルワが来ても不審者でしかない。

綺麗な女に見えるのは首から上だけ。

軽く頭がバグりながらも、グレコは通気口へ入っていく。


「下に兵士が三人。その奥にもまた三人。そして通気口の奥にはネズミが三匹だ。」

「要らない情報まで教えないでよ……。うぅ汚い!僕の可愛い顔面が汚れちゃ、ぶっ!」

「無駄口を叩くな。声でバレる。」


右手で辺りを【掌握】しつつ、後ろで喚くコルワを蹴り飛ばす。

通気口の中は人が通れる限界ギリギリ。

作戦前の一週間で出来る限りこの砦の情報は仕入れてきたつもりだが、この狭さは予想外だった。


「入り口に侵入者だ!団長は来客中だ、ラストア班長を呼んでこい!」

「あぁ!途中にいる兵士達も呼んでくる!」


通気口の下、広い廊下を慌ただしく走る兵士達。

どうやらダード達が暴れ始めたようだ。

流れ的に、彼らの相手になるのはラストア。

まぁダードがいるからそう苦戦したりすることは無いだろうが、こっちが大変になった。


「おいコルワ、お前世界最強の男ランベリーと十七歳で騎士団長に昇り詰めた女カッシル。どっちと戦いたい。」

「どっちもごめんこうむりたーい♪グレコ一人で頑張って!よろしく!」


これからの戦いを予見し、手詰まり感が拭えない。

グレコ達突入組が誰と戦うかは流れに任せる、という話だったが割と最悪の流れだ。

騎士団にいるであろう戦力の中で恐らく最も弱いのはラストア。

それをコルワに任せるつもりだったのだが、そんなこころづもりは儚く散った。

けれど足を止めることもできず、グレコ達は前に進んでいく。


「こんなことなら僕が突入部隊になればよかったや……。」

「お前は顔がバレてるんだから仕方ないだろ。突入部隊は一旦砦の中まで入ってから暴れてもらわないといけない。脱獄犯のお前が行けば門前払いだ。っと、いたぞ。俺達の対戦相手だ。」


再び見える通気口の下。

気づかない間に廊下から、先日の応接間の真上まで来てしまったようだ。

そこで会話するランベリー、そして横で笑っている女。

騎士団の制服を着ているところからしても間違いないだろう。

あれがカッシル・ハルトマンだ。

グレコはそう確信し、二人の会話に耳を傾ける。


「そうですか。例のグレコとかいう男は行方不明……。私達はこのまま奈落を攻撃するつもりですが、勇者殿は……?」

「同行しようと思います。グレコ本人がいなくとも拠点がなくなれば、奴にとっても打撃のはず。今は少しでも奴の動きを遅延したい。」


密談する二人。

いくら騎士団長が新任の女だとは言え、何故急に奈落制圧に乗り出したのかと思っていたが、やはりそういうことか。

ベリオットも行方がわからなくなり、ランベリー自身もグレコに敗北を喫し。

奴としても焦っているのであろう。

グレコはニヤニヤとしながらコルワと話す。


「早めに賭場を離れておいて正解だったな。あのままあそこにいれば一網打尽だったかも知れん。」

「だからといってあのホテルには二度と泊まりたく無いけどねぇ。」


奈落襲撃の目標がグレコ。

それはグレコ本人としても予想している所だった。

そのため事前に賭場や自宅を離れ、奈落のホテル暮らし。

蜘蛛の巣とゴキブリが闊歩する劣悪なホテルだったことを除けば、いい判断だった。

考えているうちに、下の二人がそれぞれ別の部屋に入っていく。

戦力が分散したタイミング、今しかない。


「おいコルワ、どっちがいい。」

「う〜ん僕は犬派かなぁ……。」

「話を逸らすな、犬か猫かじゃない、鬼か悪魔かだ。」

「どっちがどっちなのさそれ……。じゃあまぁ僕は悪魔の方にしようかなっ!」


そう言ってコルワが左側の通気口に向かい、下に飛び降りる。

左ということはランベリーか。

つまりグレコの相手は騎士団長。

どうせランベリーは今復讐するつもりがないし丁度いい。

こっちも仕事を果たそうじゃないか。


「お手並み拝見といこうか、騎士団長さん。」




「すいません、うちの孫が怪我をしてしまって。中で治療をしていただけますかな。」


腰を低く、さも貧しい老人と孫のように。

己の身分を偽り、ダードとセドナは砦の門でうずくまる。


「うぅ……足が痛い……。」

「大丈夫ですか?わかりました、すぐに救護の者を呼んで参りますので中へどうぞ。」


門番が二人を中へと誘っていく。


サイラス騎士団。


この国の最高戦力であるここは、極めて善良な団体だ。

弱きを助け強きを挫く。

これを心情とした彼らは決して傷ついた民を見捨てない。

それが奈落の民でない限り。


「……我々の任務は陽動です。出来る限り砦の内部まで侵入した所で戦い始めましょう。外に近いと見回りに行っている兵士や、冒険者が救援に来かねませんからな。」

「あぁ、あたし達で砦の戦力を引きつけよう。ご主人達が強敵の討伐に専念できるように。」


前を歩く騎士に聞こえない音量で二人は会話をする。

潜入組と陽動組に分けられてはいるが、どちらも結局最初は潜入の行程を必要とするのだ。

そうしなければならない程に、サイラス騎士団の兵力は強大である。

辺りを警戒しつつ、ダードはセドナの背中を押す。


「おい、救護兵。こちらの娘さんが怪我をされたそうだ。治療をしてさしあげろ。こちらの……あれ?娘さんはどこに?」

「おや?本当ですな。申し訳ありません気移りの多い子で。騎士団の砦の中などそうそう入るものではないですから。」

「おーい!おじいちゃーん!こっちに何かあるよー!」


ここまでは計画通りだ。

怪我人を装って中に入り、無邪気な子供を装ってさらに奥へと進む。

グレコが用意した小さな作戦の出来に感心しつつ、ダードは声を張り上げる。


「おいおい何をやってるんだ!そんなことしていたら侵入者だと誤解されるだろう!」

「侵入者……?なんだ何の騒ぎだ。」


年甲斐もなく叫んでみたが、効果はあったようだ。

()()()という単語に反応して辺りの騎士が集まってくる。

これだけの数が集まればそろそろいいだろうか。

ダードはタイミングを見計らい、手近な兵士に手刀を入れる。

それに合わせてセドナが別の兵士の頭を【放出】で撃ち抜いた。


「さて、存分に暴れましょうかセドナ様。」

「あぁ、できる限りご主人の役に立つぞ。」

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