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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

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 でも、とミラは思う。

 今の旅にも、不安なことはひとつもない。

「もしお兄様と会えなくても、ラウルがいてくれるなら安心かもしれないわ」

 思った通りのことを口にすると、彼は驚いたようにミラを見つめる。

「何を言う。身内のほうが安心だろう」

「ラウルと一緒にいても、安心するわ」

「……エイタス王国の一番下の王妹は、世間知らずで箱入りだという噂は本当だったな。こんな男に、簡単に騙されて」

 照れたように横を向く姿が何だかかわいらしく見えて、ミラは思わず笑った。

「もう寝ろ。見張りは俺がやる」

「うん。ありがとう」

 ミラは素直に横になった。

 明日も歩かなくてはならないことを考えると、しっかりと休んだほうがいい。

 もう少し、ふたりで旅をしていたい。

 侍女やサリア達も、きっと心配して探し回ってくれているはずだ。

 みんなに心配をかけてしまっているのに、そんなことを思ってしまった罪悪感が、胸に残っている。

(お兄様、お姉様、お母様。ごめんなさい……)

 そのせいか、それともひさしぶりの野営のせいか。

 眠りが浅くて、夜中に何度も目を覚ましてしまった。その度に、ラウルにまだ寝ていろと宥められる。

 彼はずっと見張りをするつもりらしい。

 結界が張ってあるから、ラウルにも休んでほしい。

 あの女魔導師に鍵を壊されたときと同じように、誰も入れない結界だと告げると、ラウルも頷いてくれた。

 彼が横になった姿を見て、ミラも安心して目を閉じる。


 そうして、翌朝。

 騒がしい鳥の鳴き声で目が覚めたミラだったが、起きたときにラウルの姿はなかった。

「ラウル?」

 彼がミラを置いて、どこかに行くとは思えない。

 ラウルの姿を探して周囲を見渡していると、ふと異質な気配がすることに気が付いた。

(魔物の気配だわ)

 しかも、かなり強い魔物のようだ。

 その魔物の気配がするのは、ミラが張った結界の外のようだ。

 即座に立ち上がり、その方向に駆け出した。

(もしかして、ラウルが……)

 ひとりで、戦っているのかもしれない。そう思うと、

 魔物の気配を辿りながら、足場の悪い道を必死に走る。

 すると、耳障りな魔物の咆哮が聞こえてきた。

 咄嗟に耳を塞いだミラだったが、その声が聞こえてきた方向に、探している姿を見つけて、彼の名を呼ぶ。

「ラウル!」

 深い森の中に、見上げるほどの大きな洞窟があった。

 そこから、巨大な蜥蜴の魔物が顔を出している。

 その姿は全身すべて固い鱗に覆われ、人間を遥かに超える大きさだった。

 ラウルは大剣を構え、その魔物と対峙していた。

 焼け焦げた匂いが広がっている。

 炎を吐く魔物なのだろう。周囲は焼け焦げ、ラウルも無傷ではないようだ。

「ごめんなさい、遅くなってしまって」

 ミラは彼の元に走り寄った。

 右肩から腕にかけて、衣服が焼け焦げている。剣を片手で持っていることから見ても、魔物にやられたのだろう。

 彼が傷を負う前に気が付けなかったことが、悔やまれる。

 たとえ傷は癒せても、負った痛みまでは消し去ることはできないのだ。

 だが、ミラがその傷を癒そうとすると、ラウルはそれを遮るように言った。

「ミラ、あの子たちを」

「え?」

 その視線の先には、五人ほどの小さな子どもが、身を寄せ合って震えていた。

 ラウルは魔物からその子ども達を守って、戦っていたのだ。

「わかったわ。任せて」

 そう言うと、子ども達の周囲に結界を張って守る。

「これで大丈夫」

「助かった」

 ラウルはそう言うと、大剣を構え直す。

「危ないから、下がっていろ」

「私なら大丈夫。瘴気を浄化するわ」

 そう言ってラウルの隣に立つと、魔物から溢れ出す瘴気を即座に浄化する。すると巨大な魔物は、たちまち人間と同じくらいのサイズにまで縮んだ。

「ごめんなさい。気が付くのが遅れてしまって」

 そう謝罪しながら、ラウルの傷ついた腕にそっと触れる。前に癒した子どもよりも、さらに深い傷のようだ。

(お姉様が言っていたわ。魔物の炎による火傷は、たちが悪いって。表面だけを癒しても、痛みはいつまでも残るのよ)

 癒しの魔法が得意なのは、ふたりの姉だった。そんな姉達のようにうまく癒せるかどうか、わからない。

(でもラウルの腕に、そんな痛みは残したくない。お願い、治って……)

 そう必死に祈り続けた。


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