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【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

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40/121

40 滅びの国Ⅸ

 妹がいないのなら、こんな所に用はない。

 エイタス王国の国王リロイドは、そう言い捨てて王城を立ち去った。

 その迫力に、アーサーは彼の姿が見えなくなるまで、息を吸うことすら忘れていた。

(何ということだ……)

 リロイドは三人の妹を溺愛している。

 それは、アーサーでさえ知っていた。

 その中でも一番末の妹姫は、二人の姉にも可愛がられていたのだ。

 まさか、それがあのミラだったとは。

(知らなかった。そんなこと、聞いたこともなかった……)

 アーサーは座り込んだまま、心の中でそう繰り返す。

 こうなってしまったのは、父王がアーサーに何も言わなかったのが、すべての元凶である。

 アーサーも、ミラがあのエイタス王国の王妹だと知っていたら、たとえこの国に聖女が誕生したとしても、このような扱いはしなかったのだ。

 だが、そんな言い訳ですら聞いてもらえなかった。

 これでもう二度と、エイタス王国がこの国のために力を貸すことはない。

 たとえこの国がリーダイ王国のように魔物に滅ぼされようと、静観するだけだろう。

「わ、私は知らなかったわ」

 甲高い声でそう叫んだのは、ロイダラス王国の聖女マリーレだ。

「偽聖女だと言われたから、そう信じていただけよ。まさか、本物の聖女様だったなんて……」

「黙れ!」

 その声が癇に障って、アーサーは手を上げた。

 ミラを追放したときのように突き飛ばすと、マリーレは悲鳴を上げて倒れ伏した。

「お前が余計なことを言わなければ、こんなことには!」

 すべてはマリーレが、偽聖女の話をリロイドにしてしまったせいだ。

 そうでなければ、ミラがエイタス王国の王妹だと知ったあと、ひそかに彼女を捜索することもできたのだ。

 ミラは、間違いなく聖女の力を持っていた。

 その力はとても強く、大神官も偽聖女だと発表しろと言った王命を拒否したほどだ。

 その上、大国であるエイダス王国の王妹であった。

 あのリロイド国王の義弟になることができていたら、この国は末永く安泰だったのに。

 まだ、挽回する機会はあった。

 アーサーはそう信じていた。

 マリーレが、彼の目の前で偽聖女の話さえしなければ、打つ手はあったのだ。

(とことん、使えない女だ……)

 聖女など、名ばかり。

 力を使うこともできず、アーサーの言葉には逆らってばかり。

 それに、些細なことだと目を瞑っていたが、その出自には少しばかり怪しいところもある。

 いっそのこと彼女の方を偽聖女として厳しく罰し、すべての罪状を押しつけてしまえば、ミラとの復縁も望めるのではないか。

(一度は婚約していたくらいだ。すべてこの女に騙されてしまっていたと謝れば、あるいは……)

 もちろん、父に何も聞いていなかったことを強調することも忘れずに。

「衛兵!」

 アーサーは大声で衛兵を呼ぶと、彼らに命じた。

「この女を拘束しろ。地下牢にでも放り込んでおけ!」

「そんな! アーサー様、私は聖女なのに!」

 マリーレの抗議に、アーサーは冷酷な眼差しを向ける。

「満足に力を使うこともできないくせに、何が聖女だ。すぐにディアロ伯爵も捕らえろ。反逆罪だ」

「いやああっ」

 悲鳴を上げて逃げ出そうとしたマリーレだったが、すぐに衛兵たちに取り押さえられた。泣き叫ぶ彼女に背を向けて、アーサーは部屋を出た。

 マリーレとその義父であるディアロ伯爵を、聖女を騙った偽物だと厳しく処罰しなければならない。



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