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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

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「ミラ!」

 ふと、目の前が暗くなったかと思うと、誰かにしっかりと抱き止められた。

「あ……」

 途切れそうになっていた意識が、少しずつ鮮明になっていく。

 強い魔法を使ったあとに、衝撃的な話を聞いてしまったせいで、倒れそうになっていたようだ。

 支えてくれる腕に、必死に掴まる。

 それが誰かなんて、考えなくてもわかっていた。

 何度もこの腕に支えられてきたのだから。

「……ラウル、王都が」

 縋るようにそう言うと、背中を優しく撫でられる。

「ああ、聞いた。どうやら本当のようだ」

 手のひらから伝わる温もりに、少しずつ心が落ち着いていくのがわかった。

「王都には結界が張ってあると聞いたわ。それなのに、どうして?」

「今、ジェイダーとバロックが避難してきた人達に、詳しい話を聞いている。お前は少し休め」

「でも、怪我をしていた人達が……」

「お前の魔法は、礼拝堂の外にいた人達も一瞬ですべて癒してしまった。怪我人はもういない。だから、少し休んだ方がいい」

 どうやら魔法は成功していたらしい。

 王都の結界はどうなったのか。

 アーサーはどうしているのか。

 新しい聖女はどうしたのか。

 聞きたいことはたくさんあったが、ラウルは強引にミラの手を取って、部屋に連れて行ってしまう。

「ラウル、待って。王都の話は……」

「今はまだ、事情を詳しく聞いているところだ。人によって言うことが違うこともあるから、どれが正確な情報なのか、しっかりと調べなくてはならない」

「そうかもしれないけど、でも」

 こんな状態でひとりだけ休むことなんてできない。

 そう思っていた。

「休めるとしたら今のうちだ。これからまた、避難してくる者がいないとは限らない」

「……わかったわ」

 でも、負傷者が増えるかもしれないと言われたら、きちんと体調を整えなければならないと思う。

 実際、魔力は回復していたが、体力がまだ回復していないと感じている。この状態でさらに魔法を使うと、また倒れてしまう可能性が高いだろう。

 いざというときにきちんと魔法を使うことができるように、ここはラウルの言う通りに少し休んで体力を回復させて、次に備えたほうがいい。

「眠れないかもしれないが、身体を横たえているだけでも違うだろう。何かわかったら、すぐに教える。だから、今は身体を休めたほうがいい」

 ラウルは先ほどよりも優しい声でそう言うと、まるで眠れずに泣き出してしまった子どもを慰めるように、ミラの頬をそっと撫でる。

(……ラウル)

 ミラは彼を見送ったあと、素直に自分の部屋のベッドに横たわった。

 眠れないと思っていたが、身体は思っていたよりもずっと消耗していたらしい。気が付けば、意識が途切れていた。

 そのまま朝まで眠ってしまっていたようだ。

(あんなことがあったのに、しっかり眠ってしまうなんて)

 いくら疲れていたとはいえ、あれだけたくさんの怪我人を見たあとに、王都が壊滅したという話を聞いたあとだ。

 身体を休めるために横たわることはできても、ゆっくりと休むことなんてできないと思っていた。

 でも実際は、朝になるまで眠ってしまった。

 エイタス王国や王都にある神殿にいた頃は、考えられなかったことだ。

 我ながら図太くなったものだと、思わず笑みが浮かぶ。

 それでも、強くなることは悪いことではないだろう。

 これからどうなるかわからない以上、体力だけではなく精神力も鍛えておきたいところだ。

「よし、頑張る」

 気合いを入れるようにそう言うと、手早く着替えをして部屋を出る。

 ラウルに、昨日のことを詳しく聞かなくてはならない。

「姫様、お目覚めでしたか」

 ミラの姿を見ると、すぐに侍女が駆けよってきた。

「お傍を離れてしまい、申し訳ございません」

「構わないわ。怪我人の看病をしてくれたのでしょう?」

 あの後も、少数だが避難してきた者達がいたようだ。侍女達は、その対応に追われていたのだろう。

「私はもう大丈夫。昨日のことを聞きたいの。誰かいるかしら?」

「それでしたら……」

 礼拝堂にサリアがいると聞き、ミラはそちらに向かうことにした。



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