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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第二部

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79/121

2-6

 夕食は、我ながら上手くできたと思う。

 スープにした野菜は、乾燥前とまったく変わらないおいしさだった。歩いて疲れただろうからと、少し濃いめに味付けした鶏肉は、パンにとても合っていた。ラウルの採ってきてくれたフルーツも、さっぱりとしておいしい。

 満足した食事を終え、後片付けもささっと魔法を使って済ませてしまうと、今度は寝るための準備をする。ミラは、自分の荷物からあるものを取り出した。

「お兄様、ジェイダー様。これを使ってみて。魔法で少し暖かくなるようにしてあるの」

 そう言って二人に差し出したのは、薄手の毛布だ。

 分厚いものを持ち歩くと重くて大変なので、魔法で毛布の内側が発熱するようにしてみた。もちろん火傷などしないように、温度は調整してある。

 ラウルやジェイダーの護衛の冒険者の分も用意しておいた。

「こんなにたくさん運んでいたのか?」

 取り出した毛布の数に、兄が目を丸くして驚いていた。

「これもさっきの食材と一緒よ。圧力をかけて小さくしてしまえば、持ち歩くのも楽かなと思って試してみたの」

「……いつのまに、こんな魔法を」

「旅に出たいと思ったときに、私でも役に立てる方法がないか、色々と考えてみたの」

 たしかにミラには聖魔法を使えるという強みはあるが、それでも王族として、聖女として育ったから、できないことが多すぎる。

 料理は少し作れるようになってきたが、手際の良さは、まだラウルの方が上だろう。だから自分にしかできないことはないかと、得意な魔法を生かす方法を探したのだ。

 ロイダラス王国にいる間は、ラウルはミラの護衛だ。足手まといになったとしても、見捨てることなく守ってくれる。

 でもそれが終わってしまえば、対等な関係だ。

 ミラだって生半可な気持ちで旅に出ようと思ったわけではないが、失ってしまった祖国を取り戻したいと思っているラウルとでは、覚悟が違う。

 助けられるだけではなく、お互いに得意な分野で協力し合えるような関係にならなければ、その旅に同行させてほしいなんて、とても言い出せない。

「そうか」

 それを伝えると、兄は真剣な顔をしてミラを見つめた。

「それだけ本気だということか」

「ええ、もちろん」

 その視線を真正面から受け止めて、深く頷いた。

 旅に出たいと話したとき、兄はすぐに答えを出さなかった。だが、きっとミラの本気を受け止めてくれる。

 それでも、エイタス王国の王族として、聖女として。自分の勝手で祖国を離れてしまうという罪悪感はある。

 でもそう選択したのがミラ自身である以上、それはこれからもずっと、抱えていかなくてはならないこと。そう胸に刻んだ。

「いくら軽くしたとはいえ、こんなにあったら重いだろうに」

 背後から呆れたような声がして、振り向くと見回りを終えたラウルが戻ってきていた。

「ラウル」

「次からは俺が持つから、あまり無理はするな」

「大丈夫。本当に魔法で軽くしてあるの」

 ここでラウルに持たせてしまったら、せっかく魔法を開発した意味がない。ミラは慌てて、その毛布をいくつも重ねて持ってみせた。

「ほら、こんなに軽いのよ」

その重さは、ほとんど薄手の毛布一枚分だ。

ラウルはミラの言葉を確かめるように毛布を受け取り、その軽さに驚いたようだ。

「自分で魔法を作ったのか?」

「うん。既存の魔法では、私の求めている効果を出すことはできなかったから」

 重量を軽くするという魔法はあったが、それを小さく圧縮するという魔法はなかった。

 だから自分で改良を重ねて、荷物を軽くして、さらに運びやすく小さくするという魔物を開発した。

「あいかわらず何でもないような顔をして、とんでもないことをする」

 ラウルは呆れとも感心とも取れるような顔をして笑う。

「でも、これは便利だな。旅が楽になる」

 そう呟いたのを聞いて、ミラの顔が明るくなる。

「よかった! これからも、旅が便利になるような魔法を、いっぱい開発するわ!」

 背後で兄が、いや、少しは自重してくれ、と呟いていたが、もうミラの耳には届かなかった。

 これからどんな魔法を開発しようか。そのことで、頭がいっぱいだったからだ。

「あ、とりあえず周囲に結界を張るわ。魔物はもちろん、指定した人しか中に入れなくなるから、夜の見張りもいらないからね」

 この結界についてはラウルも知っているので、軽く頷いた。

 だが兄はここでも驚いたようだ。

「指定した人しか入れない? いつのまに、そんな結界魔法を」

「あら、お兄様は知らなかった?」

 町でも普通に使っていたはずだと、首を傾げる。

「魔物と、悪意のある人間は入れないということは聞いていた。だが、個人を指定できるとは思わなかった」

「そうだったかしら?」

 この魔法は前から使っていたはず。

そう言うミラに兄は唖然としていて、その隣でラウルが、今度こそ呆れた顔をして笑う。

「深く考えるだけ、無駄かもしれないですよ。多分これからも、こういうことは続きますから」

「そうか。何というか、さすが【護りの聖女】というべきか」

 二人は、ミラがラウルと出会って、その力をますます高めていることを知らなかった。

(もっと強くなりたい。もっと、できることを増やしていきたい……)

 ましてミラがそんな決意しているなんて、まったく思わなかっただろう。


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