表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】偽聖女!? ミラの冒険譚 ~追放されましたが、実は最強なのでセカンドライフを楽しみます!~  作者: 櫻井みこと
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/121

36

 それから何度も目覚めては、ラウルに宥められてまた眠りについた。

 どのくらい、そうして眠っていたのだろう。

 ようやく頭痛が消え、起き上がることができるようになった。

「顔色が良くなったな」

 食事を運んできてくれたラウルが、ミラの頬にそっと触れて、安堵したように言う。

「気分は?」

「悪くないわ。色々とありがとう」

 運んできてくれた食事も、食べやすくて消化の良さそうなものばかりだ。

 ここはミラが予想していたように、あのときラウルが言っていた森の奥にある村のようだ。宿屋などないくらい小さな村なので、ミラを介抱するために開いていた小さな家を借り、そこでふたりで過ごしている。

 村の周辺に出没する魔物を退治したり、力仕事をしてくれるラウルは、かなり重宝されているようだ。それでも一日に三度、ミラに食事を運んできてくれて、体調はどうかと気遣ってくれる。

 ミラのベッドのすぐ傍にある窓から、小鳥の巣があるのが見える。ベッドから動けないミラは、ずっとその雛鳥の成長を見守っていた。何度も餌を運ぶ親鳥と、何度も様子を見に来てくれるラウルの姿が重なって見えて、自分はそこにいる雛鳥のようだと思う。

 最初は少し怖そうだと思っていたラウルだったが、面倒見が良くて、とても優しい。彼に助けられて、本当に幸運だったと思う。

 目が覚めてから十日ほど経過して、ようやくラウルから動いてもいいと許可を得ることができた。

(もう、お兄様と同じくらい、過保護なんだから……)

 兄に対しては、ときどきどうして自分の気持ちをわかってくれないのかと、もどかしさや悲しさを覚えることもあった。

 もちろん兄もミラを大切に思ってくれているからこそ、そうするのだとわかっている。でもミラにだって、家族や国を大切に思う気持ちがある。それをわかって欲しかった

 それに対して、ラウルに過保護にされると、何だか恥ずかしいような、嬉しいような、何とも言えない感情になってしまうことがある。

 今も、ミラが本当に無理をしていないか、注意深く見つめているラウルの視線が恥ずかしくて、視線を反らしてしまう。

「もう旅をしても大丈夫よ」

「……そうか。なら、これからどうするか、話し合うか」

 ラウルは頷くと、長椅子に座ってミラを見つめた。

「これから?」

「ああ。当初の予定通りに、このままエイタス王国を目指して旅を続けるか?」

「……それは」

 すぐに答えることができなくて、ミラは俯いた。

 ここで療養している間、ずっと思っていたことがある。ラウルにも打ち明けようと思っていたけれど、なかなか言えなかった。

 でも、告げるのは今しかない。そう覚悟を決める。

「私は、エイタス王国の第三王女、ミラ」

 今こそ、偽りの姿ではなく本当の姿で、彼に自分が誰なのか伝えなければ。

 ミラの茶色の髪が、銀色に光り輝く。

 紫色の瞳が、まっすぐにラウルを見つめた。

「ロイダラス王国の王太子アーサーに陥れられ、偽聖女として追われることになってしまいましたが、間違いなく聖女です」

 ラウルはさすがに驚いたようで、立ち上がってミラを見つめる。

「エイタスの、王女? あの、王女が全員、聖女だという……」

「はい。私のふたりの姉も、母も聖女です。今まで黙っていてごめんなさい」

 そう言って、頭を下げる。

「私はもうこの国の聖女ではないけれど、救える力があるのに、目の前で消えそうな命を放っておくことはできないわ。だから、この国に残ろうと思います」

 それが、ミラの出した答えだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ