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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

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5

 ミラは王都から一番近い町に移動すると、そこで侍女に目立たない服装を用意してもらって、着替えをした。

 長い白銀の髪もこの国では目立ちすぎるため、魔法で淡いブラウンに変えている。

 結界の効果が完全になくなるまで、まだ十日ほどある。

「姫様、これからどうなさるのですか?」

「その呼び方は駄目よ。誰かに聞かれたら大変だわ」

「わかりました。それでしたら、国に帰るまではミラ様と呼ばせていただきます」

「ええ、そうして頂戴」

 そう答えたあと、ミラは首を傾げて、これからどうするか考える。

「そうね。旅支度を整えてから、エイタス王国に帰りましょう」

 兄にはすぐには連絡せず、しばらくは自分たちだけで旅をして行きたいと思う。そのうちにミラも、少しは冷静になれるだろう。

 アーサーの仕打ちも王都の人達の罵倒も忘れることはできないが、それをこのまま兄に訴えたら大変なことになる。

 冷静に状況を説明できるようになるまで、時間が必要だ。

 それに国外追放を言い渡された身としては、のんびりと祖国からの迎えを待つわけにもいかない。

「でも旅をするにも宿に泊まるのにも、お金が必要よね。宝石のひとつくらい、持ち出すべきだったかしら……」

 ここからエイタス王国に帰る道のりのことを思えば、少しは荷物を持ち出してくるべきだったのかもしれない。

 でもミラの所持品は、婚約者だったアーサーからの贈り物が多かった。それを考えると、やはり置いてきて正解だったのだろう。

 思案するミラに、侍女のひとりが声を掛けた。

「姫……、いえ、ミラ様。実はアイーダ様より、いざというとき使うようにと、金貨を預かっておりました」

「え? お母様から?」

 アイーダとは、今や王太后となった母の名である。

「はい。ミラ様のためには国外に出たほうがいいかもしれない。でも少し心配だから、いざとなったらすぐに帰国できるように、とおっしゃっておりました」

 私も、息子や娘を過保護すぎると笑えないわね。

 母はそう言っていたそうだが、今はそれがとても有難い。

「助かったわ。帰ったらお母様に、お礼を言わなくてはね」

 母が持たせてくれた金貨は思っていたよりも多くて、徒歩ではなく馬車で移動することもできそうだ。

「よかった。これで何とかなりそうね」

 これで侍女に、旅をするための準備を整えてもらうことにした。

「すぐに出発いたしますか?」

「少し気になることがあるから、それを調べてから出発するわ」

「気になること、でしょうか」

「ええ。新しく見つかった聖女のことよ」

 ミラはまず、人の多そうな中心街に宿を借り、侍女達を連れて町に出た。

 目的は、町の噂話を聞くことである。

 ミラが予想していたように、町の人達は新しい聖女の話ばかりだった。

 新しい聖女は、ディアロ伯爵家の令嬢であるマリーノ。

 年齢は、ミラと同じ十六歳のようだ。

 輝く金色の髪に青い瞳をした、とても美しい女性のようだ。

 彼女は間違いなく聖女であると、大神官が認定したらしい。

 ミラが一番気になっていること。

 それは、ミラと同い年のマリーノがなぜ、今になって聖女の力に目覚めたのかということだ。

 もしマリーノが生まれてすぐに聖女だと認定されていたら、ミラがわざわざこの国に来る必要はなかった。

 もうひとつ気になるのは、町の人達が、あまりにも新たな聖女に熱狂していることだ。

 人々は口々に、この国に聖女が生まれたことを喜び、これでもう神に見放された国などと呼ばせないと意気込んでいる。

 中には偽物だと認定されたミラを貶める言葉を放つものもいた。

 憤る侍女を、ミラは留めた。

 ここで騒ぎを起こすわけにはいかない。

 この国の人達は、ミラが思っていたよりもずっと、自国出身の聖女の不在を不安に思い、後ろめたさのようなものを感じてきたようだ。


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