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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

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 町はそれほど大きいものではなく、町全体に結界を張ったとしても、そう負担になるものではなかった。以前は王都全体に結界を張り巡らせていたことを考えると、楽なものだ。

 ジェイダーと子ども達は、町の広場を耕して畑を作っている様子だった。

「私も手伝うわ」

 ミラは銀色の髪を動きやすいようにまとめると、そう言って子ども達の中に交じった。

 広場だった地面は固く踏み固められているので、掘り返すのも一苦労だ。この国の王族であるジェイダーも、エイタス王国の王妹ミラも、こんな作業は初めてで、子ども達に教えてもらうような有様だった。

 子ども達の小さな手ではなかなか作業が進まず、この日は地面を浅く掘り返しただけで終わってしまった。

 時刻はそろそろ夕刻。鮮やかな夕陽が、瓦礫を照らしていた。

 たくさん動いたせいで、子ども達はお腹がすいたようだ。

 食事の支度も、当然のことながら自分達でしなければならない。

 畑仕事同様、今までやったことはなかったが、ここで暮らすと決めた以上、できないなどと言っていられない。

 ラウルとジェイダーと協力し合いながら、頑張るしかないと覚悟を決める。

 だが教会に戻った途端、いい香りが漂ってきた。

「あれ?」

 見ると、教会に残っていた数人の女の子が、みんなで協力して食事の配膳をしているようだ。

 焼きたてのパンの良い香りに、食欲を刺激される。

「これは……」

 少し遅れてきたジェイダーも、驚いて目を見開いている。

「おかえりなさい。ご飯できてるよ」

 にこりと笑ってそう言った女の子に、ジェイダーは、危ないから子どもだけで火を使ってはいけないと諭している。

 孤児院の子ども達は、働くことに慣れている。

 でも、さすがに危ないことはさせられない。

 ジェイダーは、瓦礫の山に子ども達だけで近付いてはいけない。そして、子ども達だけで火を使ってはいけないと教えていたようだ。

「大丈夫だよ。作ったのはわたしじゃないから。ラウルお兄ちゃんが作ってくれたの」

「え、ラウル?」

 驚いて調理場を覘くと、ミラ達よりも先に戻っていたらしいラウルが、数人の女の子と食事の支度をしていた。

 たしかに今までも、野営をしていたときはラウルが食事を用意してくれていた。でも、こんなにちゃんとした料理が出てくるとは思わなかった。温かいスープに、焼きたてのパン。森で採ってきたらしい果実もあった。

 女の子達は、これから少しずつ料理を習うのだと嬉しそうに話していた。ミラもジェイダーも自分で料理をしたことがなかったので、子ども達に教えることができるのはラウルだけだ。

「ラウル、私にも教えてくれる?」

 ミラの懇願に、ラウルは首を傾げる。

「必要ないだろう? ずっとここに住むわけでもない。お前はいずれ、エイタス王国に帰るのだから」

 国に帰れば、ミラは王妹だ。たしかにラウルの言うように、自分で食事を用意する必要などない。

「でもここにいる間は、私はただのミラだわ。みんなと一緒に、協力し合っていきたいの」

「……わかった」

 ミラの懇願に、ラウルは頷いてくれた。

 ラウルだって必要に駆られて覚えただけで、人に教えるのは面倒だろうに、快く承諾してくれた。

 ここはしっかりと覚えて、結界を張ること以外、固定した仕事がない自分の役目にしてしまいたいところだ。

 料理ができるようになれば、ラウルと旅を再開したときも、きっと役に立つだろう。

「一緒に頑張ろうね」

 女の子達にそう言うと、彼女達は嬉しそうに、こくりと頷いてくれた。

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