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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

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72

 ミラを包み込んだ銀色の光はアーサーを弾き飛ばした。

(な、何が起こったの?)

 突然のことに狼狽えたが、今はそんなことを考えている余裕はない。

 その隙を逃さずに、すかさずミラはアーサーの手のうちから逃げ出した。

「くそ、逃がすか!」

「!」

 アーサーの手がベールを掴むが、ミラはそれを脱ぎ捨てて走り出す。

 礼拝堂を飛び出すと、見覚えのない町の光景が広がっていた。

「ここは……」

 見渡す限り、瓦礫の山だ。

 この町もまた、魔物によって滅ぼされてしまったのだろう。人の姿はなく、崩れ落ちた建物があるだけだ。

(とにかく、どこかに隠れないと……)

 だが、ここがどこなのか確認するよりも、今はアーサーから身を隠せる場所を探すことが先決だ。

 ミラは必死に走りながら、周囲を見渡す。

 瓦礫の隙間を見つけ、その中に潜り込もうとした。

「逃がすものか。お前は俺のものだ!」

 けれど、背後から追いついたアーサーに髪を掴まれる。

「痛っ……」

 鋭い痛みが走り、思わず悲鳴を上げた。

 だが、その瞬間。

 ふいに痛みは喪失し、アーサーは、銀色の光に弾かれたときとは比べものにならないくらいの勢いで、背後に吹っ飛んだ。

(え?)

 何が起こったのかわからずに呆然としていたミラを、しっかりと抱き寄せる腕。

(ああ……)

 見覚えのある褐色の肌に、思わず縋りつく。

「ラウル……」

「悪い。遅くなった」

 ミラを探して、駆け回ったのだろう。

 息を乱したラウルは、腕に縋りつくミラをしっかりと抱きしめてくれた。

 そして、アーサーに殴られて腫れてしまった頬を見て、顔を顰める。

「もう何発か、殴っておくべきか」

「大丈夫。すぐに癒せるから」

 さすがにラウルに何発も殴られたら、死んでしまうかもしれない。

 ミラは慌ててそう言って、彼を制する。

 アーサーのことは許すつもりはないが、あんな男のために、ラウルが手を汚す必要はない。

 それに、今まではそれどころではなかったのでそのままにしていたが、ミラは聖女だ。こんなものは簡単に癒せる。

 ついでに強く掴まれた腕の痣も、転んだときの擦り傷もすべて癒したが、ラウルの表情は曇ったままだ。

「まさかこの男が、国境の近くまで逃れてきたとは。警戒を怠っていた。すまなかった」

「そんな、ラウルのせいじゃないわ。私も、怪我人がいると言われて、疑いもせずについて行ってしまって。そういえば、どうしてここが?」

 自分がどれくらい気を失っていたかわからないが、まだ周囲は明るい。

 あまり時間は経過していないように思える。

「お前をあの男の元に案内した女を捕えて、聞き出した。そう遠くには行けないだろうと思っていたが、何とか間に合ってよかった」

「ありがとう。助けてくれて」

 ラウルの腕の中で、ミラは先ほどの恐怖が嘘のように安心しきっていた。ここなら、絶対に安全だ。ラウルなら、なにがあってもミラを傷つけるようなことしない。

 そう心から信じている。

「他の者達も手分けをして探しているはずだ。早く戻って、安心させてやろう」

「でも、アーサー様は?」

 見れば、彼はよほど強く殴られたのか、気を失ったままだ。

 ラウルは少し考えたあと、アーサーを拘束してさらにその身体を瓦礫に縛り付ける。

「当分目が覚めることはないだろうが、ここに拘束しておく。後で町に連れて帰って、幽閉するしかないな」

 まずミラの安全を確保するのが先だ。

「帰ろう。みんな待っている」

 ラウルは、しがみ付くミラを軽々と抱き上げると、優しくそう言った。

「……うん」

 ミラも素直に頷いて、ラウルの腕の中で目を閉じた。


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