表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/121

7

 孤児院にいたので、聖女だったことがわからなかったのかもしれない。

 でも資料を見る限り、行方不明になっていたのは五歳のときから十年もの間である。

(見つかったのは、本当に行方不明になっていた伯爵令嬢だったのかしら?)

 聖女マリーレは王都に迎え入れられ、今までミラが過ごしていた場所で暮らしているようだ。

 アーサーは毎日のように彼女の元に向かい、何か不自由なことはないか、色々と心を配っているらしい。

(私がこの国に来たときと、まったく同じね)

 その話を聞いて、溜息をつく。

 ミラが聖女としてロイダラス王国に来たときも、アーサーは毎日のようにミラの元を訪れてくれた。

 あのときは優しい人だと勘違いしてしまったが、今ならわかる。

 彼にとって聖女は、自分の国を守るための道具でしかないのだ。

 そのうち時期を見て、アーサーは聖女との婚約を発表するだろう。

 ミラと違って、ロイダラス王国の貴族出身の聖女だ。

 彼女を王妃にすることによって、この国にも聖女がいるのだと各国に示すつもりなのかもしれない。

 ミラは静かに思案した。

(そのために、孤児だった少女を伯爵家の養女にした可能性もあるのかしら?)

 新しい聖女は、本当に行方不明になっていた伯爵家の娘なのか。

 気になることはたくさんあったが、ミラがそこまで気にする必要はない、と侍女達は言う。

 たしかに彼女達の言う通りだ。

 もうミラはこの国の聖女ではないのだから、さっさと祖国のエイタス王国に帰って、あとのことは兄に任せるべきだ。

「そうね。私にはもう、関わり合いのないことだもの」

 そう思っていたのに、なかなか旅が進まなかった。

 王都から出て移動したものの、ここから次の町に行く道が崖崩れで塞がれてしまったのだ。

 開通するまでこの町に滞在するか、もしくは迂回路を通らなくてはならないらしい。

 迂回路は険しい山道で、とてもミラが通れるような場所ではなさそうだ。

「困ったわね。こんなことになるなんて」

 十日もすれば、ミラの結界の効果は完全になくなってしまう。

 そうすれば、魔物がこの国にも次々と侵入して来るに違いない。

 国は混乱状態になり、ますます旅をするのが難しくなってしまうかもしれない。母から金貨を授けられていなかったら、路頭に迷っていた可能性もある。

 今は道が復旧するまで、おとなしく待っているしかなかった。

 ミラは用心のために宿屋から一歩も外に出ず、ただ侍女達が持ち帰って来る町の噂話を聞くしかない。

 それによると、アーサーは早々に聖女マリーレとの婚約を発表したようだ。彼女は王太子の婚約者となり、じきに王太子妃となるであろう。

「ミラ様……」

 侍女が気遣わしげにこちらを見ていたが、ミラには王太子のアーサーにも、王太子妃の地位にもまったく未練はなかった。むしろ結婚する前に、彼の本性が知れてよかったくらいだ。

 兄や姉の庇護下から離れて、初めて接した異性がアーサーだった。

 今思えば、少し浮かれていたのかもしれない。

「私なら大丈夫よ。心配なのは、ちゃんとエイタスに帰れるかどうか。それだけね」

 浮かれていたときの自分の姿は、どうか忘れてほしい。

 そんな願いを込めて言うと、侍女達はそれを察してくれたようだ。

「ミラ様の身は、わたくし達が必ずお守りいたします。どうぞご安心ください」

「ありがとう。私も、魔物が相手ならあなた達を守ってあげられるわね」

 人間相手には無力だが、魔物が相手ならミラはけっして負けない。

 それが聖女の力であり、その存在が貴重である理由でもあった。

 祖国であるエイタス王国はまだ遠い。

 その道のりを思って、ミラはそっと溜息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ